第4話 選択

 結局翔は泣きながら走って帰っていった。

「私、翔に嫌われちゃったかな·····。」

 翔のことは好きだ。だけど友達として、だから振った。でも嫌いになられるのは嫌だ。ムシが良すぎる話しかもしれないけど翔とはずっと友達でいたい。


「·····ただいま。」

「おかえりなさい。どうしたの、元気がないね。」

 お母さんは優しさが溢れた顔で私の話を聞いてくれた。好きな人がいること。翔は大好きな友達だということ。翔に告られて断ったこと。そのあと翔が泣いていたこと。全てお母さんに打ち明けた。

「·····そうなの。それは難しい選択だったね。でも母さんはあなたのした事は間違いじゃないと思うわ。もしあなたが翔くんの告白に応じていたらそれは翔くんにはもちろん幸村くんにも失礼だものね。そこはあなたを褒めなくちゃ。でもね、翔くんが泣いていたのはあなたに怒ってるんじゃないと思うの。·····そうね、自分を責めていたんじゃないかしら。あなたも泣いてしまったのでしょう?男の人っていうのはね、愛する人が泣いていると自分のせいだって思ってしまうの。私は翔くんが泣いていたのはそれだと思うの。本当かどうかはわからないけどね。」

 翔·····。そこまで私のことを思っていてくれたんだね。嬉しいなあ。自分でもよく分からなくなる。こんなに私のことを大切にしてくれている人の告白を断ってまで幸村くんを追うべきなのか。·····今更悩んでも仕方が無いよね。もう過ぎたことは直せないんだから。もう一度翔に会ってちゃんと話してみよう。泣いてたから私がどうして断ったのかとか言えてなかったしね。




 俺は最低だ。好きな人の前で泣きまくって挙句の果てには彼女を置いて帰ってきてしまった。ああ、なんて間抜けなんだろうな。

「翔!ご飯できてるわよ!!下りてらっしゃい。」

「今行く。」


「翔、なんか鼻声じゃない?あなた泣いてたの?」

「うるせえな!·····母さんには関係無いだろ。」

 益々最低だな。母さんにもキツく八つ当たりして。そりゃ断られるだろ。

「関係あるわよ。相談ぐらい乗れるわ。」

 ここは一つ相談ってのもアリかもしんねえな。このままだと俺は彼女とまともに喋ることさえできなさそうだ。恥ずかしかったが全て話した。

 母さんは笑った。

「あなたは気にしすぎなのよ。自分に本当は自信が無いからカノジョがなにか喋っているのも聞こえなかった。頭が勝手に聞くことを拒否していたのよ。あなたは親バカみたいになっちゃうけど十分かっこいいわ。自信を持って。彼女の好きな人の応援してあげるのもいいけど、あなたが諦めきれないのならそれでいいと思うわ。好きな人に負けないように頑張りなさい。恋はどう頑張ろうが個人の自由よ。」

 俺はまた泣いていた。でも今度は悲しかったわけじゃない。嬉しかったんだ。俺なんかを認めてくれている人がいるということが。

 明日から頑張ろう、かっこいいとことかいっぱい見せつけるんだ。

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