第3話 泣くな
「俺、お前のことが好きなんだよ。去年から。」
あー、はいはい。·····ん?まじか。夢オチか?
「まじ?ドッキリとかじゃなくて?」
「まじ。だってお前可愛いし、優しいし、人のことよく見てるし。」
人のことっていうか幸村君だけだけどな。
「そんなこと、私生まれてこの方言われたことないから·····よくわからないよ。」
「いいんだ、気持ち言っとかないと俺がモヤモヤしてるから言っただけだし、ここで返事をしてくれっていう意味じゃない。第一、俺はお前が1番大切だからお前が本当に無理なんだったら今ここで振ってくれたっていいんだ。その位の覚悟は出来てるよ。」
翔·····。翔の気持ちはすっごい嬉しいし、まず初めて言われたからここでOKしちゃいたい。でも私は幸村君に気持ちがあるまま翔の彼女でいたくない。そんなの卑怯だ。
「ごめん·····。私好きな人がいてね、その恋が実る訳じゃないんだけど今ここで翔と付き合ったら卑怯かなって。そんなの私じゃないかなって。翔の気持ちは嬉しいけど私は私でいたいからこの告白は断ります。ありがとう。」
翔。そんな顔しないで、いつもみたいに悪戯っぽく笑ってよ。翔の気持ちはすっごく分かるんだ。行動に移せてない私ごときに分かられるのは屈辱かもしれないけど。悔しいよね、悲しいよね。
「·····ごめんね。」
気づくと、私は泣いていた。
俺の初恋は儚く散った。俺は多分イケメンの部類だ。少しヤンチャで、女の子とも男の子とも沢山喋る。所謂接しやすいイケメンだ。そして少し、いや、結構モテる。でも俺は全部断ってきた。その子のことを好きになれないと判断したから。
でも、俺は去年素敵な女性と出会った。アイドルの様な可愛さではない可愛さ。つまり愛らしさがあって、喜怒哀楽が激しくて、友達は本当に大切にする。そんな彼女をすぐに好きになった。今まで人のことを好きにならなかったことがまるで嘘だったかのように。でも俺はすぐに気づいた、その恋は実らないことに。
彼女には好きな人がいる。あの子は決して口には出さないけど表情が豊かなんだ。彼の前では本当に恥ずかしそうで。でも嬉しそうで。好きな人がいることは分かっても俺は諦めきれなかった。だから今日告白した。きっぱりと振ってもらえるように。
「ごめん。」
その言葉の後、彼女はなにか喋っていたけど聞こえなかった。振られると分かっていてもやっぱり悲しい。辛い。頭が真っ白になって何も考えられなくなって、気づいた時にはもう涙が溢れていた。(こいつの前ではこんな泣いてる顔見せたくなかったんだけどな·····。)
「ごめんね。」
もう一度言われたので彼女の方を向いたら彼女も泣いていた。俺は最低な男だ。好きな人がいると分かっていて告白して、勝手に泣いて、挙句の果てには好きな人まで泣かしてしまった。この子は本当に優しいから、きっと俺のために泣いてくれているんだろう。ああ、最低だよ、ほんと。
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