第9話 別れと旅立ち。

「えー。HRを終える前に、報告がある。柊木。前に。」


 ざわざわと教室がざわめく。


「ふみちゃん?」


「……」


 教壇に先生と並ぶ。


「あー。突然ではあるが、柊木は、ご家庭の事情で転校する事になった。」


「な!」「そんな!」「ふみちゃん嘘でしょ?」


 一気に教室が騒がしくなる。


「あー。静かに!本当なら、春休み中に移動する予定だったが、本人たっての希望でお前達と一緒に4年生に上がりたかったそうだ。

 なので今回、特例として始業式だけ参加することを学校側が許可した。

 それで、急遽だが、柊木のお別れ会をするぞ。といっても色紙くらいしかないが、皆書いてやれ。」


 そして、クラスの皆は、色紙を書いたり、話かけてきたり、泣いてたり、SNSアドレスを教えてあったりした。


 そして、いつも一緒だった、やっくん達と帰った。やっくんは、最後まで頑張って泣くのをこらえていたけど目が真っ赤だった。


 僕は最後の最後で泣いちゃたけど。


 家まで送ってくれたやっくん達と最後にまた遊ぼうと握手して別れた。


 僕は泣きながら、うん!うん!としか言えなかった。


 家帰ったら、とーさまがいた。お仕事早退したと言っていた。明日はお休みとってるから、空港に一緒に行こうな。と言ってくれた。


 かーさまは僕の大好きな料理を一杯作ってくれていた。家族一緒にご飯を食べながら学校でのお別れ会の話や、やっくん達の話をした。


 とーさまが一緒に風呂、入るか?と聞いてきたので久しぶりに一緒に入って、とーさまの背中を擦ってあげたら、とても喜んでくれた。


 その日の夜はワガママをいって家族で一緒になって寝た。とても暖かかった。


 

―翌日。空港内にて―


〈ピンポンパンポーン♪attention please 、attention please、 airport~。〉




「気をつけて行ってくるんだよ。辛くなったら、い・つ・で・も・帰って来てもいいんだからな。」


「え?う、うん。」


「貴文さんったら、行く前からそんな事言って。」


「だって、しょうがないじゃないか。一番可愛い時期に離ればなれだなんて。」


「文生が自分で選んだ道なんですから、笑って送って上げて下さいよ。もう。」


「そんな事言ったってなー。」


「文生もお父さんに笑って送って欲しいでしょ?」


「うん!とーさま!僕、頑張るから!応援してて下さいね!」


「あ、ああ!頑張ってこい!」


「ありがとうー!とーさま!大好きです!」


 そしてハグをしてみる。


「ああ。体に気を付けてな。」


「はい!とーさま!」


「香生。文生を宜しくな。」


「ええ。行ってくるわ貴文さん。来週には戻るから、それまで一人で大丈夫?」


「ああ。まあ、一週間なら何とかするよ。」


「ふう。帰ったら家が大変そうね。」


「はは。そうならないよう、鋭意努力はするよ。」


「じゃあ、もう行くわね。」


「行ってらっしゃい。気を付けて。イタリアはスリが多いって聞くから用心するんだぞ。」


「ふふ。そうね。でも、ダグラス先生が空港まで迎えに来られるそうだから、大丈夫でしょ。」


「でも、用心はしなきゃ。」


「そうね。用心はするわ。行ってきます。」


「ああ。文生を頼む。文生。気を付けてな。」


「はい!て、それ、さっきもやったよー。」


「はは、そうだったね。じゃあ、行ってらっしゃい。」


「はい!行ってきます!」



 そして僕らはイタリアへと旅立った。









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