しかしこのお嬢様、結局むっつりなだけである。

「どうぞ、目隠しです」

「……はい」

「大丈夫？ 震えてない？」

「その……お嬢様」

「何でしょう」

「……短い間でしたが、お世話になりました」

「……貴方が根本的に勘違いをしているという事は分かったわ」

「しょ、処分されるのでは……？」

「違うわよ……早く付けなさい」

「……かしこまりました」

「では私が手を引きますから付いていらっしゃい」

「……はい」

「今回は……そうですね、処分とはむしろ……」

「むしろ……？」

「その逆、にあたるかもしれません」

「逆、ですか」

「えぇ……この部屋よ」

「はい」

「目隠しは付けたままよ、当分の間は付けたままですけど」

「はい……」

「さて、見えないでしょうけど紹介するわ。貴方にあてがう"雌犬"よ」

「……？！」

「挨拶は……人の挨拶で良いわ」

「は、はじめまして……？」

「ふふっ、ぷっ……」

「……お嬢様？」

「いいえ、なんでも無いわ……さて、この雌犬は私が教育し、今回の件の間は一切声を発する事は無いよう入念に指示しております」

「……？ はい」

「つまりその雌犬は返事をしませんし、それ以外の声も発しません」

「……はい」

「本来はこの用途の場合、声を上げさせた方が良いのでしょうが……私にも色々な都合がございますから」

「は、はぁ……それでその……あてがう、というのは」

「そのままの意味ですよ？ 昔は貴方を抑圧する事で制御しようとし、最近その方針を変えようと私なりに努力しているのは……ご存知でしょう？」

「……はい」

「ですが、私が毛嫌いするような……やましい事は衝動であり欲求です」

「…………はい」

「そのつもりは無かったのですが……私は、その部分だけは気付かぬ内に、いえそれを抑圧するのは当たり前だと除外して、貴方に抑圧を強いてしまいました」

「……はい」

「今回はその意味で、テストも兼ねております。やましい事を……徹底的に発散してしまえばどうなるか、そのテストです」

「はい……」

「そういうわけですので、準備をしてくださる。目隠しは残したままです」

「……っ、はい」

「こちらも……雌犬の方も準備させますから」

「……はい」

「それはそのままで良いわ、目隠ししたまま片付けるなんて不毛ですから」

「かしこまりした……」

「さてこちら、私が案内しますから……そう、ベッドの上へ」

「…………」

「緊張するのは良くないわ、深呼吸してリラックス……これは私から貴方へのご褒美なのですから。出来るだけ楽しんで欲しいの、本当よ？」

「……お嬢様。一つ、お伺いしたいのですが」

「何かしら？」

「……その方、いえ……そのめ、雌犬は……今回の件を、承諾して……いますか？」「承諾はもちろん、私のものですから」

「では、いえ…………お嬢様の強制ではなく、本に……えっと雌犬は望んでいますでしょうか？」

「…………何故、そのようなものが必要なのかしら？」

「……合意は、欲しい、です」

「へぇ、そうなの……ふぅん……色々思うところが私にもありますが、確認します」

「……はい」

「と、そういう事なの……ふむ、ふむふむ。まぁそうなの……ほうほうなるほどなるほどぉ……えぇ、私がしっかり伝えるわ」

「……出来れば、直接の確認が」

「私は、嘘は、つきません」

「……かしこまりました」

「合意は取れました、むしろ……いえ、このようなやましい事を私の口から言うのは憚られますが……とにかく合意です」

「しかし先程、お嬢様はしっかり、伝えますって」

「……こほん。そうですね、しっかり、伝えませんといけませんね」

「…………」

「その、えっと……とっても、我慢してて……早く欲しい、そうよ」

「そ、そうですか」

「えぇ、私が今回のために……用意したのですから、その位の素養が……あるのは仕方がないんじゃないかしら？」

「は、はい……」

「では、よろしいですね」

「…………かしこまり、ました」

「かしこまらなくてよろしい」

「……はい」

「今はその、お元気が無いようですが……」

「それは……このような状況のせい、というのはあります……」

「……そうですか、でも初めてしまえば……やましい気持ちが湧いてくるのでは無いでしょうか？」

「……かもしれません」

「では初めても構いません、貴方の前で……用意させました」

「……はい」

「そう、触れ合ってみたら……意外と、という事もあるかもしれませんよ？」

「……はい…………お、嬢様っ？！」

「どうか……なさいましたか？」

「いえっ……そんな、でも……」

「落ち着いてください……深呼吸して」

「ふぅ……ふぅ……はぁ……」

「そんなに驚いてたら、良くないですよ？」

「その……お嬢様はご、ご観覧……なさるの、ですか？」

「……えぇもちろんです。ちゃんと効果の程を確かめたいですし、それに何らかの事故が発生してはいけませんから、出ていきませんよ？」

「……どちらに、居られますか？」

「……そのような事を聞いて、どうするのかしら？ ……そうね、雌犬の目の前、特等席で見ているわ、これで良いかしら？」

「…………はい」

「見られるのが恥ずかしい？ でもそういうものではなくて？」

「……僕だけ、一方的にというのは、あります」

「それはしょうがないわ、事情があるのです。あぁ、安心してください、雌犬の美醜については……そうですね。良い方、じゃないかしら？ 私には分からないわ」

「……そうですか」

「……さぁ、どうぞ」

「はい…………ちょうだい、いたします」

「えぇ、どうぞ……ゆっくり味わってください」

「では、その……上に」

「まぁ……何故、そのように一々言うのかしら？」

「……いえ、不可解な行動が無いほうが、よろしいかと、考えました」

「じゃあ、いいわ。そのまま、そのように続けて」

「……はい」

「ふぅん……こ、そんな風に……」

「…………お嬢様の、ような……香りがします」

「……それは、私自身が準備したからでしょう。その時に……私の匂いが移ってしまったのでしょうね」

「……はい」

「……お嫌い？ その……私の匂いは」

「……いえ、むしろその」

「んっ……ふぅん、そう……」

「……そこから見え、ますか？」

「…………見えはしませんが、雌犬の反応等から察しはつきます」

「そう、ですか……」

「えぇ、そうです」

「ではその……色々と、触ります」

「それはダメね」

「……はい」

「言い忘れておりましたが、貴方は犬です。喋るのは構いませんが、犬のやり方の範囲のみで許します」

「……そう、ですか」

「そうで無いと私が……やましい事をするのを、ただ見ているだけという事になっちゃうじゃない」

「…………はい」

「私が、見ているのは……犬がそのような欲求を、お互いに発散させあっているところを……見て、学習しているのです」

「……はい」

「知的好奇心によるもの、それが見る理由の大きな一つです」

「はい」

「……では、続けてくださる？」

「はい……その、擦り付けるように……します」

「ふぅん、そう……んっ」

「犬ごっこではあっても、構造の違いとか、ありますから……」

「……褒美に対しても、気遣いを、んぅ、するのは……見上げた心意気ね」

「……お嬢様」

「……あっ……何かしら？」

「いえ、先程から……何か、息が」

「ふっ、んっ……それは、知的好奇心よ。好奇心を満たすと、興奮する。それだけよ……んっ」

「そう……ですか」

「そう。そうよ……」

「…………」

「ふふっ、最初はんっ……あんなに遠慮してたのに、っ……随分と調子が良くなってきたようね？」

「っ……はい、その……肌なども、触り心地が……良く、っ」

「そうで、なくては……困ります、貴方へのご褒美なの、ですからっ」

「……ありがとうっ、ござい、ます」

「ふふっ、それで……この、そのような事を続けるの？」

「……いえ、頂きま、す」

「えぇ……召し上がってください」

「ぐっ、くっ……」

「っ……目隠ししているから、場所が……分からないかしら？」

「……申し訳、ございません」

「そうね、それは想定していなかったわ……でも、大丈夫」

「……んっ！」

「んぅ……そう、案内させたわ……そこよ」

「…………はい」

「ふふっ、楽しみですわ……どのような顔をするのか……」

「その、良いのですね？」

「えぇ、えぇ……構いませんよ、そのために用意したのですから」

「では、その…………うっ、ぐっ……！」

「っ、ぁ……！ ……その様子、ですと……キチンと、入ったようですね」

「は、い……」

「っぅ……どうぞ、ご存分に使い、なさいな」

「はい……っ、あっあぅ……」

「遠慮は……ふふっ、もうしないようですね」

「お嬢、様……お嬢様っ……！」

「あらあら、っ……私の事をそんなに……みっともない顔をして呼んで……ある意味ではボロが出たとも、んっ、言えますねぇ……」

「お、嬢様……！ お嬢、様……！」

「えぇ、ですが……っ……構いませんよ、そのような鬱憤をっ、普段は私に向けないようにするための……行為、なのですから、ぁっ」

「っく……もう、限界……です」

「そうっですか……そのようなっ、やましい事に関する知識が無いので、分かりませんが、ぅ……随分っ、早いのでは無いでしょうか……っ？」

「っあ……！！」

「んっ……その様子、ですと……達したよう、ですね」

「ふぅ……はぁ……はい……」

「っ……なるほど、良い勉強になりました……見学、したかいがありました」

「……お嬢、様」

「……はい」

「……ありが、とう……ございます」

「いえいえ、どういたしまして……と言いたいところ、なのですが……まだお礼には早いですよ？」

「…………は、い？」

「最初に言った通り……徹底的に発散させる事が……目的です」

「…………」

「ですから……んっ……ふふっ、そうです……まだ出来るのであれば……」

「…………はい」

「回数制限は、ありませんよ？ 強いて言うなら……限界までです、貴方の」

「………………はい、かしこまり、ました」

「さぁ、思う存分……奮ってくださいね？」