第15話 落ち着け馬鹿
レイナが誘拐された。
魔力は感じれる、つまり場所はわかる。
「・・・行くぞ」
憎悪に満ちた瞳で前を睨み付けながら全身する。
アイギスも続くように歩みを共にする。
「お、おい、待てよ」
「待てねぇ、三日間の猶予も必要ねぇ」
クラスメイトの制止の声も届かず、キバとアイギスは止まらない。
「おい待てって!!」
「冷静になれよ!」
ゲインとカーターが叫ぶ。
「・・・僕達は、進むしか道は無いんだ」
アイギスが言い、進む。
振り返りはしない。
「・・・皆、捕まえろ!!」
ゲインが、とうとう吠えた。稲妻に打たれたように皆が我に返り、キバとアイギスを押さえ込む。
羽交い締めにされ、地面に押し倒された二人は、必死にもがく。
「どけぇ・・・俺は、行くんだ・・・!!」
折れない意思。
動こうとする気迫。
そして、衝動を行動に起こす行動力。
平均以上の力だった。え
いつものキバとは明らかに違った。完全な非凡。キバが追い求めていた、状態。
(・・・悪いが、その非凡は折る)
ゲインは、意を決する。
ゆっくりと、キバに近づく。
噛みつきそうなキバの猛攻を回避してーー
キバの頬を一発、音高らかに殴った。
クラスメイトが、キバが、アイギスさえも唖然とした。
予想外すぎた。
「・・・落ち着けよ、馬鹿野郎!!」
叫んだ。魂から、思いっきり。
「お前達には仇かもしれない!!事情は知らねえし、知りたくもねぇ!でも、今お前らが行けば殺られるのは確実だろうが!!」
同じ修羅場を潜り抜けて来たからこそ、言える。
「2日くらい準備に回そうが、お前らにはそれを補って余りある実力がある!!ならそれを生かせよ!!なぁ、ギルシュの英雄、キバ!!」
それだけで、十分だった。
「・・・分かったよ」
「・・・あぁ、十分だ」
アイギスとキバが、落ち着く。
燃え上がった憎悪も、膨張した憤怒も、収まった。
「3日目早朝、奴等の元へ行く。準備の時間だ」
皆が準備に当たっている間、アイギスは一人校外の平原へ来ていた。
「居るんだろ」
平原にぽっかりと空いた洞穴。
そこから出た使者と、触れあう。
アイギスの戦いは、ここから始まる。
中級区、裏マーケット。
表で出せないような品々を扱うここに、キバは足を運んだ。
「・・・待ってろ、レイナ」
気づけば時間は過ぎ、3日目の早朝。
寮の前に集合した、担任除く1年1組全ての人員が集合していた。
否、一人を除いて。
「・・・キバは何処だ!?」
クラス一同、朝もはよから血圧急上昇。
「お~い!!こんなんあった~!!」
アイギスが持ってきたのは、一枚の紙片。
『間に合わない、先に行け』
キバの筆跡で、そう書いておりーー
「はあああああああああああああああああああああああああああああ!?!?!?」
クラスメイトを愕然とさせるには十分すぎた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます