第7話 なんで

「お待たせー!!」

「素材集まったぞー」

「あいつらに手間取ってしまった・・・」

ゲイン、カーター、クロエ。そして彼らが率いた班員達が帰校した。それぞれ解毒薬の材料を持って来ている。

「聖水、祝福されし鉄粉、冥府馬ダークホースの毛。そんで俺の悪魔の尻尾の先っちょ。こいつらを細かく刻んで・・・」

キバは材料を確認する。黒魔力で構成したナイフを生み出し、素材を刻む。結合を脆くする作用があるためさくさくと切れる。

「んで薬研にぶちこんで、っと」

薬研で素材を潰し、混ぜ合わせる。次第によくわからない匂いが立ち込める。

「・・・おいこれ作り方あってんのか」

「あってんじゃね?まぁ焚書モノの本だけど」

(それつまり信用できねぇじゃん)

1年1組の強い結束力をもってすれば以心伝心も軽々成し遂げる。

より細かくする為にすりつぶす範囲を少し狭める。ある程度細かくなったら動かす場所をずらし、さらにすりつぶす。

(皆が集めて来てくれたんだ、無駄にしない)

集中、もっと効能を上げるのなら細かく。本の教えに従ってただ同じ作業を繰り返す。

全てはレイナを元に戻す為に。

ずっとずっと、同じ作業を繰り返した。




どれ程の時間が経ったのだろうか。窓にさしこむ夕日が眩しい。

長い時間、クラスメイトは自分を待っていてくれた。レイナは少しウトウトしてるが。

「・・・よし、こんなもんでどうだ」

鈍い白銀の粉末。どこか荘厳なオーラを放つ薬を前に、レイナも目を覚ます。

「レイナ、これちょっと飲んでみてくれないか」

薬包紙一枚分、約20グラム。

ひとつまみほどの量を舐めたレイナ。

「・・・おー?苦くないぞ?」

さらさらと飲み物でも飲むかのように飲み干す。

「確かこの薬は速効性、すぐに治る筈!!!」

クラスの期待が高まる。

レイナの汗腺が開き、そこから煙が出る。

「これは、やったか!?」

誰かが叫んだ。



煙が晴れた時、そこに立っていたのはーーーー


「おー?なんかぽかぽかする」


幼女レイナだった。

「「「「なんでやッ!!!!」」」」

クラス全員がハモる。てっきり治るものだと思っていたが、違ったのか。

「なんでだ、素材は間違い無かった筈・・・」

しかしなってしまったものはしょうがない。とりあえずその日は帰って寝ることにした。




深夜、とも言えない宵の口、10時。歓楽街や色街なんかの夜に本領を発揮する店は閉まらないが、ここ上級区の明かりはある程度消えている。

(ここからニ週間くらいは酒盛りが続く、それに備えて寝てるみたいだな)

担任のフラーは、上級区の家屋を、屋根から屋根へと跳び走る。移動中も全く音を立てないのは軍隊仕込みだ。

「フラー・チョッパー、だな?」

「・・・ビンゴ」

夜風がひゅうと吹く。

宵闇に紛れた戦闘は、静かに幕を開ける。

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