第3話 良薬は口に苦し、でも集めるとこまで苦いとは聞いてない。
「よーし!!じゃあ素材集めと行きますかぁ!!」
「落ち着いて、とにかく素材集めは静かにやるよ!」
第二班withアルロとタマモ。
「まぁ死んだらキバに生き返らせてもらえばいいし!!」
「そういう問題じゃないだろ・・・」
アルロはすっかり苦虫を噛み潰したような表情になり、タマモは乾いた笑いを浮かべる。
「というか本当に
「らしいよ。目撃情報あるし、何より死者が出てる」
聞きたくなかった情報もあるが、それも受け入れて進む。自分達が挑むのは望んで挑んだ事だ、茨の道でも進むしかないのだ。
「よし、やるぞ」
「絶対死なずに帰るんだー!」
「まぁつい最近死んだけどね・・・」
「・・・全ッ然出ねえじゃねえか!!」
目撃情報があった森林の奥深くで生活しているが面白い程でない。かれこれ三日粘ったけど出ない。気配すらない。
「・・・チッ」
ポートが舌打ちし、鞄から銃を引き抜く。
「えちょポートなにし」
ポートが大きく息を吸い、吐く。そして天使のような笑みで。
「ド畜生がぁああああああああああああああああ♡!!」
女の子のように可愛い声で、
「はぁー、すっきり♡」
一同、絶句。何も言えない。
瞬間、向こうからパカラパカラと、軽快なリズムが響く。その音は蹄が地を蹴る音に似ていて――
「お、おぉ!!
黒い毛が体表を覆う馬。目の色は紫。まさしく冥府馬だ。
こちらに向かって走ってくる、しかも何やら鼻息が荒い。
「・・・あれ怒ってね?」
アルロの一言が、決定打。
「に、逃げろおおおおおおおおおおおおお!!!!!」
怒り狂った冥府馬はタマモ達に向けて突進、敵意剥き出しだ。
「お、おぉおお!!『第二段階』<迅雷>ッ!!<
第二段階を使用、バチバチと騒がしい電気が周囲を乱舞する。
(これもまた、キバと考えたんだよな・・・)
それはある日の早朝の事。
朝の鍛錬をしていたキバに話しかけたゲインは、こんな事を話す。
「俺の第二段階さ、基本速くなるだけとか移動とか、攻撃に転じる技が少ないのが欠点だと思うんだよぉ・・・」
「そうか・・・?やっぱり移動は大事だぞ、俺は移動を強化できてなかったらアスモには勝てなかったぞ」
あの日を思い出しながらキバは語る。
スライド、突貫、直線を折ったような軌道。機動力は戦いにおいてかなり重要項目であり、それら全てが攻撃に転じる技であることも。
「機動力の他だと・・・攪乱とかもいいんじゃないか?」
キバのふとした一言。
「攪乱?・・・電気でならできるかもな」
「よっしゃ、じゃあやってみようぜ!!」
(このうるさくて眩しいのとか、少しはビビる筈!!)
周囲で爆ぜる電撃に驚き、冥府馬は少し立ち止まる。
「<
「<
コインがアゴを砕き、魂を揺らされ心拍が急に変化、馬は倒れる。
「・・・スァア!!」
ソバーの命がけの特攻。〈
「やれ、アルロッ!!」
木から木へ、蹴り上がったアルロは空中へと身を投げ出す。
「〈
馬の眉間を狙い過たず撃ち抜く。幾らか血を流した後、バタリと倒れる。
「毛もだけど、肉も貰っていくか」
ゲインの提案で、解体作業が始まる。
「殺したんだ。その命を無駄にしたらダメだ」
アルロは解体の最中、この言葉を繰り返しいた。職場体験で猟師の元働いたアルロだから言えるその言葉は一同の胸に深く突き刺さった。
「お願いします!!聖水を譲って頂けませんか!!」
「ダメだダメだ!!お前達みたいな青二才に貴重な聖水を渡してたまるか!!!」
ギルシュ帝国で一番大きな教会。クロエ、メイルー、ノアの三人は教会の牧師達に頼み込んでいた。
「友人の病気を治すのに必要なんです!どうか、少しで構わないので下さいませんか!?」
「ダメだ!!お前らには貴重すぎる!!無駄になるのが関の山だ!!」
怒鳴り散らされ、罵声を浴びさせられる三人。でもここで泣いて引き下がる訳にもいかない。
「慈悲の心は無いのですか!?」
「うるさい!!我々にも事情がある!!・・・女子二人の内、どちらか一人を置いていくのであれば話は別だが」
下卑た笑みを貼り付けた牧師数名が、三人を取り囲む。
「さぁおとなし」
「・・・あ?」
近寄った牧師の一人が吹き飛ぶ。クロエが殴り飛ばしたのだ。
「それ以上近づくな、殴るぞ」
「これはもう怒りますよね!!私置いて行かれるのとか嫌ですし!!」
「てか僕無視するとか・・・」
中等部の学生とは思えない程の殺気が放たれ、牧師達は後ずさりする。
「<
「〔おいで、黄金の音を高らかに〕!!<抱擁せし
金色の輝きと草の枝の緑が絡まり合い、周囲は煌めきに満ちあふれる。
「〔透き通る鎧を、我が元へ〕、<硝子の
弱点となるであろう部分にのみ纏った硝子の鎧。透き通り輝く様はクロエと相まって宝石のよう。
(この鎧、キバにアイデアをもらったのよね・・・)
5月、昼ご飯を分けたクロエにお礼を言いに来たキバ。
「ほんっとありがとう!!俺ほんと死ぬかと思った!!」
「いや、いいのよお礼なんて・・・そんなに言うなら、ちょっと付き合ってくれる?」
クロエは貴族、自分の家に大きな家くらい持っている。
そこでクロエは語る。
「硝子魔法、って属性の魔法なんだけど、どうしても攻撃がワンパターンになりがちなの。本当はもっと複雑な攻撃方法を編み出したいのだけど・・・」
「俺の平凡な知識でよければの話だが・・・」
そこでキバは提案をする。
「クロエはさ、肉体がまず仕上がってるじゃん、だからそこを生かせばいいと思うんだ」
クロエの動きには無駄が無く、しなやかだとキバは評価する。
そのうえで拳闘などはどうだろうかと提案する。
「一応俺も基本は大丈夫だし、シャオランも拳で戦ってる。手合わせも習得もできるんじゃないかな、って考えるよ」
的確なアドバイス、これに関しては非凡だと思えたクロエ。
「じゃあ、その基本を教えてちょうだい」
「いいぜ、俺の鍛錬はきっついぞー!!」
「<
硝子が砕けるような音が拳がぶつかった瞬間に鳴り響く。散った煌めきが乱反射し、教会の中を照らす。
(一人一人でしか相手できないのが難点ね・・・)
とは言っても数十名は牧師はいる。広範囲ではなくとも倒して行ければ問題は無い。
「やりますよ、ノア!!」
「こっちも準備オッケー、メイルー!!」
牧師を薙ぐミストルティンと咆吼するファフニール。その二つを今、一つに合わせる。
「「<
ファフニールの吐息と、ミストルティンの刃。同時に襲い来る無数の裂傷。
形を持つ凶器と形を持たない凶器が合わされば、無限の傷を負わせる。
「ふぅ、やっと半分ですか」
「まだ魔力はもつよ、頑張ろう」
牧師達は恐ろしかった。自分達よりも若い者達がここまで自分達を圧倒するなど誰一人として考えていなかった。
いつか自分もやられてしまうんじゃなかろうか、恐怖が渦巻き、体がすくむ。
「せっ、聖水なら渡す!!渡すから、命だけは!!!」
牧師の一人が、そう叫んだ。命が惜しい彼は、聖水を渡すと言った。
これ以上無意味な戦闘は行いたくない。クロエ達はそう思い、臨戦体制を解除、聖水の入った瓶を受けとる。
何はともあれ、聖水採取完了。
「あー・・・祝福の素材を混ぜるのが難しいんだな」
カーターはひとりごち、寝転がる。祝福された鉄粉採取班はカーター、クレナイ、スノウの三人。カーターが【武器】アーティファクトで鉄粉を作ったり、鉄を精錬している間、クレナイとスノウは鉄鉱石を集める。そして現在いるこのアテナ山脈鉱山には、「女神の願い」という宝石が落ちている。この鉱山では別段珍しくもないのでそこかしこに転がっている。
しかし問題はその配合比率だ。
願いが多いと鉄が溶け、願いが少ないと何も起こらない。そしてそれは文献も残されていない為、手探りで配合比率を探さなければいけないのだ。
「カーター、どう?光明は?」
「大丈夫ですか・・・?少し休んだ方がいいんじゃ・・・?」
鉱山から戻ったクレナイとスノウが声をかける。スノウは心配している。
「大丈夫だよ、それこそお前らも休んどけ。疲れたろ?お茶くらい淹れるよ」
魔道具を呼び出し、お茶を入れさせる。いつぞやのシンカイ先生と作ったあの魔道具だ。
温かい紅茶は三人をほっこりさせる。
「・・・それにしても、配合がシビアすぎるな・・・」
どうすればいいか、頭の中で式を組み立てる。
(鉄粉5グラムに対し願いが2グラムで溶ける、鉄粉5グラムに対し願い0.2グラムで反応無し・・・1グラム程度で僅かに反応はあるが、とても祝福とは言えない)
もう発熱して煙でも出そうな勢いで図式を立てる。
「でもあれだよね、『願いは祈れば通じる』なんて事も言われるよね」
「私達は、そう教えてもらいました・・・!!」
二人の何気ない会話、そこでヒントを得た。
(『願い』、『祈り』、『女神』・・・なんか、繋がった気がする!!)
立ち上がり、精錬された鉄を手に取る。
(鉄粉は五グラム、願いは一グラムで配合比率は変更なし、ただし加えるのは・・・)
レイナの顔、レイナの動き。幼くなってしまったレイナ。
「・・・頼む。レイナを元に戻す為、俺に力を・・・!!」
口を突いて出た言葉、純粋な想い、願い。祈りを加えた混ぜる作業は見る者を惹きつける。
「お願い!!今だけ、今だけでいいから!!」
「レイナちゃんを、助けて・・・!!」
薬研を動かす手が速くなる。
(頼む、俺達に光を――――!!)
瞬間だった。
鉄粉が光る。反応を起こし、熱気が揚がる。
白銀に輝くその鉄粉は、女神に祝福されたような色をしている。
「こ、これが・・・!!」
「祝福されし、鉄粉!?」
「よっしゃぁ!!できたぁああああ!!!」
祝福されし鉄粉、採取完了。
時同じくして、士官学校一年一組。
「先生、皆!!レイナを連れて逃げてくれ!!」
教室に入るは、無数の黒い影。
速攻でしっぽの先を切り落としたキバ、採取は完了。
しかしそれでもグレムリンの波が止む気配は無い。
「姫は、返してもらうわよ」
グレムリンの羽音の中響き渡る、凛とした声。
黒い日傘の下にいたのは女性。長いくすんだ白の髪、病的なまでに白い肌、瞳は金色。
歩く度に豊かな双丘が揺れる様は、まさしく絶世の美女。
「・・・へっ、件の組織の一人か」
「ええ、私はラミア・ノルン。
その目の瞳孔は縦長に走り、鋭い犬歯を剥き出しにして、こう言った。
「私達の悲願の為、姫を帰してもらうわよ」
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