第5話 神隠しの森
ゲームを始めて3時間。
そろそろ飽きてきたので休憩をする。
隣の本棚に目を向けるが
何周もした漫画は見る気がしない。
中途半端な時間に寝てしまったので眠気もこない。
(ネットサーフィンでもするか…)
しかし検索するワードが思いつかない。
何を検索するか迷っていると、今朝やっていた行方不明の特集を思い出した。
(この町の行方不明者でも調べてみるか。)
<神村町 行方不明>
検索してみると興味の引くサイトがいっぱい並んでいる。
僕は上から順番に開いていった。
4個めの記事を見ていると気づいたことがあった。
この町で行方不明になる人のほとんどが学校の真逆にある森に集中しているのが分かった。
この森について調べてみると神隠しの森と呼ばれているらしく、行方不明者のほとんどが神隠しの森に行くと言っていなくなっているらしい。
僕は小さい頃、おばあちゃんから「危ないから森に入ってはいけないよ」と言われたことを思い出した。
(だからあの森に入ってはいけなかったのか……)
そのまま記事を読んでいくと警察が神隠しの森で大規模捜査をしたらしいが、見つからないどころか行方不明になった警官が2人もいるらしい。
ミイラ取りがミイラになった。
この言葉がこんなにも似合う事件他にあるだろうか。
そんなことを思いながら別の記事を読んでみる。そうすると新たな発見があった。この町で行方不明になった人が1人だけ見つかっていたのだ。
記事には、
(学校の上にある高台で生存者を発見。生存者は「近づくな!俺を殺す気だろう!」と訳の分からないことを言っており、まともに会話ができない状態である。)
僕はこの記事を読んで気持ちが高ぶり興奮してきた。もしかすると3年前に行方不明になった先生は生きているかもしれない。段々と神隠しの森に興味を湧き始めていた。
そして、記事を読み終えた時には、行方不明になるかもしれないという恐怖はなく、この森に行ってみたいという好奇心にかられていた。
次の日僕は神隠しの森に行く準備をしていた。方位磁石、懐中電灯、この町の地図、水、お腹が空いたとき用にシリアルバーをリュックサックに詰め込む。そして動きやすいようにジャージに着替えて腕時計をつける。財布とスマホはポケットに入れ準備は完了だ。
「これでよし」
そう呟いて部屋を出た。
玄関にはいつも履いている靴があるが、森に入るということで靴棚からスポーツシューズを取り出す。中学を卒業したとき、部活を始めるかもしれないからと言い、体力作りのため母が買ってくれたのだ。結局部活には入らず捨てようと思っていたが、取っておいてよかった。サイズは少し小さいが軽く動きやすい。
「行ってきます」
「休みの日に出かけるなんて珍しいじゃん。どこか行くの?」
「ちょっとね」
森に行くと言って止められたくなかったので、行き先は言わなかった。
「気をつけてね」
「うん。夕飯には帰るよ」
そう言って僕は家を出た。
神隠しの森には家から自転車で20分くらいかかる。家の前の道路を左に行き、商店街を突っ切ると交差点がある。交差点を右に曲がりずっと真っ直ぐ行くと森が見えてくる。
自転車を漕いでいると汗がにじみ出てきた。今日は少し暑い。持ってきた水だけだと足りなくなりそうなので、商店街にある自動販売機で500mlの水を買って森へ向かった。
森の入り口に着くと自転車を止めた。ここから先は流石に自転車に乗って行ける道ではなかった。
そして、盗まれる心配のないこの街では、いつも通り自転車に鍵をかけず、森へ入っていく。森の中に入ると多くの木々で太陽の光が遮られ薄暗い。しかし、そのおかげで森の中は涼しくなっている。だらだらかいていた汗も徐々に引いていった。
(これなら水は買わなくてよかったな。)
そう思いながら森の中を進んでいく。もちろん舗装されている道など無い。ではなぜ、森に入っていく人が多いのだろうか。答えはすぐにわかった。
この森にはキノコがたくさん生えていた。詳しいわけでは無いので食べれるかはわからないが、しめじのようなものも生えている。
さらに奥に進むと竹林がありタケノコが生えていた。何本か取っていこうと思ったが、水を買ったせいでリュックサックが重く、取っていくのはやめた。
その後、特に何も見つからず道無き道を進んでいく。最初はキノコやタケノコでテンションが上がったが、それ以外は何も無い。
冷静に考えてみると警察が探して見つからないのに高校生の僕が行方不明者やその証拠品など見つけられるわけがない。僕は来た道を引き返した。
おかしい。
もう2時間くらい歩いているのに一向に外に出れる気配がない。森に入ってきたときのキノコやタケノコも見つからなくなっていた。少し不審に思いバックから方位磁石を取り出す。
「嘘だろ!」
方位磁石を見てみると針がぐるぐると回り使い物にならなくなっていた。
行方不明の人たちも同じようなことが起こっていたのだろうか。そんなことを思いながらもとりあえず前に進むことにした。
もう何時間歩いたかわからない。木々の間からのぞいていた日光はなくなり辺りは真っ暗だ。唯一の明かりは今持っている懐中電灯の明かりだけ。よくわからない動物の声がする。葉っぱと葉っぱが擦れるカサカサした音が余計に恐怖心を煽る。
恐怖心に苛まれながらも前に進むと
祠とトンネルを見つけた。
祠には落ち葉がかかっており手入れが全くされていなかった。祠の真横にあるトンネルは2mくらいの高さで横幅もそんなに大きくない。車が通るように作られたわけではなさそうだ。ということはトンネルの先は車が通るような道には続いていないのだろう。トンネルの中を懐中電灯で照らしてみるが出口は見えない。
だが、もしかするとトンネルの先には人が頻繁に通る道があり、その道をたどっていけば知っている場所にたどり着くかもしれない。
僕は怖さで震えながらもトンネルに足を踏み入れた。
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