第4話 放課後

学校を終えて小林と一緒に帰る。


「これ絶対明日筋肉痛だろ」


「明日は動けないね」


「氷風呂に入ると良いって聞くけどどうなの?」


「あれは運動後、すぐに入らなきゃ意味ないよ」


喋りながら自転車に乗る。

幸い帰りは下り坂だ。

坂の勢いで家まで着きたい。


そんなことを思いながら坂を下っていくと

小林が視界の右斜め前に入った。

どうやら小林の自転車の方が速いようだ。

いや、ただ単に小林の方が重いだけかもしれない。


小林が何か喋っているようだが、

風切り音とどんどん離れていくせいで聞こえなくなっていく。


そんなことは知らず小林は喋っているが聞き取れない。

僕は追いつこうとペダルを必死に漕ぐと今度はスピードを出しすぎて小林を追い抜いてしまう。一瞬見えた小林の顔は笑顔だった。


「おい!待てよ!」



一瞬見えた笑顔が一気に怒った顔になるのが想像できる。


「この勢いで帰ろう!ついてきて!」


「よっしゃ!任せろ!」


僕はこんな友達との何気ない日常が大好きだった。



「じゃあね」


「おう。また来週!」


僕は自転車を降りて玄関の真横に止めた。

スクールバックの横ポケットから家の鍵を取り出す。


「ただいまー」


いつもは母の返事があるのだが今日はなかった。玄関に靴もないので、おそらく夕飯の買い出しにでも行ってるのであろう。


僕は階段に上がり自分の部屋に入る。


「もう歩けない」


独り言を呟いてベットに寝転ぶ。

普段は帰ってからすぐゲーミングチェアに座り、パソコンを起動してネットゲームをやるのだが、今日はそんな気分になれない。


目を閉じるとすぐに眠気がやってきた。

僕はそのまま眠気に抗えず寝てしまった。


「夜ごはんできたよー!」


かすかに聞こえる母の声で僕は目を覚ました。窓から見える空はすでに暗くなっている。


「うーん」


寝違えたのか体が痛い。伸びをしてベットから出ると体が重く感じた。完全に筋肉痛だ。


時計を見ると8時を回っていた。重い足取りながらも部屋を出る。階段を降りようとすると足が痛くて変な降り方になってしまう。


母が見たら「何馬鹿なことやってんの」と

馬鹿にされるだろう。バレたくないので足の痛みを我慢し出来るだけ速く階段を降りる。


「何馬鹿なことやってんの」

バレた。

これが星座12位か…。


「体育で走ったから筋肉痛なんだよ」


「家でゲームばっかりやってるからでしょ。


ちゃんと外に行って運動しなさい」


そう行って母はトイレに入っていった。


(余計なお世話だ。)

そう思いながらリビングに入り席に着く。


テレビではクイズ番組がやっていた。

芸人が珍回答をしてスタジオが盛り上がっている。


僕はお皿に乗ったシューマイを食べる。

この味は冷凍食品だろう。だが美味い。

よく最近の冷凍食品は美味くなったと聞くが、僕からしたらずっと美味いままだ。


母がトイレから戻ってくると


「今日冷凍食品が安かったのよ〜」


やっぱり冷凍食品だった。


「そのシューマイも冷凍食品なのよ」


「うん。なんとなく分かった」


「冷凍食品でも美味しいでしょ?」



「うん。いつもの手作りより美味い」



「なんてこと言うのよ!」


「ただいまー」


そんな会話をしていると父が帰ってきた。

このままだと怒られる気がしたので助かった。

(今度肩でも揉んでやろう。)

そう決めた。



夜ご飯を食べて部屋に戻ろうとすると

僕に大きな壁が立ちはだかった。


階段だ。


降りるのはまだ良かったが、

上がるのはきつい。


手すりに全体重をかけて

なるべく足に力が入らないように気をつけながら上がる。


「お前何やってんの?」


父にもバレてしまった。


「体育で筋肉痛」


「だっさ。少しは運動しろよ」


父にも言われてしまった。

(余計なお世話だよ。あんたもビール腹だろ。

仕事に体育があったら絶対に筋肉痛になってるよ!)

そんなことを思いながら必死に階段を上がっていく。


部屋に戻るとすぐにゲーミングチェアに座りパソコンを起動した。今日は珍しく宿題がなかったので今からゲーム三昧だ。

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