第2話 HR(ホームルーム)
玄関を出て真横にある、庭へと続く道に自転車を停めている。僕は自転車を家の前にある道路まで出し、自転車に跨った。
この町では自転車を盗む人がいないので鍵をかける必要がない。自転車で約30分ほどの僕が通う神村高校に向けて漕ぎ始めた。
山の中腹にある神村高校は全校生徒が200人程度の小さな高校だ。ちなみに頂上には隣町まで見える高台があり、そこから見える夜景はとても綺麗と評判だ。
僕は学校の駐輪場に自転車を止めながら呼吸を整えていると
「おはよう!」
と明るい声で後ろから小林が話しかけてきた。僕の隣の列に自転車を止める小林は呼吸が乱れている。
それもそうだ。学校の前には長く曲がりくねった坂がある。この坂さえなければ僕はあと10分は早く学校に来ることができる。
「おはよう」
2人で呼吸を整えながら会話をする。
「英語の宿題やった?」
「やったよ。結構難しかったね」
僕は帰ったらすぐに宿題をやるタイプだ。
しかし小林は……
「俺やってないから難しいのかは知らない!お願い見せて!」
やっぱりやっていなかった。小林は英語が苦手だからと言って英語の宿題はやってこない。なので毎回僕に頼んでくることが多い。
しかし、友達の少ない僕にとっては頼られることが嬉しくて断れない。
「あとで見せるよ」
そう言って僕たちは教室に向かった。
教室に入るとすでに半分ぐらいのクラスメイトがいくつかのグループに分かれて話していた。
「昨日のテレビでやってたドラマの俳優かっこよくない?」
「学校来る前に行方不明の特集やってたよー」
各々のグループから話が聞こえる。
行方不明の特集は僕も見た。心の中で喋りかけながらも実際には喋らない。自分の机に座り教科書やノートを机に入れる。
「小林。これ英語のノート」
「サンキュー!」
僕は小林に英語のノートを渡す。小林は僕の右隣にある自分の机に座り必死にノートを写し始めた。その姿を見て、僕は机に突っ伏して寝た。
キーンコーンカーンコーン
鐘の音で僕は目を覚ました。教室にはすでに鈴木先生がいて黒板の前に立っていた。。
「ほらー早く座れー。HR始めるぞー」
男らしい低い声だ。顔も渋い感じのイケメンで女子からは人気が高い。隣を見てみると小林が宿題の写しを終えてぐっすり寝ている。
「笹木。小林を起こしてやれ」
僕は小林の左肩を叩き起きるように促す。小林は急に立ち上がり
「うるせー!早く出てけよ!」
と叫んだ。
教室は一瞬静まり返ったがすぐ笑い声に変わった。
「俺が嫌いか?」
鈴木先生が小林に言う。
「全くそんなことありません!めちゃくちゃ大好きです!」
鈴木先生と小林のやりとりに教室の笑い声がさらに大きくなった。
「もう座れ」
と鈴木先生に言われ小林はスッと座る。
先生が生徒を落ち着かせると朝のHRが始まった。内容は先生が行方不明の特集を見たらしく気をつけろなど話しているっぽい。
しかし僕は別のことに興味があった。
「どんな夢見てたんだよ?」
と小林に小声で聞く。
「エロ本読んでたらババァが部屋に入ってきた……」
その答えに一旦収まった笑いが再び込み上げてきた。
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