一番好きな人だからこそ……❤
ダンサブルングの酒場の踊り子は誰も彼も本当に個性的だ。まるで衣服のモデルのようにすらりとした踊り子もいれば、胸の大きな踊り子もいるし、母性的な踊り子や、ちょっと子供っぽい踊り子もいる。
そして、ユリとマユのように、息ぴったりなペアの踊り子もいる。オレンジを基調とした衣装とへそ飾りが特徴的な2人の踊りは、息ぴったりな見事な連携も相まって評判が上がっていた。
ユリとマユはこの年18歳。互いにオレンジ色の肩まで届く髪を持ち、青みがかった瞳を持ち、白く艶のある肌を持つ美少女だが、その性格は対照的だった。
ユリはどちらかと言えば控えめで、オレンジを基調とし、へそ飾りの部分だけ肌を露出したシースルーのドレス風の踊り子装束に身を包む美少女。
マユは非常に快活で明るく、ビキニ風の非常に露出度の高い踊り子装束といった活動的な格好が特徴的な美少女だ。
「ありがとうございます」
丁寧にお辞儀をしながらお客様に挨拶をするユリ。
「また次も見に来てくれると嬉しいよ~‼」
両手をぶんぶんと大きく振って、満面の笑みで元気よく応えるマユ。
このように、舞が終わった後の2人の対応から見ても、その違いが明確なのが分かるだろう。
2人の違いは舞にも表れている。ユリは非常に優雅で麗しさがある踊りを得意とし、マユは激しい踊りを得意とする。その2人の踊りが生み出す調和こそが、この店の名物の踊りの1つとして数えられている
__________
踊りが終わった2人は、舞台裏に引っ込むや否や、抱き合って今日の踊りの成功を実感していた。
「今日も上手くいったわねっ‼」
「そうね。お客様も本当に喜んでくださって、私も嬉しいわ」
こうやっていつも踊りを成功させると抱き合うのが彼女達のいつもの光景である。ちなみにこの日披露した踊りは新しい振り付けを取り入れたもので、初披露となったものだ。
「成功するのかどうか心配してたけど、大丈夫で安心したわ」
「うんうんっ! でもユリの踊りは何度観ても綺麗で見とれちゃうわ~!」
「そう言ってもらえると嬉しいわ。マユの踊りも激しくてセクシーで、私まで熱くなっちゃうわ」
互いの踊りを褒めたたえ、そして強く抱擁をする2人。
「本当に綺麗だったわ」
そう言いながら青銅色のパイプを片手に紫色のドレスに身を包み、灰色の瞳を持ったやや紫がかった長い髪の女性が現れた。ダンサブルングの酒場の店主・カミーラである。
「カミーラさん、ありがとうございます」
「ありがとうございますっ‼」
ユリとマユはそう言いながら彼女にお辞儀をした。
「ふふっ、相変わらず仲良しね~。見ていて私も幸せな気分になるわ」
微笑みながらパイプを吸うカミーラ。店主として多くの踊り子を抱える彼女だもまた、ユリやマユのような踊り子達のファンの1人でもあるのだ。
「それよりカミーラさんっ、あの話ですけど……」
そこでユリがおずおずとカミーラに尋ねた。
「分かってるわ。次の舞台までに、また新しい振り付けを覚えたいってことでしょ? 踊りの先生に頼んでみるわ」
「「ありがとうございますっ!」」
2人はカミーラにお辞儀をして楽屋に戻った。
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楽屋に戻った2人は、そこで踊り子衣装から普段着のゆったり目の柄違いのピンクのワンピースに身を着替え、鞄に衣装を詰め込みながら談笑していた。
「ねぇマユ、マユは自信ある?」
「自信って?」
「今度の踊りの振り付け、結構激しい動きが要求されるから、すっごい難しいらしいけど……」
「あたしは大丈夫だけど……ユリは違うの?」
「うん、ちょっとね……」
と、弱気を見せるユリ。おしとやかで控えめな性格のユリは、同時に少し自信を持てないところがある脆さを抱えているのだ。そしてそういう時は決まってマユにこういう弱々しい態度で話しかけて来る。
「私はマユのように激しい踊りが出来るって訳じゃないし……」
「……ユリ」
するとマユはガッとユリの肩を掴み、そのまま近くのソファに押し倒してしまった。
「ちょ、マユ、どうし……んっ⁉」
戸惑うユリに、マユは続けて彼女の唇を唇でふさいだ。ユリが自信のないときはマユがキスをするのだが、今回はいつもよりも遥かに過激だった。
「んんんっ……!」
「んっ……❤」
長く、そして濃厚なキスは1分ほど続き、やっと解放された時、ユリは少々苦しそうだった。
「も、もうマユったら、今日はいつもよりも激しいよ……」
「ユリに元気と勇気を上げるのは、これが一番だもんっ!」
「そうだけど……苦しくておかしくなりそうだったよ……/////」
「ふふっ、じゃあ今夜はもっとおかしくしちゃおうかなぁ~❤」
「も、もうマユったら……//////」
そしてユリの不安を取り除くのに最適なのも、こういった強引なユカの行動力なのだ。特に、新しい振り付けに自信がなく、いつも以上に暗くなっているユリには効果抜群と言えよう。
「ユリ。ユリが激しい踊りに自信がないように、あたしもユリみたいなゆったりな踊りが出来ないの。あれはユリにしかできない踊りだって思ってる。だからこそあたしは自分の踊りを極めたいって思ったの」
「ユカ……」
「次に挑戦する踊りは、あたしが一番得意な踊り。自信がないなら、あたしが手取り足取り教えてあ・げ・る❤」
「も、もうっ、マユったら……」
「でも、元気出た?」
「……出た、すっごい出た。教えてね。踊りも、それと……」
「あっちもいぃ~っぱい教えてあげる❤」
ユリとマユ。ダンサブルングの酒場の踊り子において人気のペアの踊り子。踊りは対照的だが、夜は双方ともに激しいのだ。
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