第3章ー2


      叶 真澄④


 七瀬の相談から一週間が経ち、今日も例の喫茶店に呼び出された。

 高級感漂う紅茶に上品な店内と先週と何一つ変わらない環境の中、七瀬だけが憂鬱な表情でいた。

 店前で待ち合わせて店内に入って注文した紅茶が届くまでに、七瀬が発した言葉は、『おはようございます』と『アールグレイ』のみだった。

 先日ウキウキでメッセージを送ってきた七瀬とは別人だ。一体何があったのか。

 昨日の夜突然、『【至急相談】先週の喫茶店で同じ時間に』と呼び出しがあったくらいで、何故呼ばれたのかは詳しい話は聞けていない。

「それで七瀬、何があったのか教えてくれるか?」

できるだけ優しい声で圧がないように声をかけたが、七瀬は涙目でハンカチを口に当てる。

「わた、なに、、じればいい、、か」

七瀬が何かを話しているが、口にものを当てているせいで全くわからない。

「七瀬、取り合えずハンカチ外してゆっくり話そうか」

七瀬はハンカチを持つ手を膝に置き俯く。軽く深呼吸をして正面を向き、話し始める。七瀬は涙目の涙声で昨日あった、北条の悪い噂について話してくれた。

 大体の話は分かったが、お昼を一緒にした友人があいなさんかあきなさんかは聞き取れなかった。

「それは、写真を見てみない限り判断が難しくないか。七瀬の考えたみたいに牽制してるだけなら写真なんてないだろうし、あってもそれが見間違いの可能性もあるんじゃない。相手が女装した男の可能性もあるし」

言うと七瀬はまたハンカチに手を当てて俯いた。何かまずいことを言ったのか、女装した男なんてそういねーよ、なんて思われているのだろうか。

 意外といるものだぞ、俺とかもそうだしなんて、言おうかと思ったが好きでやっているわけではないので止めた。

「わ、、、、、み、、、、、、す」

また七瀬がぼそぼそと何かを言っている。

「七瀬ハンカチを、、」

「私は見たんです!」

七瀬の声が静かな店内に鳴り響く、俺は慌てて七瀬に落ち着いてとジェスチャーして周囲のお客さんに頭を下げる。

 それから言われた言葉を反芻して意味に気づく。

「見たって写真を?」

七瀬が頷く。

「これです」

そう言って七瀬は画像を映した画面をこちらに向けた。

 そこには恐らく北条と思われる人物と、高校生くらいの女の子が映っている。それから七瀬が一枚また一枚画面をスクロールすると男の姿は変わらずに女の子が変わっていく。

「なるほど」

七瀬の友人の友人の写真を見た限り、確かに北条は相当なタラシであるように見える。

 出てきた四枚の写真の中の女の子が全員兄妹でとか、いとことか親戚の子とか身内である可能性も捨てきれないが、それにしては四人とも容姿が違うし北条と似ているわけでもなかった。

「これは七瀬の友達が送ってくれたの?」

「はい。お昼休みの時にちょうど写真が届いて見せて貰いました。そのまま写真を私が貰って叶君に見てもらおうと思って」

「それで今日俺を呼んだのか」七瀬はまた頷いて、恐る恐る聞いてくる。

「どう思いますか?」

率直な感想で言えば北条は典型的な遊び人だ。ただ交際を持ち掛けていないなら、誰と遊んでもいいような気もするが。特定の相手を作らずに遊びたい子と遊ぶ。

 やっぱり佐光うってつけの話だと思う。目には目を、遊び人には遊び人を。佐光が普段、女性とどんな付き合いからをしているかは知らないが。

「この写真が合成や加工でないなら北条は友人さんの言う通り、良い人ではないと思う」

「やっぱりそうですよね。私には合成や加工には見えませんし」

七瀬はハンカチを握りしめて、紅茶を一点に見つめている。

「それでも北条を信じたいの?」

「わかりますか?」

「わかるよ」

七瀬は昔からそうだ、一度信じたものは疑わず信じたままで裏切られたいと思うタイプだ。そして、裏切られたら地の底まで落ち込む、俺のメンタルでは無理だ。

 そんな強い七瀬が羨ましい。

「七瀬が信じたいなら、信じてみないか。もし北条が遊び人なら七瀬が説教してやろう」

七瀬はパッと前を向いて言う。

「叶君なら、そう言ってくれると思いました」

七瀬は見てわかるくらいに表情は変わっていた。

「叶君。彼の正体を突き止めるために協力してください。放課後恋愛倶楽部、始動しましょう」


      ?? ?②


 彼は浮気をしていた。

 いや正確には浮気じゃない。

 だって私達は付き合ってはいなかったから。

 彼も私も付き合おうとは一言も言わなかった。

 それでも私達は一緒にいたしお互いのことを一番に思っていた。

 はずだった。 

 彼のことが大好きだった。

 でも彼は私のことだけが好きじゃないみたいだった。

 それがわかった時に私は彼に何かしてあげたくなった。


      七瀬 光④


 叶は放課後恋愛倶楽部の名前を出すと少し嫌な顔をしたが、すぐに表情は変わる。

「取り合えずこの写真が本物かどうか確認したいな」

加工や合成の類には見えないが、この写真が北条がたまたま無関係の女の子といる所を、撮影したものである可能性もなくはない。

「でも私の友達、もしくはその友達が私を諦めさせる為にあの写真を見せたのなら聞いても答えてくれないと思います」

「俺もそう思う。だから北条に直接聞いてみよう」

叶の言う事が一瞬分からずに思考が停止してしまった。

「北条君に聞いても尚更答えてくれないと思いますけど」

「そうでもないよ。誤魔化すか否定するはず」

「それ、意味があるんですか?」

「少なくとも北条の言い分は分かる。北条が一体どういうスタンスなのか知りたい」

確かに彼の反応は気になる。全くの誤解である可能性だってあるのだ。

「分かりました。私が今度会った時に聞いてみます」

「よろしく。それともう一つ、写真をくれた人にどうやって写真を手に入れたのか聞いて欲しい」

「どうやって?隠れて思わず撮ってしまったのではないですか?」

「隠し取りなのは間違いないと思うけど、それにしては写真が多い。七瀬に見せてもらった写真で四枚、しかもそれぞれ相手の女の子が別だ。たまたまにしてはタイミングが良すぎる」

「タイミングが良いのはそうですけど、その方は北条君と同じ高校に通っているので友達と協力すれば可能ではないですか?同じ高校なら行動範囲は変わらないでしょうし、近辺で見かけたら写真を撮ってもらえばいいだけです」

「うん、写真を撮るのは不可能じゃない。一応確認したいだけ」

叶の意図がよく分からなかったが彼にも考えがあるのだろうと思い、それ以上追及はしないことにした。

「分かりました。こちらはお話が聞けるか分からないですが」

「できればでいいよ、駄目なら別に何か考える」

彼の思考は柔軟で臨機応変という、四字熟語が最も似合う人だと私は思う。

「方針は決ましたね。叶君には分かり次第連絡しますから、待っていて下さい」

「うん。よろしく七瀬」

叶と話して良かった。

自分がすべきことが明確になれば私の迷いもなくなる。

「北条君がどんな人間なのか丸裸にしてあげましょう」

叶はほどほどにねと笑った。


      叶 真澄⑤


 夕飯を終えて、風呂に入りスッキリした気分でベッドに寝転んでいると佐光からメッセージが来ていた。

 中々の長文で読むのがめんどくさく休み休み読んでいたが、佐光と一条も中々面倒な状況になっているようだ。適当に頑張れと返信してから、七瀬からもらった写真を眺める。

 北条が三人の女性と写っているものが三枚。まさかこの写真がこんなに出回るなんて撮影した本人も思っていないだろうなと思う。

 改めて写真を眺めるとやっぱりなと思う。七瀬には言わなかったが、この写真は全て同じ場所で撮られているものだ。画角が違うので気づきにくいが、写りこんだ店や地名で大体どこなのかは分かる。

 北条がそこを定番のデートスポットにしているのか、別の理由があるのかはわからないがここには頻繁に訪れるようだ。

 写真を撮った人物もここを頻繁に訪れるのか、それとも不知高の生徒にとってここは定番なのか。ただ、正直それはどちらでもいいことだった。

 それよりも確信が持てなかったので、七瀬には話さなかったが写真の場所に気づいた時に思いついた考え。

 これが当たっていれば、色々なことがクリアになりこの先どうするかも考えやすい。

 七瀬は待っていてと言っていたが、こちらも動く必要がある。


      七瀬 光⑤ 


 公園のベンチに座り木々を眺めていると季節の移り変わりを感じる。

十月に入り、それが分かったように気温が下がり季節もより秋の様相を濃くしていた。まだ早いが、もう少し経てば山々は綺麗な紅葉の景色となるだろうから、それを見に行きたいと思う。それまでに今の悩みが解決しているといいなと思う。

 その為にも、ここ数日は情報収集に努め、結果はそれなりにといった状況だった。

今日はその成果を聞いてもらう為に学校終わりに叶と会う予定だった。

 それほど長い話にはならないので今日は喫茶店ではなく、二人の最寄りの中間にある広い公園を散歩しながら話すことにした。

 私の方が早く着いたので公園にあるベンチに座って、叶を待っているところだ。

 そういえばと携帯を取り出しメールを見る。昨日佐光から連絡が来て、相談の方は大丈夫かと聞かれていた。断ったものの気にかけてくれていたようだ。

 少し強引なところもあるが、なんだかんだ佐光も優しい人だと思う。今は叶君が助けてくれてるから大丈夫と返信する。

 携帯を閉じてまた木々を眺めようとすると、すぐにメールが返ってきた。

『それなら大丈夫だな。解決したら話しを聞かせてくれ』

メールを見て私も大丈夫だと思うと呟いた。それから思いついて返信する。

『その時は佐光君の方の話も聞かせてね』

佐光は私の相談を断った時に成沢にも相談受けていてと言っていたので、あちらも色々と忙しいようだ。『了解』といシンプルな返信、でも次に佐光に会うのが楽しみだなと思う。

 それからまた木々を眺めていると遠くから叶が歩いてくるのが見えたので立ち上がる。

「ごめん。遅くなった」

「大丈夫です」

「そう言ってくれると助かる、じゃ早速話しを聞こうか」

「はい。まずは写真を撮った人の話です」


 ~~山崎茜やまざきあかねとの話~~


 月曜日の昼休みに秋名を昼食に誘い、早速秋名の友人に会わせてもらえないかと聞いてみた。すると意外にもあっさりと快諾の返事が来た。

 どうやら、その秋名の友人も七瀬に会ってみたいと言っていたようで丁度いいということだった。

 いきなり友人の友人に好きだった男の話を聞くために会わせてくれなんて、嫌がれるのではと考えていたので好都合だった。

 秋名から予定を確認してもらうと、放課後の部活終わりなら時間があるというので軽くお茶しながら話すこととした。

 部活終わりで疲れているだろうと考え、秋名と話し不知火高校近くのファミレスで待つことにした。

 秋名と他愛無い話をしていると彼女はやってきて、秋名の隣に座った。

「初めまして、秋名さんの友人の七瀬です」

「初めまして、山崎です」山崎は緊張しているようだ。

黒髪ロングで薄く化粧をした顔は整っていて、かなり可愛い子だなという印象だった。守ってあげたくなるような雰囲気でモテそうだなとも思った。

「今日は急に呼び出してすみません。頂いた写真を見てもどうしても信じられなくて、お話を聞きにきました」

「気持ち分かります。私もそうでしたから、、なんでも聞いて下さい」

悲しい表情をすると一層庇護欲がそそられる。

 これは彼女の武器で周囲をこれで味方につけているのではと勘ぐってしまう。

「ありがとうございます。では早速、北条君とはどういうご関係だったんですか?」

「私と北条は一年生の時クラスメートでした。その時にみんなで連絡先交換しようって流れがあると思うんですけど一応交換したんです。一年生の時はそのまま終わったんですけど、今年の夏前くらいに北条君から連絡が来たんです」

「いきなりですか?」

「私も驚きました、それまで喋ったことも連絡を取り合ったこともなかったので。一年生の時のクラスメート何人かで遊びに行かないかという誘いでした。それから北条と仲良くなって良く二人で遊びに行ったりしていました」

聞いていて早くもおやと思った。

「最初の連絡が夏前だったということは、夏休み中もよく遊んでいたりしたんですか?」

「そうですね。夏休みの時が一番遊んでいたと思います、それは北条もですけど」

「それは山崎さん以外ともって意味ですよね」

「そうです。私は正直何回か遊んでから付き合うものだと思ってました。でも北条はそんなつもりはなかった。私と遊びながら並列で色んな女の子と遊んでいたみたいなんです」

しかも同時進行で女の子に唾をつけていたことにもなる。

「それは写真を見て分かったんですか?」

「写真で分かりましたし、写っていた女の子の中に知り合いがいたんで直接話しを聞いたんです。他校の子でしたけど、夏の短期バイトで声を掛けられたみたいでした」

真っ黒だ。

「写真は別の人から貰ったんですね」

「はい、北条と街で遊んでいた時に、北条と別れた後の駅で急に女の子に声を掛けられたんです。その女の子も被害者だったみたいで、彼は遊び人だから気を付けた方がいいって写真を見せてくれて。その子もたまたま見かけた時に写真を撮ってしまったって言ってました。私に話しかけたのも自分のようになって欲しくなくて、つい声をかけたって」

変な人だなと思った、親切ではあるが怪しすぎる。それはどうやら顔に出ていたようだ。

「私も怪しいなと思ったんですけど。写真の中に知り合いがいたから信用しましたし、それにその子のなんかこう真に迫る感じっていうか。嘘じゃないなって思えるくらいだったんです」

「そうですか」今の話が全てこの子の嘘でなければ、北条は間違いなく真っ黒だ。

嘘にしては凝っている気もするし、現状北条と付き合いがないのであれば嘘をつく理由がない。何よりその助言の子が気になる。

「その写真をくれた子の連絡先とかは?」

「写真を貰う時にはメールでくれたんですけど、しばらく経ってからメールしてみたら届かなかったです」

「それ以来、見かけたりとかは?」

「ないですね。もし会いたいならずっと北条と遊びつづければその内あっちから来てくれるかもしれません」

「会うには北条さんと会い続ける必要があるということですね」

「そうです、北条と友達のままでいるならいいと思いますがあまりオススメをしません」

北条と過ごした日々を思い出したのか苦虫を潰したような顔をしている。

 これだけ北条に対して嫌悪感を見せているのは、何か友達を超えた何かがあったのかもしれない。だがそれは聞けなかった。


「・・聞けたのはこれぐらいですね」

私は一息に話したので少し疲れた、飲み物に口を付けて喉を潤す。

 叶の表情を見て少し嬉しくなる。本人に言ったことはないが、実は彼のこの表情が好きだったりする。

「叶君、何か思いつきましたか?」

「まだなんとも、それより北条の話は?」

「そうでした。その話もしましょうか」

北条との話をするのはあまりいい気分ではないが。


 ~~北条清隆との話~~


 叶と相談した日、北条に会いたいと連絡すると、すぐに返信があり空いている日を教えてくれた。返信の早さには驚いたが、それだけ私の為に時間を割いてくれるということだ。

 少し複雑な気持ちで日程を決めて連絡を入れると、『会えるのが楽しみ』と来ていた。

 私は少し憂鬱だよ、そんな気持ちも秘めて『わたしも楽しみ』と返信する。

 その日が来るのは自分で思っているよりも、ずっと気分がよくなかった、やっぱり止めておこうかと思ったくらいだ。

 それでも私が彼の元に向かったのは、北条の事を信じていたからだと思う。彼はきっと私の納得のいく回答をくれるんだと、そう思っていた。

 北条とは不知火高校の最寄り駅のファストフード店で待ち合わせた。

 私の方が早くついたので店内のカウンター席で待っていると、トレイの上にパイや飲み物を乗せた北条が現われた。

手を振ると顔がパッと明るくなって、私の隣に座る。

「七瀬、パイはどっちがいい?マロンかチョコ」

トレイを私の方に寄せる。こういう何気ない行動が慣れているなと感じるのは、偏見だろうか。

「ではチョコの方で」チョコのパイを受け取り、手元に置く。

「今日はこの後、どこか遊びに行く?それともお喋りする?」

「ここでお話ししましょう?」

「分かった。なんか今日元気ないね?何かあった?」

北条はパイにかぶりつきながら、尋ねる。その表情に疚しい気持ちは感じられない。

「率直に聞きますが、北条君は女遊びがお好きですか?」

注意深く北条の様子をみるが、彼の表情に変化は見られない。

「そうか、七瀬の所にも来たんだね」

そう言うと北条は口の端を上げて笑う。何か知っている口ぶりだ。

「どういうことですか?」

「俺が女の子と出会うのが、気に食わない子がいるらしくてね。その子は俺が出会った女の子に接触して、毎回こういう写真を渡してる。この写真を見たのも何回目か分からない。報道とかでも、よく聞くけど悪意ある切り抜きってやつでさ、この写真とかも何でこんなに拡大してるかわかる?俺が男女複数人で遊びに行った時の写真なんだけど、俺がこの子と二人きりで遊んでるように見せてるんだ。上手いこと写真撮るよね。七瀬はこの子に会ったの?」

「いえ、私は会ってません。他の子から話を聞いて」

北条は溜息をつき、残念そうに言う。

「そっか。もし会ってるなら、俺も会いたかったんだけど」

「その子に心あたりはあるんですか?」

「他の会ったって子から容姿とか聞いたけど、分からない。一体何者なのか。そろそろストーカー被害で警察に相談した方がいいのかな?」

困ったように北条は笑うが、目は本気に見える。

「そうだったんですか。ごめんなさい、私」言いかけて続きは北条に遮られた。

「いやいや、こんな写真見せられたら誰だって分からなくなるって。七瀬は悪くない。もしさ、その子が七瀬に接触してくるようなら、教えて欲しい。なるべく穏便に済ませたいからさ」

平和的解決を望むらしい。

「わかりました。もし会うことがあれば」

「お願いね。そんなことよりさ、この先のこと考えよう」

そう言って北条は今後何処に遊びに行こうかと、嬉しそうに話していた。


「北条君の言い分はこんなところです」

「なるほどね」叶は口に手を当てて考えている。

「どう思いますか?」

正直私には北条が本当の事を言っているのか分からない。ただ、北条の事を追っている女の子がいることは事実らしい。その子に会って言い分を聞いてみたいものだ。

「七瀬、ごめん。正直言うとさ、俺その女の子に会ってるんだよね」

「はい?」思わず大きな声が出た。

「どういうことですか?それよりどうやって」

思わず体が前のめりになる。

「彼女の撮る写真は大体、画角が一定だった。街中で固定カメラを設置するなんて、無理だろうから、その子はその画角の辺りによく立ち寄るんじゃないかと思ったんだ。それで、前に七瀬が北条と出掛けた時に周辺を見張ってた。結果はドンピシャリ、北条の姿を写真を撮ってる子を見つけたから、捕まえて話を聞いてみた」

「何て言ってたんですか?」

「北条は女癖の悪いタラシだって、彼に更生して欲しくてやってる。という主張」

「そもそも、その子は一体何者なんですか?」

「北条と昔何度か遊びに行ったことがある女の子らしい。キスもしたのに、気づけば他の女の子に行かれたって」

それが本当なら北条は最低だ。私の考えていることに叶は気づいたらしい。

「七瀬、まだ分からない。お互いに自分に悪いように話しはしないだろう?その女の子が適当言っている可能性だってある。実際には、北条は厄介な女の子に絡まれているだけかもしれない」

「どちらが本当なんでしょうか?」

このままでは平行線だ、仮に二人を会わせても泥沼になるだけだ。

「それなんだけど、今回は運がいい。すぐに解決できそうだ」

「何か考えがあるんですね?」

叶が何か企んでいる顔をしている、しかもこの顔は大体良からぬことを思いついた時だ。

「七瀬にも協力してもらうけど、俺に任せなさい」

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