第52話 第1回イベント後半戦5
現実世界に戻ってきた俺は用意されていたご飯を食べて寝ることにした。
親には新しくゲームの仕事を始めたと伝えてある。
最初は詐欺だとか、騙されてるだとか騒がれたが、学と一緒に働いていると言った途端に信用された。
なんとなく納得がいかなかったが、最終的に喜んでいたし、問題ないだろう。
ベットに潜りながら携帯を開く。
調べるのはプレイヤー側の動きだ。
色んなサイトや掲示板を開いてみるが特に情報はない。
配信者のほとんどが上級に挑む事を宣言していたくらいか。
まぁ、まだ始まったばかりだし仕方ない……
それからも暫くは暇だった。
プレイヤーとの接触は未だ無し、暇な時間は全て模擬戦や他の魔物のスキルや技を観戦する事に費やした。
いや、9日になった瞬間に第四層に侵略はしたな。
侵略方法は簡単で、ただ足を踏み入れるだけ。
どちらにしろ相手がいないことには変わりない。
「プレイヤーの最終決定が完了しました
東の大陸には4649人の挑戦者がいます」
表示される時刻は3/10 0時00分
白い羽の妖精が敵の数を教えてくれる。
「ありがとう、予想よりも少なかったな」
眉間にシワを寄せながら鈴木さんが返事をした。
「そうですね、やはり確実に報酬が欲しいのでしょうか? 下級の挑戦者がかなり増えました」
妖精は空中にリストを表示させて見せてくれる。
'上級 4649人
中級 21万7830人
初級 69万5300人
無参加 7万5000人
操作なし21万0000人'
「これはイベントが終わったら話し合う必要があるな
初級が多くなるのは予想出来ていたが……」
黒の魔王は操作なしの項目を見て呟く。
夢中になっていたからだろうか?
赤と黒2人の魔王に矢が突き刺さる。
炎の魔王 68/102
黒の魔王 91/140
クソッ、完全に油断していた……
しかも鎧を着ている状態でかなり削られた。
鈴木さんと目を合わせる、お互いに剣を抜き周囲を観察する。
今居る場所は東の大陸第四層'石の森'
そんなに多い訳ではないが、木の形等をした石が生えている為、隠れた敵を見つけるのは難しい。
光と共に体力が回復する。
視線だけを動かすと黒の魔王がアイテムを使ってくれたみたいだ。
流石の判断力というべきか、俺が警戒しすぎたというべきか……
「間違いなくプレイヤーだろう、私が先行するから援護を頼む」
真剣な声、でも落ち着く声。
少しずつ進む鈴木さんを見て深呼吸する。
頭を切り替えろ、待ちに待った対人戦だ。
集中しろ、頭を回せ、テンションが上がっていく。
あぁ、楽しくなってきた。
「わかりま
返事は言い切れなかった。
「我ら極振り戦隊極レンジャー、魔王の首をもらいにきた」
目の前に現れたのは全身タイツの五人組。
「攻撃最強、パワーレッド」
「魔法正義、マジックブルー」
「神速速度 スピードイエロー」
「鉄壁防御 ガードグリーン」
「巧妙技術 インテリピンク」
言葉と同時にそれぞれがポーズをとる……
声から想像するに青とピンクは女性なのだろう。
ピンクが言い終わった瞬間に彼等の後ろが五色に爆発した。
なぜだろう、少し帰りたくなった。
「うわ……」
初めて鈴木さんの動揺した顔を見た気がする。
「うわー」
戦いに関与しないように離れた妖精は口を開けて放心状態だ。
一応ステータスを見てみる。
パワーレッド レベル41 ヒーロー 130/130
マジックブルーレベル39 ヒーロー 126/126
スピードイエローレベル38ヒーロー 124/124
ガードグリーン レベル39ヒーロー 126/126
インテリピンク レベル40ヒーロー 128/128
正気の沙汰じゃない、本当にアバター名だった……
そして職業ヒーローと地味な高レベル、
「私が赤と黄色とピンクを倒す、君は青と緑を頼めるかい?」
共に戦う魔王の提案に乗る。
先に動いたのは黄色のタイツ。
「舐めた言葉を吐きやがって、俺様のスピードに追いつけるかな?」
会話が聴こえていたらしい黄色のヒーローが高速で鈴木さんに迫る。
仕様上、本当に極振りか確かめる事は難しいが、スピードは段違いだ、何の抵抗も出来ずに黒の魔王が攻撃を受ける。
「つまり、紙装甲に貧弱、ハエみたいなものだろう?」
容赦ない言葉と同時に剣を一振り。
どんなに高速で動けるとしても、攻撃している最中のイエローに避ける方法は無かったらしい。
お腹辺りを黒い刀身が斬り裂くと、黄色い光と共にヒーローが消滅した。
「テメェ、よくもイエローを」
「許せない! 援護するわ!」
「詠唱を始めます」
仲間の消滅を見た赤タイツが巨大な大剣を両手で持って突進する、青タイツは杖を前に出して魔法を使うみたいだ、ピンクタイツは弓で俺達を威嚇してくる。
俺は矢を避けれる様に距離を取る。
「つまり、ノロマな紙装甲なのだろう?」
上に掲げた黒い剣にオーラが集まる、魔王がそれを振り下ろすと同時に黒い斬撃が発生、必死に矢を放つピンクに直撃する。
「えっ? 遠距離なんて情報は
言い切れない内に消滅。
しかしピンクが放った矢が鈴木さんに当たってしまう。
黒の魔王 120/140
「テメェだけは許さねぇ」
ようやく彼女の元に辿り着いた赤いヒーローは大剣を力任せに振り下ろす。
「そんなスピードで当たるわけないだろう」
余裕で躱した魔王はガラ空きになった背中に剣を突き刺す。
「必ず倒
「私はもう終わってしまったよ、お手伝いは必要かい?」
笑いながらこっちを見るリーダー。
赤タイツの言葉を遮って挑発される。
「要らないです、楽勝ですよ」
煽られたからには応えなければ
詠唱中のブルーに向かって走りだすが、どうやら遅かったみたいだ。
「完成したわ、少しずれて」
ブルーは、グリーンが射線から消えたのを確認すると、'水球 全' と魔法名を口にする。
これは広範囲魔法だ、目の前に水の壁が迫ってきた。
俺は躊躇なく全ての魔力を込めて火球を放つ。
水が蒸発する音と共に視界が白く染まる。
それでも走り続けていると少し衝撃を受けた。
どうやら一点突破でも水の壁に穴を開ける事は出来なかったらしい。
それでもいい、魔法を抜けてしまえばこっちの勝ちだ。
本来ならタンク役のグリーンは丁度退いている。
杖を前に隙だらけのブルーの心臓に剣を突き刺す。
血は出ないが、かわりに黒いエフェクトが発生した。
どうやらヒーローは聖属性の役職らしい。
青と黒の光と共にヒーローが消滅したのを確認してからグリーンに向かう。
鈴木さんは水の壁を斬って回避したみたいだ。
さて、次の相手は防御極振り野郎だ。
俺の最大威力を出せる攻撃は補正のある肉弾戦。
ナックルに武器を切り替えて殴りかかる。
魔王の心得Ⅳのお陰でヒーローには2倍のダメージが入るからか、防御が高いであろう目の前の緑タイツも数発で消滅した。
実にあっけない……
まぁでも、戦闘はやっぱり楽しかった
ピコンッ
レベルが27→29に上がりました
HPが102→106になりました
ステータスポイントを6獲得しました
倒したプレイヤーから所持金14325w、3210wを手に入れました
脳内にアナウンスが流れる。
こうして後半戦初めての戦闘が終了した。
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