第50話 第1回イベント後半戦3
「さて、そろそろ順番に休憩しようか」
表示されている時間は22時を過ぎている。
新しく手に入れた装備を使っている間に、結構な時間が過ぎていたみたいだ。
このゲームでは、今のところ朝や夜のような時間経過による背景の変化は実装されていない。
時間感覚が狂ってしまうなどの問い合わせも、まぁまぁあるようだ。
「わかりました、どちらから休みますか?」
試し振りしていた炎の魔剣を背中の鞘にしまう。
「君に任せるよ、眠たいかい?」
「ログインする前まで寝てたので大丈夫です」
自称親友からの電話さえなければ後5分寝れていたのだが……
どちらにせよ、全く眠気の無い状態なので可能なら鈴木さんから休んでもらいたい。
「ありがとう、ならばお言葉に甘えさせて貰うよ」
そう言った黒髪の女性は、指を空中に持っていき何かを操作する。
同時に目の前にはボタンが現れた。
四角い銀の土台に、そこから飛び出ている赤い丸。
シンプルなその形はついつい押してみたくなってしまう。
「これは緊急用の連絡手段だよ、今日や明日は無いと思うが、これから先に不測の事態や多くのプレイヤーと遭遇した時に押して欲しい」
どうやらこのボタンは鈴木さんの携帯と連動しているみたいだ。
1人では手に負えない状況や、AIが操作する黒の魔王では負けてしまう時にボタンを押すと、大音量でアラームが流れてピンチを知らせてくれるシステム。
そして何故か俺の携帯と連動しているボタンも用意されていた。
「では私は失礼するよ、明日の10時までには戻ってくるから何か起こったら遠慮なくボタンを押してくれ」
ボタンを渡してくれた後に手を振るリーダー。
「わかりました、ごゆっくりどうぞ」
返事を聞くと同時に黒の魔王が一瞬硬直する。
おそらく専用のAIに切り替わったのだろう。
「これからどうしますか?」
不意に目の前には白い羽の妖精が現れた。
あぁ、そう言えば居たな…
「あぁ、そう言えば居たな」
心の声が漏れてしまったらしい、空中で停止している妖精の青い瞳から光が消えていく。
「いましたよネ?」
気のせいか言葉が冷たい気がする……
無表情のままこっちに近付いてくる女の子に俺は動く事が出来なかった。
そして変な掛け声と共にデコピンされる。
「まぁ、いいです、これからの事もあるので今回は許してあげます」
そう笑って右の肩に座る。
「遠藤さんは休まないのか?」
状況をあまり理解出来ていない俺は、とりあえず気になった事を聞いてみた。
「知恵ちゃんが帰ってきたら私も休憩します
今回のイベントは戦闘に参加する事や、アイテムを使ったりする事は出来ないですが、ある程度の範囲で裕二さんをサポートする事が出来ます」
詳しく話を聞いてみると、プレイヤーが不利にならない事ならサポートして貰えるようだ。
例えば、相手の装備については教えてもらえないが、拾った装備については教えてくれる。
後は前回と同じく誰でも調べれば分かる事は答えてくれるらしい。
この後どうするか……
侵略予定のせいで9日になるまで第四層に進む事は出来ない。
無抵抗の魔物を倒してレベルを上げる方法も考えてみたが、生き返る数に制限がある以上、良い作戦だとは思えないし、なりよりそんな戦闘は楽しくない。
今後どうするか考えながら意味もなくイベント用魔王軍一覧を開いてみる。
そして少し驚く。
後半戦が始まって5時間強、当たり前だが既にモンスターが減っていた。
キングスライム1/5 スライム120/60000
キングウルフ1/5 ワーウルフ14/6000 ウルフ260/60000
不死鳥1/10 雷電鳥1/10 氷冷鳥1/10 ……
この他にも多くの魔物が倒されていた。
当然の事だがプレイヤーは動き出している。
出来るだけ配下を失うのは避けたい……
「全モンスターにここで待機とか命令出来ないのか?」
同じくリストを眺めている妖精に尋ねる。
「それは出来ません、プレイヤーの皆さんが倒すことの出来る魔物が減ってしまいますし、復活した魔物は自分の本来の生息地に戻るように設定されています」
首を振りながら否定される。
まぁそうだろうな……
倒されたボス級モンスターがその場で復活しないのは連続で狩られないための対策らしい。
防衛側の動きを知りたいな。
団結して作戦を組んで行動しているのだろうか?
それとも個人の判断でバラバラなのだろうか?
まとめ役とかは居るのだろうか?
もしも自分がプレイヤーだったらどうするか……
1番やられたくないのはレベルにあった適材適所の場所で魔物を倒される事か?
待つしかないのが辛いな
ログアウトしたら配信者のブログでも読んでみるか
思考するにつれて頭が回りだす。
だんだんと体が疼いてきた。
待ってる時間を有効に使いたい。
俺はとりあえず魔物を待機させてる場所に向かう事にした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます