第19話 これが魔王のレベ上げだ?9


 無駄に力を入れてドアを開ける。

 入る時の音が嘘だったかのようにスムーズにスライドした。


 外は紫一色だった。


 青かった空は不安を煽る紫色に染まり、


 家は全て腐ったような色になっていた。


 俺は屋敷に来る為に歩いて来た道を遡る。

 村の入り口から順番に全ての場所を調べ尽くしてやる。


 ズリッズリッ


 砂が擦れるような音がする。

 音が聴こえた方を向くとボロボロの服を着た人間がこっちに向かってくるのが見えた。


ハミルトン領民 レベル30

死霊

HP1

攻撃300

防御1

速度1

技術1

魔力1



 顔は真っ白で生気の欠片も無い。


 だが1つ予想が当たった。

 やはり蘇った死者は外を徘徊しているのだ、

 この村の何処かに何かがある可能性が高まってきた。


 反対側にも歩いている姿が見える。

 こっちに気付いていない奴は攻撃して来ないらしい。

 当たり前と言われればそうだが、これは結構大きい。


 1つ後悔している事があるとすればThe 2nd worldは使ってしまった魔力やHPはアイテムを使うか回復魔法を使うか特定の場所で休まない限り回復しない。


 そして俺は自称親友のせいで魔力を使い切っている。


 速度1の移動速度はかなり遅い。

 普通にやれば追いつかれることは無いが最大で1万まで増えるとか言ってたからな。


 もしもそんな量のゾンビに包囲されたらと思うと少し怖いなと思う。

 流石に5万秒はかからないと思うが……


 あぁ、そんなゲームも昔あった気がする。


 とはいえ、遠距離攻撃の手段は持っておきたかった。

 なんならオンボロソードでも拳よりは遠い距離から攻撃出来る分、ゾンビ相手なら無敵の武器になったであろうに……



 頭にハミルトンに攻撃した時の記憶が蘇る。



 過ぎてしまった事は仕方ないか……



 恐らく1発殴れば倒せるのだろう。

 だがそれはこっちも同じ、

 攻撃300の前なら俺の防御は紙切れ同然だ。

 近距離戦はリスクが高すぎる。


 ならば戦闘は避けて探索しどうしようもない時だけ肉弾戦を挑む。

 それが1番効率的だろう。


 俺は村に入った時に見つけた井戸から調査する事にした。


 ちゃんと井戸まで紫色になってるのが腹立たしい。


 ゾンビが居ないか、しっかりと辺りを見渡す。

 同じ特性の奴しか居ないなら砂の擦れる音で察知出来るはずだ。

 これもプレイヤーへの配慮か?



 井戸を覗き込む、

 当たり前だが水は枯れていた。


 奥にも何もない。

 ここはハズレだな。


 次はその横の家に入る、

 木のドアは何の抵抗もなく開いた。


 お邪魔します

 そう心で思いながら中に入る。


 そこには生活感の全くない風景があった。

 置いてある家具は扉が1つしか付いていないタンスと丸いゴミ箱だけ。


 何となくわかる、

 これもプレイヤーへの配慮だろう。



 ゴミ箱をひっくり返しながら思う、一昔前のRPGをやっている気分だ。

 勝手に人の家に入りゴミ箱からタンスまで全て調べ上げる

 そして見つけた物は遠慮なく貰っていく主人公。



 昔は何の罪悪感も覚えなかった。

 むしろこの家何もねぇ、とか思っていたが、いざ自分でやってみると凄く悪い事をしている気分になる。


 ゴミ箱からは何も出て来なかった。


 次はタンス開けにいく。


 取手を引くと中には何もなかった。


 扉を閉めて一息つく。











 この家何もねぇ


 俺は次の家に向かう事にした。

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