第18話 これが魔王のレベ上げだ?8
瞳を閉じた騎士は全く動かない。
これならいける!
1秒1刹那が遅く感じる。
スローで流れる世界で俺の振るった剣は奴の首にゆっくりと近づいていく。
このまま本当に動かないのか?
そしてとうとうその時が来た。
ボキッ
警告
オンボロソードが破壊されました
装備から外れ、アイテムボックスに収納されます
俺が目に映った現象を理解するのと脳内に流れるアナウンスはほぼ同時だった。
剣が壊れたのだ。
理解は出来る、どのゲームでも装備品は壊れる。
そしてそれを修理してまた使う、
その為の生産職だし、装備にお金を使わせないなんてあの2人がいる運営が考えるわけが無い。
理解は出来る、致命傷を与えれば即死のルールがある以上、防御は皮膚の硬さ等にも影響するのだろう。
でなければ防御を上げる意味がほとんど無くなってしまう。
理解は出来る、目の前でこちらを見ている騎士のHPが全く減っていない。
即ち今の俺の全力の攻撃じゃハミルトンの体力を削れない。
理解は出来てしまう、勝てない……
俺は必死に冷静になろうとする。
『良かったじゃないか』
開かれた赤い瞳が向けられる。
「何がだよ」
つい答えてしまった。
クソっ、どうすれば良い……
頭を働かせろ、勝つ為の手段を考えろ。
どうすれば良い?
『相手が弱すぎるのも考えものだね
私のHPが減ってない以上さっきのは攻撃と認められなかったらしい』
あぁ、領主の誇りか、
それで良かったってわけだ。
ムカつくなぁ
『せいぜい生きてる間に私の事を倒す手段を考えるがいいさ、どうやら私は一生君に攻撃出来ないみたいだしね
あぁ、折角だし自称魔王君に教えてあげよう
私のスキルが蘇らせる人間は元々この領地の民だった者達1万人だ、HPは1.攻撃300それ以外は1の哀れな存在だ
だがそれでも君程度なら一撃で倒されるだろう』
私は君が死ぬまでここで紅茶を飲んでいよう。
そう言ったハミルトンはいつの間にか現れた白いテーブルとイスに座りカップに口をつける。
『また会えると良いね』
「その時はお前を倒す時だ」
何かあるはずだ……
冷静になればこの村は可笑しな事ばかりだ。
あちこちにあるこの騎士の銅像
中身の無い屋敷
最難関とはいえあの防御力を貫通させる事が出来るプレイヤーはいるのか?
思い出せ 頭を働かせろ
このダンジョンの記憶を全て思い出せ
赤い文字の看板
村に入る前の警告
推薦レベルはソロ70
だとしたらレベルアップで貰えるポイントは140
武器や職業、ランクアップ報酬を合わせたとしても500なんて届くのか?
パーティなんか30だったはずだ。
あぁ、間違いなく届かない。
そしてあいつのスキル 領主の誇り、
これは敵のステータスアップ目的よりかダメージを喰らわない様にする為の処置ではないか?
体力が減らないと攻撃出来ないのはプレイヤーに猶予を与える為の縛りか!
だとしたら考えが読めるだけが意味がないとは考えづらい……
ならばもう1つのスキル 死霊術はどうだ?
戦闘中常時発動?
これは恐らくハミルトンと遭遇した瞬間から発動しているはず。
あれから何秒経った?
蘇った奴は何処にいる?
答えは簡単だ、
屋敷にいない以上外にいるに決まっている。
何故5秒毎?
そもそも何故あの強さでこのスキルがついているのか。
それは奴が外に出れないからだ。
いや、出れない訳ではないか……
だが外に蘇った死者がいる。
それはつまり外で戦闘をする事を前提に作られたスキル。
やはり何かある、
恐らくこれは村を捜索して何かを見つける必要があるのだろう。
奴を倒せる手段があるかも知れない、
ならば迷う必要はない。
絶対に見つけてやる
そして次に対峙した時はハミルトンを必ず倒す。
俺は熱くなり過ぎた心を冷ます為に深呼吸する。
そして外に出る為にスライドドアに手をかける。
必ずお前を倒す
そう決意して。
『期待しているよ』
瞳を閉じて呟かれた声は魔王には届かない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます