第17話 これが魔王のレベ上げだ?7


『私の屋敷に何か用かい?』



 なんて言えば良いのだろう。

 恐らく若い男の声、

 声のトーンや話し方から日本の領主と言うよりは外国を舞台にしたアニメ等でよく見る貴族の様なイメージだ。



『無視は酷いだろう』



 奴は目の前にいた。



 黒い鎧に黒い盾、右手には禍々しいオーラを纏う長剣が握られている。

 鋭い瞳に逆立った髪のその男はまさに騎士だった。



 俺は瞬きすらしていない。



 目の前にいる金髪の爽やかなイケメン騎士はいつ現れた?


『まだ無視するのかい?それとも急に現れた敵に思考が追い付いていないのか その程度で魔王を名乗るとは呆れるを通り越して尊敬するよ 佐藤 裕二君』


 赤い瞳の騎士は笑みを浮かべながら皮肉を言う。


 心を読まれた?


 目の前のあいつは何だ? プレイヤー?

 いや、それはない。


 見渡すといつも一緒にいた妖精がどちらも消えていた。

 それが余計に焦りを募らせる。


『あぁ、妖精さん達は邪魔だから特等席に案内したよ

君が死ぬか私が死ねば元に戻るさ』


 まただ、

 考えている事を見透かされているのか?


 冷静になれ 

 恐らくボス戦だ

 学と遠藤さんがこのモンスターを作ったはず、

 ならばあの2人はこの戦闘が終わればまた戻って来るはずだ。


『少しは落ち着いた様だね

冷静になった所で私とのバトルは戦闘とは呼べない物になるだろうけどね』


 なるほど、最高難度ダンジョンか、

 これはヤバいな。


 俺の目には騎士の情報が見えていた。



死霊騎士ハミルトン レベル70

騎士

暗黒の剣 攻撃+200 速度-150

暗黒の鎧 防御+100 魔力+200

暗黒の盾 防御+200

HP3000/1500

攻撃200+200+200

防御100+100+100+200

速度150+150-150

技術100+100

魔力250+250+200

スキル

 剣(5)

魔法(2)

死霊術

領主の誇り


死霊術   5秒毎に死んだ物をHP1の状態で蘇らせる

       戦闘中常時発動


領主の誇り 屋敷の中にいる限り元々のステータス2倍

      屋敷の中にいる者の考えが読める

      屋敷の中にいる者に自分から攻撃出来ない



 どうやって勝てば良いのだろうか……


 俺は学の話を思い出す。

 より現実の戦闘に近づける為に彼達は全力を尽くしているらしい。

 その為かこのゲームのダメージ算出方法は結構複雑だ。

 同じ人が同じ剣を使って戦っても振り方、力の入れ方等によりダメージが若干異なって来る。

 その微妙な動きの差も最新のAIならば正確に判定できるらしい。


 またプレイヤーだったら心臓を刺されたら即死だ、

 勿論首をはねられても終わりだろう。


 そしてそれはモンスターにも適応されるらしい。

 今回の相手は人間タイプの敵だ、

 ならば心臓か首、頭の何処かに攻撃が通れば勝てるかもしれない。


『やってみるかい?』


 騎士は剣をしまい首を指差す。


「余裕だな」


『余裕だからね』


 俺は奴の首に向けてオンボロソードを全力で振り抜く。

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