第16話 これが魔王のレベ上げだ?6


 屋敷に向かう道中、

 遠目からでは分からなかったがこの村には色んな所に銅像が立っているのを発見した。



 ある物は右手を上げていたり、ある物は手を組んでいたり、ある物は剣を持っていたりと格好は全然違うのだが、髪型や服装はほぼ同じだった。


 恐らくだがこの村にある銅像は全て同じ人間を参考に作っているのだろう。


「近くでみると昔遊びに行ったカラクリ屋敷に似てますね」


 先程から目をキラキラさせている遠藤さんの弾んだ声が聞こえる。



 目の前には屋敷を囲む様に作られた大きな塀と入口を塞ぐ大きな門、

 後はその横にある小さな扉。



 まるでタイムスリップしたみたいだ。

 学じゃないが、本当に時代劇なんじゃないかと思う程の迫力がある。


 俺は小さな扉が少し空いている事に気付いた。


 今までやってきたゲームを思い出す。

 大体こうゆう場所には罠がある。

 そしてこうゆう場所にはアイテムが良く落ちているはずだ。


 このままオンボロソードでは心許ない、

 出来ればちゃんとした武器が欲しい。

 欲を言うなら装備も欲しい。


 ここは最高難度のダンジョン。

 ならばモンスターが落とすアイテムも拾えるアイテムも高性能な物ばかりの筈だ。

 それを早く欲しいと思うのは運営側になったとしても1人のゲーマーとして仕方ないだろう。


 もしも時間があるならばこの村の家全てを探索したい位だ。


 あぁ、ワクワクしてきた

 俺達3人は小さな扉を開けて敷地内に侵入する。




 バタンっ


 内に入ると小さな扉が音を立てて閉まる。


 確認のため触ってみたが完全に開かなくなっていた。


「閉じ込められたな」


「閉じ込められたねー」


「閉じ込められましたね」


 3人が同時に発言する。



 こうなってしまっては仕方ない、

 屋敷の玄関に向かう事にした。



「あ!あれってさー」


 学が喋るのと同タイミング、

 全員の視線が同じ場所を見る。


 村の中で何回も見た物、

 左手に剣と右手に盾を持つ銅像を発見する。


 […者 ハミ……ン…像]


 あちこち見えなくなっていたが題名の様なものも見つけることが出来た。

 あくまで推測だがこの村の銅像は全てハミルトンを作っていたのだろう。


 最初の文字はなんだ?


 勇者、忍者か……

 あの赤い字の看板を思い出すなら死者も考えられる。


 いずれにしても領主ハミルトンは中々力を持っていたらしい。



 ゴーレムとして動き出すか?

 それとも何かの情報源?

 少なくともこんなに同じ人間の銅像があるのは何かの伏線であるのは間違い無いだろう。

 俺は今までの経験と知識から考えられる可能性を思い浮かべるが特に答えは出なかった。


 奇襲を受けない様に周囲に注意を払いつつ屋敷の玄関に到着する。


「開けるぞ」


 2人が首を縦に振るのを確認した後にドアに手をかける

 押すタイプだと思ったがスライドドアだった。


 開ける為に力を入れると暫く使われていなかった為か

ギィギィ言いながら少しずつ開いていく。


 奇襲を警戒しつつ中に入る。

 真っ暗だと予想していた屋敷の中は至る所に吊るされたランプのせいで、むしろ明るすぎる位だった。


「誰もいなそうですね」


 遠藤さんが辺りを見回して呟く。


「そうだねー、カラクリ屋敷だと思ったけど、何もないねー」


 学が緊張感の欠片もない声で答える。


「何もないな」


 つい同じ事を呟いてしまった。


 あれだけ大きいと思っていた屋敷だが、中に入ると本当に何も無かった。

 比喩でもなんでもない、

 本当にランプが吊るされているだけなのだ。

 階段も、家具も、部屋も何もない。

 ただの空間、

 例えるなら巨大な体育館だろうか。



 何が起こっても良い様にオンボロソードを装備する。

 違和感が拭えないままとりあえず奥の方に進む。


 屋敷の中央まで来た時だろうか、

 振り返るとドアが閉まっていた。

 開ける時に聞こえた音は聞いていない。


 これは何かのイベントだ、

 それは間違いないはず。


『私の屋敷に何か用事かい?』


 不意に声が響いた。

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