滑稽  灰兎side


「狙い? 何を仰ってるのやら。僕はただ、あの子と笑い合いたい。それだけですよ」


おどけたように肩をすくめてそう言うと、華美嘉家当主は訝しげに目を細める。


「それは本当なのですか? おやおや、貴方はのですが………」


「噂は所詮噂。全てが真実ではない事を、当主殿はご存知でしょう? 僕がどのような人物だと思われているかは知りませんが、少なくとも、と一緒にいた神奈由羅なら僕がどういった者なのか知っています。気になるのなら、僕より本人に聞いてみては?」


余裕たっぷりに言葉を返すと、華美嘉家当主は悔しそうに唇を噛んだ。


その姿を見て、僕はニタリと口を歪ませた。


「ふふ、嫌なら別に構いませんよ? 。まあ、当主殿が"それ"を実行できるかの話ですが」


「……随分と、貴方は趣味が悪いようで」


「趣味が悪いとは、酷いですねぇ。僕は本当に、神奈と一緒にいたいだけですよ」


寧ろ、趣味が悪いのはそちらの方では?


そう付け加えてると、彼は警戒するようにこちらを睨んできた。


駄目だなぁ。素性を知らない相手にそんな表情をコロコロ変えちゃ、ね?


いかなる状況であっても、仮面は絶対に外しちゃいけないとは、教わらなかったのかな。


あはははは、裏じゃあとっても恐れられている華美嘉家の当主がこんなのって、それでも家を守り続けることが出来るの?


おっかしい、馬鹿みたい。甘すぎでしょ。愉快すぎて笑えちゃう。滑稽だ!


いつまでもそんな風だと、最悪色んな物がナクナッテ、ドン底ニ陥ルノニ。


コノ世界のカミッテ、割ト使エナインダネ。


…………………………アァ!


ナーンテゴミクズトクソデシカ、ココハ成リ立ッテナイノ?


ソレハ………ソレハ…。


「ドーシテ?」





ぽつりと口から漏れた言葉に、カレは酷く怯えたように見つめた。

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