再会  灰兎side


「…とうとう、この日が来た」


時花灰兎改め、來雷である僕はひっそりと微笑んだ。



◇◇◇



日本の二大財閥の内の一つ、華美嘉財閥。


その財閥の令嬢の生誕を祝うパーティーに、偶然なのか僕は招待された。


まぁ、どの家もあそこの家とは誰もがお近づきにはなりたいと思っているから、神奈を捜すには丁度良かった。


何言ってんだと思われるが、僕には前世がある。


この世界とは違う世界の、日本の歌手という前世。


それなりに有名だった思うけど、やはりには敵わない。


僕の同僚であり幼馴染の––––『伝説の歌姫』と称される––––宮寺由羅には。


あの歌声を聞いた時の衝撃は、今でも忘れられない。


まるでそれは、真夏の暑さにやられてスポドリを飲んだかのような、心(体?)に染み渡る声だった…!


いや違います、ハイ。ふざけました。


まるでそれは、一種の精神安定剤のような、聴いた者をいやす、天使のみたいな声だった。えふぶんのなんちゃらって言うんだっけ?


ちなみに由羅は、化け物や犬などを始めとしたモノマネや、ショタボ、イケボ、ロリボなども出せる。


声帯タワーマンションすぎるよね。地声は普通にアルトだ。


おかしいよね、あの喉からどうやってめちゃ低い声出すんだろ??


恐らく一生解明されない謎であろう幼馴染の声帯の凄さに恐れつつも、僕は順調に今世を過ごしていた。


話を戻すと、僕は由羅と再開するため、このパーティーに出席しているのだ。



◇◇◇



無事、由羅改め神奈との再会を果たした僕は、現在神奈の父親である華美嘉肇当主と談笑している。


先程神奈と彼に合流した部屋ではなく、応接室に移された。


恐らく数百万はするだろうカーペットと豪奢な細工のソファーやローテーブルに、思わず遠い目をする。


…いくら今世が金持ちの家でも、流石にここまでじゃなかった。


流石はこの世界の日本を代表する二大財閥の内の一つだ。金の使い所が違いすぎる。


「神奈から聞いたのだが…君、いや、貴方は本当に來雷なのかい?」


不安そうな目でこちらを見る彼を尻目に、僕は渡された紅茶を飲む。


…いやぁ、ここの当主って紅茶も淹れらるんだなー。意外すぎる。


そして、寄越された質問に答えた。


「無論僕は確かに來雷ですよ」


「やはり…!?」


その言葉に、彼は目を見開く。


その様子に思わず苦笑が零れた。


「ま、驚いて当然ですよ。僕自身、今ここにいるのが不思議なくらいですから」  


「はぁ………」


華美嘉家当主は溜息を吐くと、コメカミを揉み、更なる質問をしてきた。


「それで、貴方の狙いは何ですか?」


その言葉に、僕は他人行儀な笑みを浮かべた。

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