雷、これどーすんのさ、マジで!?


お父様、やめて、そんな人を殺しそうな目でこっちを見ないで。後ろに般若が棍棒を持ってるのハッキリ見えるんだけど。あれ、これ幻覚、だよね。ゲンカク。


いやまずこの状況どーすんのマジで。え、やらかしたのは自覚してるけどそんなに皆黙っちゃうものなの?


え? え?? ワタシガオカシイノ??


笑みを貼り付けたまま固まり思考を放棄している私と、飄々とした姿で微笑む灰兎もとい雷。


元凶はお前だからな一応言っとくけど!! いや私も乗っちゃったんだけどね!? なんでそんなやり切った……! みたいな顔してんだよ!! 微笑んで誤魔化してるけど私には丸分かりだからな!?


幼馴染兼相棒舐めんなよ! とゆーかなんで皆さん涙を流していらっしゃるようなんですかねぇ!?


現在の状況に混乱する私の悲鳴は、ゆうと私のみぞ知る。


えちょっと助けてゆう。ガチで。


っだああああああああぁぁ!!


どーすんのよコレェ!?


もはや突っ込む暇すらねぇんだけど!?


私二十九年間生きてきたけど、こんな場面初めてなんだけどこれマジでどーすればいい??


神様仏様女神様ゆう様、どなたかこの状況を打開する方法はありませんか??


『何やってんの?』


アレーオカシイナー、ユウノコエガキコエルナー。


目の前にゆうの幻覚が見えるんだけどあれぇ、おっかしいなー。


『いや幻覚じゃないけど』


何!? 幻であるはずのゆうの声が、また聞こえただと!?


一体これはどーゆうことなんだァ!?


『今、神奈に直接テレパシーで話してるの』


て、テレパシー?? え、神様ってそんな便利なモン使えんの?


つか、お前どこにいんの?


『神奈の家』


あ、そうですか………ってなるかボケェ!!


いくら神様でもパーティ中に家からテレパシー送ってるヤツどこにいるか!


『ここにいる』


そーいやいましたねえええぇぇぇ!! ゆうと言う名の空気読まぬ馬鹿が!!


『さっきと真逆の態度だね』


はあ? んなもん知ったこっちゃねぇよ!!


とゆーかこの状況いつまで続くんだよ長くねぇか!?


『雷って言う人に話しかければ良いんじゃないの?』


うぬぅ、それしか出来ないよなぁ………。


突然のゆうの登場に困惑しつつも、なんとかこの状況を変えるために私は口を開く。


「ありがとう、ございました」


どんな言葉を出せば良いのか分からず、振り絞って出した声は安直なもの。


果たしてこれが正解なのか、不正解なのか。


どっちにしろ、正解なんてないだろう。


私の掠れた声に、雷はかすかに頬を緩めた。


「こちらこそ、夢のような楽しい時間を過ごせました」


雷……いや違う。灰兎は前世と変わらない、見た目と正反対のくしゃりとした笑みを零した。


「また、お会いしてもよろしいですか?」


「…私が、お会いしたいくらいですわ」


「ふふっ、そうですか。まさか貴方も同じだとは………まるで、運命のようですね」


会話を続けていると、灰兎は御伽噺に出てくるどこぞの王子のような甘ったるい台詞を吐いた。


正直言って……きっもちわる! はぁ!? お前こんなこと言うの!?


昔は『僕こんな気持ち悪い台詞言いたくない』とか言ってたくせに!?


笑顔で会話をしていると、お父様がこちらへコツコツと歩いてきた。


「神奈、少しお話があるんだが……ああ、勿論君も、ね」


笑みを浮かべて話しかけるお父様の瞳は、とても冷たいものだった。


あ、終わったかも。





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