甘夏訪問! ついで歌うぜ!


今日は、榑人さん達が訪問する日。会いたくない気持ちと不安な気持ちでいっぱいいっぱいです。誰かに背負い投げしたいくらいだわ。敬語疲れるだるい。


「神奈、甘夏さんが我が家に訪問してきます。暖かく迎えましょう」


お母さんが微笑む。美人の微笑みって落ち着くよね。変態じゃねーぞ。


「はい。お母様。私、頑張ります」


私も精一杯の笑顔で返す。


ふふ、とお母さんが笑ってくれた。



ガチャリとドアが開いた。お父さんだ。


「神奈、ミナ、榑人様達が来たよ。出迎えよう」


「「はい」」







玄関に到着して三分後、榑人さん達が来た。


「ようこそおいでくさいました。榑人様、凛様、憐様」


お父さんが笑顔で言う。


「いいえ。こちらこそ、歓迎して頂きありがとうございます。素晴らしい屋敷ですね。」


「いいえ。そんな事は」



長い。話がなっがーい! お母さん震えてる! 怒り爆破寸前だ!


「お父様、そろそろ屋敷へご案内しましょう」


お父さんに視線で『お母様、お怒り寸前です。早くして下さい』と伝える。お父さんは気づいたらしく、「屋敷をご案内します」と言った。お母さんは、うんうん頷いている。命拾いしたね、お父さん。





大体屋敷の説明を終わらすと、榑人さん達と立ち話をした。


「やはり、素晴らしいです!」


榑人さんは、少し……かなりはしゃいでるよう。


「「父上…」」


凛達も呆れる程に…。


「はぁ…」


お父さんも若干引いているぞ。


「私共はこのまま、榑人様といますけど凛様達はどうなさいますか?」


お母さんが言う。


すると凛は、にっこりと


「神奈様とご一緒します」


言った。ん? なぜ? 何か面白い事言ったけ。覚えないぞ、一ミリもないぞ。全くもってないぞ。


「良いよね、憐」


れんに同意を求めると言うか、ほぼ命令形ですね。


「う、うん」


こっわ。凛は敵に回しちゃ駄目だな。てか、若干怯えてない? 怖い怖いよ!


「と言う事ですので」


凛はニッコリと告げた。


おい! ふざけるなあああぁぁぁぁっ!!!!


オワタん。終わったあああああぁぁぁ!


タダイマワタシシコウテイシチュウ。


ハイ。ふざけすぎました。

サーセン!










今、部屋の中にいるのは、私、凛、憐の三人。



「凛、どう言う事?」


憐が何か凛にこそこそ耳打ちしてる。


「えっと…」


凛も耳打ちで返す。


何話してんのかなー。暇だー!


…みんな、元気かな。


ふと頭にの記憶がよぎ


あ、そう言えばこんな気持ちから、こんな曲を作ったな。


題名は、【Dream flowerドリームフラワー


ドリームフラワーって読むの。


日本語にすると、夢の花だね。


懐かしいあの頃。みんな、元気かな。私は、元気だよ。想いを載せて––––––


「想い描くの♪ 懐かしいあの頃を♪ みんな笑って、楽しい日々を–––♪ 今は、無理でも想い続けるの♪ 元気ですかと––♪ 私は元気ですと♪ どうか、届いて––♪ 空を渡って♪みんなの胸に–––♪ 春風に揺れるこの夢の花に託して–––♪ どうか、この想いが届くように–––––––––––––––––––Dream flower♪」


自然に歌った。あぁ、やっぱり。私は、あの人生が恋しい。


でも、それは叶わない。なら、歌で伝える。家族に仲間に。私は元気です。貴方達も元気ですか?


どうか、元気に笑って生きて。私のいない分、幸せになって。 


こんな私だけど、貴方達の幸せを願わせて。そして、今までありがとう。


大好きだよ。ずっとずっとずーっと、大好き。この気持ち、届いて欲しい。


泣きながら、みんなとの思い出を思い出しながら、歌う。


私は私。華美嘉神奈でも宮寺由羅でもある。前世でも今世でも、私は音楽が好き。


歌が大好き。貫こう。この大好きな気持ちを。ずっと、辛い事も楽しい事も嬉しい事も忘れない。





歌い終わった。あぁ、懐かしい。この気持ち。



そこではっとする。凛達の事、忘れてた!やっば!でも、怒られない。


–––––––––––彼らは、涙を流してたから。



「???」


どうして、泣いてる!?


え、え?どうすれば良いの!


「「………」」


二人は、泣きながら立ち尽くしてる。


「ふ、二人共、大丈夫?泣いてるけど」


とりあえず、ハンカチで二人の涙をいた。


「ごめ、なさい。君を…、試す…ような…こと、しちゃっ……て……」


凛が喋る。私を試す?なんでやろ。


「いいよ、許します。ほら、泣き止んで。かっこいい顔が台無しだよ?」


優しく微笑みながら、凛の溢れた涙を拭く。


「お…れも……ご…めん……なさい」


あらら、涙が出てる。憐の溢れた涙を拭く。


「もう、泣かないで。ほら、笑って、ね?」


二人に優しく微笑む。


すると二人は、くしゃりと顔を歪めて、


「「ひっぐ、うわあぁーんっ!」」


泣きじゃくった。いきなり叫んだから、びっくりした顔でお父さんさん達が来た。


なんとか事情を説明して、二人が泣き止むまで待った。泣きながら、「ごめんなさい、ごめんなさい」と繰り返し謝っていた。


「所で、なんで二人は泣いたの?」


二人に聞いてみる。


「…君の歌が素晴らしいから。とても綺麗で、感動しすぎて泣いちゃった」


凛は、柔らかい笑みを浮かべて答えた。


「俺も」


憐も柔らかい笑みを浮かべて、凛と同じと言った。


「神奈、本当に歌って二人が泣いたの?」


お父さんが聞いてきた。


「はい 」


私は、すぐに答えた。


「その曲をもう一度歌ってくれる?」


お父さんがもう一度歌ってと言ってきた。


「分かりました」


私は頷き、大きく息を吸って。


「想い描くの♪ 懐かしいあの頃を♪ みんな笑って、楽しい日々を–––♪ 今は、無理でも想い続けるの♪ 元気ですかと♪ 私は元気ですと♪ どうか、届いて–––♪ 空を渡って♪ みんなの胸に–––♪ 春風に揺れるこの夢の花に託して–––♪ どうか、この想いが届くように–––––––––––––––––––Dreamflower」


また、涙が出てきた。みんな、元気かな。


「歌い終わりました」


涙を拭き、お父さん達の方に向き直す。


「「「………」」」


凛達と同じように涙を流すお父さん達がいた。そして、また涙を流す凛達。



「神奈、その曲はもしかして……【Dream flower】なの?」


お父さんが言う。


「はい。お父様の言う通りです」


知ってたのか。でも、何故だ?この世界は、私がいた世界とは違うはず…。


『由羅は有名過ぎて、この世界でもすっごく有名なんだよ』


神様だ。念話ねんわだ。


サンキュ。神様。


「神奈、君は」


あ、バレた?


「なっっんて、素晴らしいんだ!あの曲は、凄く難しいんだよ!?それを四歳で…あぁ、ウチの娘は素晴らしい!」


「もう、あなたったら。元から神奈ちゃんは、可愛いくて賢くて素晴らしい私達の娘じゃない」


親バカ爆裂。手に負えねー。


「素晴らしい!」


もうこれ、説明した方が良いよね。










その後、榑人さん達は帰った。

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