第2話 過去を生きていくには

いつもの習慣で朝6:00に目が覚めた、懐かしい天井に未だここが実家である事に慣れないせいか何処にいるのか分からないような寝ぼけているような感じになっている。

「やっぱり現実に起こった事なんだよなー。また高校生をする事になろうとは・・見た目は高校生、中身はおっさんのままなので昔を思い出しながらやっていくしかないか・・。」

2度目の青春を謳歌するのもありかと思い前向きに生きて行こうと考え、とりあえず犬の散歩に行くかと高校時代に来ていたジャージに着替える為に昨日、制服のまま寝ていた事に気づいた。

「おかんも起こしてくれてもいいのに。夜ご飯も食べずに風呂も行ってないや」

相変わらず独り言をいいながら着替えようとした際にポケットからスマホが床に転がった。

「あれっ、高校生の時にスマホって未だ無かったよな??ガラケー使ってた記憶しかないのに。」

慌ててスマホの電源を入れてみたが圏外で不在着信履歴には会社からの連絡が数分置きに掛かっていた。嫁からの不在着信は1回だけだったが。

「過去の世界でも使えるのか。」

ネットにも繋がっていないようでこちらからは連絡が出来ないようだった。

しかしメール機能のみ使用出来るようで嫁から久々にメールが来ていた。

「『本日は帰ってこないのでしょうか。』ってそれだけかいっ!!」と声に出してしまった。

以前から夫婦の関係も無くなって、会話も子供の事以外は必要最低限の会話しかしなくなった。子供が大きくなるまでは頑張ろうと思っていたが。

念の為、上司である上野課長には昨日から体調不良で連絡が出来ず申し訳ない旨のメールだけは社会人として連絡をしておこうと思い、メールを打って送信する際に今は自分は高校生なので今度いつ帰れるか分からないしもういいやと思い消去しておいた。


過去をやり直そうと心に決め、ジャージに着替え二度寝をしてから考える事にした。


「7:30やのにいつまで寝てるんやっ。」と久々に聞いたおかんの朝の起こし方に鬱陶しさと懐かしさを思い出しながら。

「起きとるわっ、部屋に入ってくんなやっ!」と今の自分が38歳の柊二だとばれないように高校時代に返事したような言い方で演じきった。

1階に行くとすでに親父が居て、いつものように新聞片手に食パンを食べながら「柊二、おはよう」と目もみずに声だけをかけた。

柊二も照れ臭いながらも「おはよう」と朝の雰囲気を思い出しながら答えた。やはり朝に挨拶をかけてくれる家族が居てくれるのは嬉しい。


子供達が小さい時にはしつこいくらいに挨拶をしなさいと伝えていたが、嫁が挨拶をしない事を真似してかいつの間にか挨拶も無くなってしまった。


家族団らんで朝ご飯を食べるのが恥ずかしいが嬉しい事もあり普段は朝は食べない柊二も一緒になって話をしながら朝ご飯を食べた。


親父と話しをするのも何年ぶりだろうか。親父が病気で体調を崩してからは一気に年を取ったように元気も無くなり話をする事も無くなった。


そんな事を考えながら学校に行く時間になり、今更ながらの高校の制服に着替え自転車に乗って懐かしい校舎の門をくぐる事になろうとは・・。と独り言ちながら自転車置き場に自転車を止めて2年C組のクラスに入るのであった。


当然ながらクラスの事も忘れていた事もあり朝の段階でおかんに

「俺って高校のクラス何組やったっけ?」て聞いた際にもおかんの憐れんだような目で何ゆってるんやろこの子はって言う顔をされながら

「2年C組で担任は佐々木先生です。」と言われた。


「あーそーやったわ、ありがとう!」ってから元気に答えてあげたら余計に悲しげな目をされたんがげせん。


久々にクラスの中に入ったが席が分からずおろおろしていると高校時代に仲が良かった同じクラスの西野 隆やったかな!?が近寄ってきて

「柊二、おはよって何おろおろしてんねん、何かの罰ゲームか」って言ってきたんで

「私の席まで連れて行ってくれる方を募集してます。」って素直に白状したら爆笑していた。

それでもちゃんと手を引っ張って行ってくれて

「おじいちゃんの席はここですよ。」て教えてくれた。

やはり持つべきものは友達だ。


自分の席に着いてみて周りを見渡してみると久々に見る顔だらけで懐かしいやらと感傷に浸っていると隣の席の立花 梢に

「何、ジロジロ見てるん。ヤラシイ。」と久々の嫌味が聞けた。

「梢、久々やな。元気にしてたか?」

「ついに頭がおかしくなって、可哀想に・・。つーか下の名前で呼ばないでくれる気持ち悪っ。」


相変わらずの毒舌の梢は家の3軒隣に住んでいる幼馴染で顔はかわいいくせに性格に難ありのいけ好かない女だ。なんやかんやで高校も一緒で同じクラスの腐れ縁的なのでそこそこ仲がいいと思っている。

「機嫌悪いな。今日は月一の日か。イライラして人に当たるなよ。」

「最低。死ねばいいのに。誰かー、この人セクハラです。」と懐かしいやり取りをしていると教室の扉が開いて担任の佐々木が教室に入ってきた。


「おーい、静かにしろ。明日から夏休みだからって今日はまだ授業があるぞ。後、補習で夏休みに入れない数名は残念ながら明日からも先生と顔を合わせるからな。良かったな。寂しくないぞ。」といつもながらのさむい事を言って皆から失笑されているが。

久々の高校時代の授業を受け、良くこんな社会に出て意味のない事を勉強してたなと思いながら午前中を乗り切った。最後に校長からの絶好調に話の長い無駄話を生徒全員と教師の一部も思いながら、聞き流しながら今後の生き方について考える事にした。














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