タイムトラベル!?
@zousui794
第1話 現実の世界から
朝、6:00に起きて妻や子供が起きるまでに犬の散歩をすませ朝ご飯も自分以外の用意をして7:00には会社に行く為に作業服に着替え家を出る。その際も子供や嫁からの「いってらっしゃい」も何も無い。いつからだろうか。毎日同じ事の繰り返しに慣れてしまい機械のように感覚も無くなってしまったような日々が当たり前になってしまったのは・・。
池上柊二 38歳 妻と子供3人に恵まれた何処にでもいるような片田舎の住宅ローン35年で後、20年も残っている家に住み日々の生活に疲れた男だ。
地方の中小企業で事務職について10年が経ち、万年係長で部下もいるが完全になめ切っている。
「係長、明日私用で休みもらうので自分の業務の分お願いしますね。」
「佐伯さん、前から言っているのですが有給を取る際は休む3日前までに申請してくださいと伝えているはずですが」
「係長、そんな堅い事言っていたら誰も付いてきませんよ。かわいい後輩が困っているんですから。お願いしますね。」
ほんとっ融通が利かないよねっ、うちの係長は。よその係長はカッコ良くて頼りがいがあるのに。居てるだけなんだから分かりましたってハンコ押して回しとけって。
「はぁー、分かりました。次回から気を付けて下さいね。」
安月給で上からも下からも嫌味を言われて残業も多く月末には午前様になる事もしばしば。
休みの日には自室のPCで無料の画質の悪い映画を見る事ぐらいしか趣味が無い。たまにパチンコに行くが勝ったためしが無く少ない小遣いが無くなるだけだ。
早くに結婚をして子供が産まれた為、自分に自由に使えるお金も無く、趣味についやせるような熱意も無くなってしまった。
「何の為に生きているのだろうか。」最近、柊二は度々口に出して自分に問いただしてみるが一向に答えが出ない。いつからだろうこの様な考え方になってしまったのは。高校生の頃は何でも出来る自信が合ったし何とでもなるような感じで生きてきた。あの頃に戻りたいなと何度思っただろうか。
「はぁー、今日もやっと仕事が終わったし帰って犬の散歩でも行くか。」
日課になっている犬の散歩ぐらいしか運動していない30代後半ではそろそろお腹周りもふっくらと目立ち始めてきており娘からも怪訝な顔をされているのは十分承知している。
帰りの車の中で音楽番組を聞きながら運転していると高校時代に付き合っていた時に良く二人で聴いていた曲が流れてきた。
「なつかしい曲をカバーしているのは最近の流行りなのか。」車の中で独り言をいいながら口ずさんでいる。昔から歌を歌うのは好きで良くカラオケなどにも行ったりしていたが結婚してからは10年で数える程しか行っていない。
久々に良い気分で自宅に帰ると、夜ご飯はおかずだけ冷蔵庫に入っており家族はすでに就寝中である。毎日の事なのでおかずをビールで流し混んで犬の散歩に行って明日も仕事なので風呂に入って早々に自室で一人眠りについた。
翌日もいつものように会社に行く為に車に乗り込みエンジンをかけた際に自分でも良く分からないが「もういいやっ」と口に出していた。会社に連絡も入れず行く当ても気めずにとりあえず車を走らせて気分のままに北に向けて走っている。
初めて会社を無断欠勤してしまったが気分は高校生の時のような何とでもなるような感じで気分が高まっており無意識に懐かしい曲を口ずさんでいた。どのくらい車を走らせていただろうか、ナビもつけずに適当に走っていた為、この場所が何処なのかも分からない。道に迷ったのかと思いナビを付けてみたが反応が無く場所を示す事が無いまま画面が消えてしまった。
「おいおいっ、未だ買って2年しか経ってないのに故障かよっ」と嘆いててもしかたないと思い気分を変える為に頭に浮かんだ曲を口ずさんだが以前何処かで同じ感覚でこの曲を歌っていたなと思った瞬間にいきなり意識を失ってしまっていた。
意識が戻り周りをみて見てみるとさっきまで乗っていた自分の車の中では無く、以前住んでいた実家の庭先に突っ立ていた。
「意味が分からないんだけどっ」人はいきなり現実不可能な事が起こると思考が単純化されてしまうのかも知れない。冷静に考える事を放棄して今起こっている事に向き合う為にはしばし時間を要した。
「ワンッワンッワンッ」行き成り自分に向かって来る柴犬に飛びつかれて思考が現実に戻ってきた。その柴犬は高校時代に買っていた小太郎だった。
「いやいやいや在り得ない、小太郎は高校の時に交通事故で車に撥ねられて死んだんだ。」
「小太郎かっ??」
「ペロペロペロ、ワンッワンッワンッ」柊二の顔を嘗め回す小太郎に顔をよだれまみれにされながら泣き顔の柊二に向かって、
「柊二、そんな所で小太郎とじゃれながら泣きそうな顔になって何しとんっ!!」
自分に似たような感じの顔が近づいてきているなと思って見て見ると良く知った人物が柊二を見下ろしながらあきれたような言い放った。
「今日、バイトで遅くなるから夜ご飯いらへん言ってなかったか。」
「おかんっ、なん!?」
「何ゆーてるん。当たり前やないか。頭打ったんか。」
「いやいやいや、若返ってるやないか、整形でもしたんかっ。」
「あほっ、そんなお金あるわけないやろっ、っていくら褒めても何も買わへんで。」
柊二は自分自身の手や顔の張りが若返っている感覚に今更ながら気が付いた。
「いやいやいや、ありえへん。」
「おかんっ、今は西暦何年やったっけ??」
「高校にもなって今が何年かも分からへんのか。この子は大丈夫か。今年は1999年やないのっ、あんた自分が高校2年生で将来どうするか決めてるんか。」
やばい久々のいつもの説教が始まりそうな予感がするし、ここは何とか話題を逸らさないと。
「親父はまだ仕事に行ってるんか。」
「当たり前やないのっ、しっかり働いてぎょうさん稼いできてもらわな生きていけへんわ。」
「俺、ちょっと疲れたし自分の部屋で休んどくわ。」
久々の自分の部屋に行き、今の自分の姿を鏡で見て愕然とした。高校生時代の自分が鏡に映っている事で頭の理解が追い付いていない。考える事を辞めてベットに横になってみた。寝て起きたらいつもの風景に戻っているのではないかと思い目を閉じていつの間にか眠っていた。現実の世界から高校時代に戻った日の出来事が過ぎて行った。
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