【クラフィ編】白い嬰児を育てたの
1)
ここは,シャデシャトー王国の王都にして城下町のシャエル。その人通りが少ない路地裏の月明かりの下で,赤子が産声を上げていた。そこに,城下の視察でたまたま訪れたのがニート姫ことマリーである。当初,猫か何かだと思っていたそれは,赤子であった。しかも,ただの赤ちゃんじゃなく,すべてが白い
「この子って,まさか.........?」
シャエル歴,2900年。実に数千年ぶりに発見された【
2)
シャデシャトー王国にある文書館の記録によると。【
「実に,千四百五十年ぶりですな......。」
感慨深げに,宰相が呟くのも無理はないことだったのである。
「お父様。私,この子を育てようかと思います。」
マリーは,毅然とした態度で,父であり王でもあるシャデシャトー王国八十代当主 マクシミリアン7世に告げた。
「ふむ,わかった。月の断絶以来,数千年ぶりの月の女神さまからの贈り物である。
わかっておるな。」
と,意外にも即答してくれたのは,平和主義のこの王らしいともいえたが。ともあれ,すんなりと,マリーは,この【
3)
この【
「魔女は,どこかに生き残ってないの?」
シャデシャトー王国中をマリーたちは駆け回り、どうやらリヴァンカ山脈にあるバロー山の七合目の森の中に,最後の魔女がいるらしいとの噂を聞きつけ、その道中でアニエスに出会ったという訳だった。
「あ,もしかしたら,オクトケアが効くかもです。」
とアニエスは,マリーに告げた。これは,道中の途中で出会った創世の龍【イオ】も言っていたことだから、間違いは無いことだろう。そして,結果的に,この事は吉とでることになる。
4)
「月羸病の特効薬ならできる。必要な素材は,聖地にある月の泉の清水、あるいは、月光石と、イオの瞳、オクトケアの三つだよ。」
マリーの一通りの話を聞いて,エティエンヌは,そう語った。
「月光石なら,あたしのペンダントがあります。」
マリーは,首に掛けていたネックレスを外し,エティエンヌに渡す。
月光石というのは,月の魔力が溜まる場所にできる魔導石。膨大な魔素の塊で、魔導士は魔力の回復に用いているというシャデシャトー王国の特産品でもあった。その最高純度のものを,月の恵みというのだが,
「こりゃあ,月の恵みじゃないかい。いいのかい?」
受け取った月光石を鑑定していたエティエンヌが驚いたように,マリーに語り掛けた。
「ブランを救えるなら、安いものですわ」
「お婆ちゃん,イオの瞳もあるよ。」
マリーの脇からエティエンヌの孫のアニエスが声をかける。
「これで,素材は揃ったね。おいで、アニエス。特効薬の作り方を伝授しよう。」
そう言って,エティエンヌはアニエスと庵の奥に引っ込んでいった。
「待ってくださいまし。私も」
マリーも,その後を追って,庵の奥に去っていった。
【つづく】
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