【クラフィ編】序章

 「 イオの産声が、母なる無を喰いやぶり、世界は二つに分かたれた…。」


 あたし、エリーズは、この国の歴史を学ぶために、西国にあるシャデシャトー王国の王都シャエルにある王立文書館に赴いていた。

 あたしが住む世界【クラフィティオナ】は、【西国】、【魔界】、【東国】の三つの異世界が次元を越えて存在しているという、即ち、【魔界】から見て西側にあるのが、あたしたちが住む世界【西国】で、更にその若干東寄りの中央にある国が、あたしの母親でこの国の女王シャルロット二世が治めるシャデシャトー王国になる。

 北に魔道具製作の技工士や鍛冶師、錬金術師の国ガルマリアが、西のリヴァンカ山脈を越えて、善良なるエルフの国リリティアが、南の肥沃な大地には、食文化が進んだ国ロマニアが、東に西国最古の帝国にして、創世竜イオを奉ずる国イオガイアが存在する…なんてことを、取り留めなく、つらつらと考えていたら、あたしの家庭教師のローズモントが、


  「 聞きましたぞ、姫。なんでも、五歳で、かの魔導大全を極められたとか。」


 なんて、誇らしげに語った。思い越せば、あたしは、褒められてばかりだったな。うぅん、怒られてみたい。あたしは、八歳児の強みを生かして、かわいらしく、頼んでみることにした。


  「 ねぇ、ローズモンド。」


  「 なんでしょう?姫。」


 家庭教師のローズモンドは、ひきつった表情で、若干、いや、かなり引き気味に、答えている。


  「 怒って?」


  「 なりません。なぜに、何も悪いことを、なされていない姫を

   怒ることなどできましょうや。」


  「 ちぇ~~~っ。」


 まぁ、そう言うだろうとは、分かっていたので、あたしは、話題を変えることにした。


  「 ねぇ?ローズモンド。」


  「 次は、何ですか。姫…。」


  「 ははうえって、姫のころ、どうだったの?優秀?普通?」


 あたしの問いかけに、苦笑しながら、ローズモンドは、母上の話を語りだしたのだった。


  「 さようですな。まずは、マリー様の話の前に、私の同僚だった、コレットの話をしましょう。」


【つづく】

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