第18話過去を振り切れ!
俺が家に帰ると母は珍しく早い時間帯に帰宅していた。
俺は三玖には正しいと言われたけど本当に正しい事をしていたのかは分からなかった。でも、三玖のおかげで自分のしたことに自信が持つことはできたから思い切って母に聞いてみることにした。
「ねぇ、母さん」
「どうしたの?」
「俺のしたことって母さんにとって正しかった?」
そこで母は表情を変えて優しい口調で静かに話し始めた。
「颯は正しいに決まってる。颯がやろうとしたことは誰にでもできることじゃない。私はいつになればこんな日々は終わるんだろうと思ってたの。まさか颯が私を助けようとしてるとも知らずにね。でも、被害を受けた私は行動に移せなかった、颯に父親がいなくなるくらいなら私が殴られてる方がいいんじゃないかって思ってた。だからあの日颯が私を守ってくれた事がとても嬉しかったの」
そんなことを言われて嬉しくなる反面なぜ、あんなにも悲しい表情をしていたのかが気になった。
「じゃあなんで母さんはあの時あんなに悲しそうな表情をしたんだ」
「それは、私が情けなく感じてしまったの、親が子供に助けられたことに対して、そして、一度でもあの人を愛してしまったことを恥じたんだよ」
やっと、腑に落ちた。
あの日、母さんは僕を恨めしく思ったわけじゃなかったと分かり、自分の中にずっとあったわだかまりがほろほろと溶けていくような気がした。
「ありがとね、颯、私を助けてくれて」
そう言って母は満面の笑みを向けた。
そして、俺の事を慈しむように見て言った。
「颯は自分のしたいことをしなさい、勉強だっていい、モデルだっていい......バスケだっていいんだよ。私は颯が何かに心の底から打ち込んでいるところがもう一度見てみたいな」
「ありがとう母さん、俺頑張ってみるよ」
そう伝えて俺はリビングを後にした。
俺は自分の部屋に戻るとまた熟考することになっていた。
頑張って見るとは言ったものの何をすればいいのかなんて全然分かっていない。
モデルは頑張りたいとは思っているが、バスケをまたやりたい気持ちもあった。勉強だってこれまで以上に頑張りたいと思っている。何が楽しかったか、そんなことを考えて過去を振り返るその中でもこの半年の記憶に新しい体験が印象深かった。璃久のような親友がいて、桜や真理愛みたいな友達も出来て、三玖みたいな支えてくれる人ができた。この半年は充実感に溢れていて何もかもは新鮮だった。一旦、母さんへの迷惑はあまり考えないことにした。そして颯が出した結論は
「全部やってやる!」
そこに過去に囚われている颯はもう居なかった。
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