#46 【初コラボ】黒猫さんとベア子で雑談しますよ【あるてま】

 まあ、ぼっちの休日なんてそんなものだと言うように、わたしの休日は一日ベッドの上でゴロゴロしながらVの動画を見たりお昼寝したりで怠惰に消費された。

 で、コラボの時間である。

 文化祭の準備で疲労しているから休みたいなぁ、とか色々言い訳を考えながらパソコンの前に座って通話が掛かってくるのを待つ。

 

 あーぅー、今回のコラボ相手は後輩なんだよなぁ。

 今まで先輩に引っ張ってもらったり、同期に乗っかったりのコラボが多かったけど、これからはわたしがリードする側にならなきゃいけないのか。

 え、コミュ障のわたしにリードって出来るの……?

 

 一度無理と思うともう今すぐ逃げ出したくなってきた。

 別に結とかアスカちゃんとコラボしとけばそれで充分じゃん。

 今更変に関わり増やしても面倒になるだけだし、あーそう思うと段々やる気が……。

 

 こんな時にわたしが頼るべき相手は──、 


 ◆


【Discord】

20:17:黒猫燦 祭先輩

20:17:黒猫燦 後輩とコラボってどうしたらいいですか

20:18:世良祭 楽しんだらいい(ΦωΦ)

20:18:黒猫燦 いや、だからどうやったらいいかって……

20:20:世良祭 前に言った。

20:20:世良祭 お互い友達が欲しいと思っていれば、遊べば自然と楽しい。

20:20:世良祭 あとは自分が、少しだけ勇気を出して手助けをするだけ。

20:21:世良祭 私ができたから、黒猫さんもできる。

20:21:世良祭 応援してる( ̄ー ̄)bグッ!

 

 ◆

 

【初コラボ】黒猫さんとベア子で雑談しますよ【あるてま】

 18,993 人が視聴中・九天 溢 チャンネル登録者数 10,098人 

 

「どもーこんばんはー」

 

:こんばんはー

:今日はねこパーカー

:2回目の配信がコラボとか期待の新人だぁ

:しかも相手は同期と先輩

:黒猫さんもついに先輩か

:不安しかねぇわ…

 

「はーい、皆さん来てくれてありがとうございます。昨日から色々拡散してくれたみたいで、おかげさまでさっきチャンネル登録者数が1万人超えました。これもひとえに私の魅力が溢れすぎた結果ですねー」

「ちょっと、そんなこと言うと炎上するわよ。わたし切り抜きでそういうの見たことあるわ」

「あはぁ、しーちゃんってば私のこと心配してくれてるんですかぁ? うーれしー」

「は、はぁ!? 別に心配とかしてないですけど!? よく見るVが似たこと言って叩かれてるの見たってだけで……」

 

:ダレノコトカワカラナイナ-

:そこおるで

:先輩、会話に混ざって

 

「……どーも、よく炎上して叩かれるVです。オープニングから後輩がいちゃいちゃしてて早くも帰りたい気持ち」

 

 結と誰かと3人でコラボする時って残された人はこんな気持なのかな。

 ちょっと仲間外れ感が理解できてしまったので、今度から自重しよう……。

 

「いちゃいちゃしてませんっ!」

「えー、いちゃいちゃしてますよー?」

「もう付き合っちゃいなよ」

 

:開始早々これである

:お前も付き合えや!

:先輩が先輩なら後輩も後輩だな

 

 べ、別に結とはそういう関係じゃないし。

 付き合うとかそんな、ね?

 

「じゃあしーちゃんには終わってから裏でプロポーズしてもらうとして、今日の特別ゲストはみんな大好き黒猫燦さんです、ぱちぱちー」

「い、いぇーい」

 

:ぱちぱちぱち

:先輩がんばれ!

:雑談メインで黒猫がどこまで成長したか、見届けさせてもらおう

 

 おぉ、なんだか新鮮な気分。

 今までのコラボって先輩と同期だったから、こう、通話越しでも伝わってくる尊敬の念的なものがむず痒い!

 よーし、お姉さんがんばっちゃうぞー。

 

「では、今回は黒猫さん改めくーちゃんにVtuberの極意を教えてもらいましょう!」

「よ、よろしくおねがいします」

「くーちゃん!? え、先輩なんだけど……」

「くーちゃん先輩よろしくお願いします!」

「うぅ、話が通じない」

 

:ドンマイ

:かわいいぞくーちゃん先輩

:どうしてよりにもよってくーちゃんなんだ…?

 

 ま、まあ、あだ名は親愛の証と思って受け取っておこう。

 それより今回の趣旨である。

 なにを思ったのかこの後輩ふたりは視聴者に叩かれまくりのわたしにVの先輩として生指導をして欲しい、と言ってきたのだ。

 え、反面教師にでもするつもり……?

 

「いやぁ、くーちゃん先輩ってこれでも2期生じゃダントツトップのチャンネル登録者数で、1期生の先輩方にも近いうちに並ぶと言われるほどの人ですからね。これ以上の講師はいませんとも!」

「猫ちゃ、あっ、黒猫先輩はすごい」

「て、てれる」

 

:まあ確かに黒猫さんって登録者数で見ればすごいからな

:その人気の秘訣が今明かされるわけか…

:期待していいの?

 

「よーし、じゃあVtuberの極意を授けよう!」

 

 そうだな、わたしがしてきたことと言えば……、

 

「下着の色を毎回言ってる気がする。あとコラボで聞いたこともあったような……?」

「なるほどなるほどー。ではくーちゃん先輩の今日の下着は?」

「ちょっ」

「今日は引き篭もってるから白だね。……ん?」

「肌触りとか柄はどうです?」

「いや、なんで私下着の色言ってんの!?」

 

:ほんとだよ

:惜しい

:気づくのが早い(遅い)

 

 ま、まあ、気を取り直して次に行こう次に。

 他にわたしがよくしたことと言えばやっぱり、

 

「叫ぶ、とか」

「黒猫さんの代名詞ですねー。ぴぃぴぃにゃー」

「叫ぶと切り抜きがよく作られる。すると目に止まりやすくなる。結果的にチャンネルが増える。……あれ、けど意識して叫んだことないや」

「天然!?」

 

 叫び声ってふとした瞬間に出るから叫び声なのであって、意識したら出ないのは当たり前だから!

 別にわたしが毎回叫んでるわけじゃないし!

 

「他は……なんかある? ほら、お前らチャット打ち込め」

 

:センシティブ

:クソ雑魚

:百合営業

:バカ

:ポンコツ

:泣き虫

 

「悪口だな!? イジメて楽しいか!?」

「うーん、でもどれも配信内容的に否定できないですね」

「汚点が可愛い、ってことね」

「汚点言うな!」

 

 くそぅ、こんなはずじゃなかったのに。

 もっとビシィッと格好良く講義して先輩ステキ! ってされる計画が丸つぶれだよ!

 でも否定できないしこれ以上思いつかないのも事実。

 わたしってなんなんだ……。

 

「つまり、自然体が面白い人はなにをしてもウケる、ということですねー」

「猫ちゃんは凄いのよ」

 

:実際Vとして必要なもの持ってるよ

:秀でた能力はないけど愛されキャラとしては最強

:でも真似は出来ないなぁ

 

 おお?

 なんか結果的に黒猫さんスゴイ! って感じになったのでヨシ!

 

「ふたりはあるてまで尊敬する人っているの?」

 

 初配信じゃ言ってなかったような気がする。

 

「私はですねー、やっぱり結先輩ですね。ガンガン色んな人と絡んでてすごーいって思います。あとはにわ先輩も、自由に見えてカリスマ溢れてるのがいいですよねー」

 

:結、よかったな(後方腕組)

:伸び悩んだ時期もあったのに、無事憧れのきりん先輩みたいに成長できたね

:にわさんはあれは黒猫と同じで真似しても真似できないからなぁ

:なんかよくわからんけどハート掴まれる魅力ある

 

「わたしは……その、猫ちゃん、です。あ、黒猫先輩」

「お、おぉ。続けて続けて」

「まず、かわいい」

「だよねだよね!」

「そしてポンコツなのに頑張ってて愛らしい」

「うんうん、……うん?」

 

 聞き間違い?

 

「この前もミュート忘れて生着替えとか普通じゃ考えられないし、今日だって流れで下着の色を言ったり。マトモな女性だったらしないようなことをしても平然としてるのが凄いと思うわ!」

「お? 喧嘩売ってる?? 実はアンチか???」

「な、なんでぇ!?」

 

 もう誰も信じられない。

 ちょっと発言の節々からもしかしてわたしのこと好きかな? とかちょっと期待してたのに、盛大に裏切られた気持ちだよ!

 

「では私から質問です。Vtuber活動していて一番大変だった時ってなんですか?」

「一番大変? デビューも大変だったし急に決まったコラボも大変だったしオフコラボも大変だったしその後も大変だったし先輩の相手も大変だったし謹慎も大変だったしコミケも大変でカラオケ大会も大変だった……。全部が全部、大変だった……」

「おっと、とてつもない実感のこもった言葉ですよこれは」

「が、頑張っててえらいわよ!」

 

:確かに凄いよな。

:普通コミュ障なら最初の一歩がまず無理なのによくやってるよ

:いまじゃ後輩とコラボしてもテンパってないからな

:どもる黒猫が懐かしい

:もどして

 

「成長を喜べよ! それでも私のファンか!?」

 

:ゑ

:ファン?

:ここいっちゃんのチャンネルぞ?自意識過剰では??

 

「え、あ、ごめん」

 

:いいよ

:今回だけな

:まあファンだけど

 

「オイ!!!」

「やー、ほんと凄いですね。これぞ天然パワーって感じです。しーちゃん真似できます?」

「無理に決まってるでしょ。猫ちゃんだからできる芸風よ」

「芸じゃないが」

 

:芸じゃなかったらなんなんですか

:あるてまの芸人枠では!?!?

:今更路線変更は効かんぞ

:シャネルカとV1グランプリ出るって約束はどうしたんですか!?

 

「してないし! 覚えもないわ!」

 

 え、ほんとにしてないよね?

 実はラビリット先輩が勝手に配信で言ってたりしないよね。

 また知らない予定が積んであるとか勘弁なんだけど???

 

「はー、取り敢えずVtuberとして大成するにはくーちゃん先輩のように羞恥心を捨てて芸人になるべし、ってわけですね。勉強になりまーす」

「わ、わたしも猫ちゃんみたいに頑張るわよ」

「まってまってまって、私って本当に羞恥心捨ててる芸人枠と思われてるの。それだけは全力で阻止したい……ッ!」

「もう、手遅れかと」

「強く生きて」

「なんでだよぉ!!!」

 

:後輩からもこんな扱いなんだなぁ

:まあ黒猫さんらしいと言えばらしい

:けど黒猫さんのおかげでふたりとも自然体で配信してる希ガス

:昨日よりリラックスしてるよね

:これが芸人効果!

:あるてまもどんどん賑やかになるな

 

 ◆


23:41:黒猫燦 ありがとうございます

23:41:黒猫燦 祭先輩みたいに格好良く出来なかったけど、

23:42:黒猫燦 でも先輩のおかげで大事なことを思い出せました

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る