203日目-⑤

勇者になって【六十四日目】

『国里』にはすれ違った女の人がいた。驚いたことにその女の人は将軍の姉だった。そして今、大量の団子を食べていた。

『なんだ、弟の知り合いだったのかい。ならもっとおまけつけなきゃね』

さらに、あんみつ団子のほかに、草餅、わらび餅、五平餅……餅の割合が多くね?

気前の良いお姉さんのおかげでこの国の名産が食べられた。

『ふう、ごちそうさま……おながいっぱいだ。く、苦しい』

『お粗末様、そりゃよかった。後は私が片付けておくから二人はゆっくりしていきな』

『あ、ありがとうございます。う、やっぱり食い過ぎた』

『魔王やるな、全部食べ切るとは……』

『な、なんてことないさ。甘党の魔王だからな』

『迫力がないね、それ』

『でも、当分は食べなくも大丈夫そうだ』

『ハハ。この店『国里』の名前の由来はウチの先祖が作ったんだ。『外界から人をこの店で満足させたいって。観光する気も失せるほど自分の郷国に戻りたくなるぐらい満足させたい』って』

『そりゃ、すげえ考えだ』

『魔王がこの国でこの店で喜ぶって、先祖の願いが叶った気がするよ』

『……』

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