第3話

 桃太郎が事情を話すと、渡世人はさっそく船の修理に取り掛かりました。

 渡世人は名前を『雉衛門』と言いました。

 これで見習いかと思うほど良い手際で船をあっという間に直しました。

 雉衛門は桃太郎がなぜ鬼ヶ島に行きたいのか理由を聞きました。

「おぅ……っぐす」

 すさまじい勢いで泣き始めると、一緒についていくと言い出して聞きませんでした。

 桃太郎は困りました。

 一緒に来てくれるのはいいが、犬と雉衛門の二人とも、すぐに戻ってもらうつもりだったからです。

 村を壊滅させるだけの鬼です。一匹か複数なのかわかりませんが、とても危険だと思っていました。

「うるせぇ、ついていくって言ってんだろ!」

 なのに、雉衛門は譲りませんでした。

 若くして渡世人になったという雉衛門にも、なにか事情があるのだろうと桃太郎は思いました。なので、好意に甘えることにしました。

「え、俺も行くことになってるんですか?」

 流れで犬も一緒に行くことになりました。そして。

「あー、なんだ。聞いちまったからよ」

 戸口で聞いていたのでしょう。目を真っ赤にした船大工の大男も一緒に行くことになりました。

 船大工は名前を猿彦と言いました。

 こうして犬と猿彦と雉衛門の三人を連れて、鬼ヶ島を目指すことになりました。


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