第3話

 「約束通り、石鹸を持ってきてあげたわよ。

身体を洗ってあげる」


深夜、いつものようにやって来た紫桜は、昨日の不機嫌さが嘘のように、ご機嫌であった。


「随分機嫌が良いな。

何か良い事でもあったのか?」


「もう直ぐ地下住居が完成するの。

住居といっても、今は只の洞穴でしかないけど、何とか赤い満月までに間に合った。

これで、やっと皆を匿えるわ」


「?

2年前くらいから隠してると聴いたが?」


「そうね。

今までは、病気や老齢で戦えない人達だけを隠してきた。

でもこれからは、元気であっても戦う力がない人達まで匿える」


「ここに来てから2年以上経つ元気な者は、強制的に戦わせるのだったな」


「ええ。

人が増え続ければ、それだけ納める火狐の数も増え、最前列で戦う源さんやあやめさん、志野さん達の負担が増す。

正直、納める火狐は、その全てを精鋭の六人で倒しているわ。

後列の人達も、一生懸命戦ってはくれるけれど、まだまだ、魔獣を倒せるような域には達していない。

源さん達が戦っている間に、別の火狐に前列を突破されて、毎年四人から八人くらいが彼らの餌になる。

その全ては、陸に訓練にも参加せず、自ら戦おうとしてこなかった人達だけど、余裕がないとはいえ、やはり少し可哀想だもの」


先日は、領主として割り切ろうと、努めて冷静に、犠牲者を自己責任だと切り捨てていたが、本心ではかなり辛かったようだ。


それを回避できる選択肢ができて、ほっとしている。


「今後は、戦うのが嫌な人や、その技量の劣る人は、畑仕事とか別の負担をより多く課して、生き延びさせる事が可能になる。

皆が皆、戦闘が得意な訳ではないものね」


「毎年どのくらいの者が、ここへ送られてくるのだ?」


「祖父が健在だった頃は、年に百名くらいはいたわ。

でも、強かった人達が皆亡くなってしまった頃から、少しずつ減ってきて、今は二十名に満たないわ。

あまり人数を送り過ぎて、税を過酷にし過ぎても、そのために皆が死んでしまって税を取れなくなったら、元も子も無いものね。

島に輸送に来る本国の役人に聞いた事があるけど、残りは皆、鉱山送りだそうよ。

向こうでも死者が絶えなくて、人手不足みたい」


「島には今、何人くらいの住人がいるんだ?」


「全部で百四十六人。

本来なら、税で5体、物資交換で2体いるから7体の火狐を倒す必要があるけど、2年前から二十人以上隠して6体で済んできた。

今年はもっと隠して、5体で済むようにしたいわ」


「大して変わらないように聞こえるが、火狐はそんなに厄介なのか?」


「ええ。

大きさだけでも2mくらいあるけど、爪に毒があるのと、大きさの割りに動きが素早くて、攻撃を当てるのにも苦労するわ。

普通の戦い方では、歯が立たないの」


この島に来た晩に見た、広場で訓練していた黒装束の者達を思い出す。


皆、腰を据えて切り結ぶというより、忍者のような動きをしていた。


あれは、そういう事なのだろう。


「・・そろそろ身体が温まったわね。

さあ、身体を洗うから、湯から出て」


「自分でできるが」


「良いから!」


渋々湯から出て、備え付けの小さな木椅子に腰掛ける和也。


脱衣所に戻り、石鹸を持ってきた紫桜が、その背中に回り、自らの手ぬぐいを泡立てる。


「じっとしていてね」


耳元で囁かれる声に、艶のような色を感じ、落ち着かない和也の背中を、彼女が丁寧に擦り始める。


「気持ち良い?」


「ああ」


背中を終え、両腕を洗い終えた紫桜が、そっと両手を和也の両肩に添え、頭をその背中に凭せ掛けてくる。


「どうした?」


「・・御免なさい。

まだほんの小さかった頃、時々、祖父の背中を流してあげていたのを思い出してしまって。

・・広くて、逞しい背中だった。

傷だらけだったけれど、痛くないのと尋ねたわたくしに、『この傷の1つ1つが勲章なんだよ?』って、穏やかに笑って、教えてくれた祖父。

・・身体が陸に動かなくなると、まるで迷惑をかけるのが辛いとでもいうように、あっという間にこの世を去ってしまった」


和也の肩に添えられた指先に、何かを耐えるように力が入れられる。


僅かに聞こえてくる、すすり泣きの音を背に、和也は暫く、何も言う事ができなかった。



 水平線から太陽が顔を覗かせる頃、和也は一人、島の港付近に佇み、海を眺めていた。


といっても、別に景色を楽しんでいた訳ではない。


魚を捕るために、神の瞳を用いて海の中を覗いていたのだ。


昨日、女性に連れて行って貰った店の寿司は、実に美味かった。


江戸前寿司の店であったが、魚の新鮮さだけで勝負せず、どのネタにも丁寧な仕事が施されていて、職人の意気込みと誇りを感じさせられた。


海の側に暮らしながら、陸に魚を食べられない紫桜達にも、腹一杯食べさせてやりたい。


理不尽な理由で不自由な暮らしを強いられながら、懸命に生きている者達に、明日を生きるための細やかな喜びを与えてやりたい。


大陸周辺の海中を隈なく探索し、マグロやカツオ、ブリ、タイ、ヒラメ、アナゴ、ウニなどを見つけては転移させ、購入した阿波尾鶏同様に眠らせた上、次々に収納スペースに放り込む。


全部で100匹程度を捕獲した後は、遠く離れた海の海水から1トンの塩を作り、自ら造った特殊容器に収めて、同じく収納スペースに放り込む。


海苔は買ってあるし、これで準備は整った。


島の中に戻りながら、紫桜が喜んでくれる事を願う和也であった。



 あの後、少ししてから泣き止んだ彼女は、無理やり笑顔を作ってごまかそうとしたが、見ていられず、思わず抱き締めてしまった。


驚きはしたものの、抵抗もせず、自分の腕の中で大人しくしていた彼女は、やがで自らの両腕を和也の背に絡めてきて、暫く無言で抱き締め合っていた。


その後、冷えた身体を湯に浸かり直して温め、共に風呂から上がるまで、お互いに一言も喋らなかった。


余計な言葉など必要ない。


湯に浸かり直している間、和也の隣に寄り添い、ずっと彼の手を握っていた紫桜も、夜空を眺め、穏やかな時間を楽しんでいた和也も、互いの心に芽吹いていたある感情を、より大きく育てるのに必要なこの時間が、心地良いと感じていたのだから。



 「頼もう」


朝の7時、紫桜以外の皆が起き出して、其々の仕事や作業に従事し始めている中、和也は領主屋敷の扉を開ける。


和也の呼び声を聞いて、奥から出てきたあやめは、何故か手に短刀を握っていた。


「何だい?

喧嘩でも売りに来たのかい?」


「何故そうなる?

大体、ルール違反ではないか。

こういう時は、『どうれ』と応えるのではないのか?」


「はあ?

こっちは朝から忙しいんだよ。

遊びたいなら余所よそでやっとくれ」


「自分を子供扱いするとは、見た目に反してそんなに歳なのか?」


「・・あんた、姫様からのご命令がなかったら、今頃死んでるよ?」


物凄い目つきで睨んでくるあやめ。


「源という男もそうだが、お前達は短気でいかん。

やはり、カルシウムが足りていないのだな」


「カルシウム?

何だい、それ?」


「簡単に言えば骨だ」


「・・今、馬鹿にしたかい?

幾ら何でも、そんなものを食べる訳がないだろう?」


「落ち着け。

直接食べる訳ではない。

・・それより、朝食の時間だというので、受け取りに来たのだが」


「良い度胸してるよあんた。

これだけ喧嘩を売っておいて、そんな事が言えるなんてね。

ちょっと待ってな」


渋々、奥に取りに行くあやめ。


文句を言いながらも、きちんと渡してくれるあたり、根は優しい女性なのだ。


身寄りのいなくなった紫桜を、親の上官の娘だからといって、率先して育てられるなど、中々できるものではない。


増してや、陸に資源や食料のない中でなのだ。


「ほら、朝飯だよ」


戻って来たあやめが、皿におにぎりを3つ載せて渡してくれる。


「ここで食べても良いか?」


「勿論。

その皿は良いやつだから、大事に扱いなよ?」


玄関先に腰を下ろし、浄化した手で1つを手に取りながら、皿を見る。


「ほう。

良い柄だ。

古伊万里に少し似ているな」


「分るのかい?

古伊万里とやらは知らないけれど、それは御屋形様がここにいらっしゃった時に、一緒に持ってきた物の1つなんだ」


「御屋形様?」


「姫様の祖父で、本国で皇族だったお方さ」


懐かしい、大切な記憶を思い出しているような顔でそう話すあやめ。


「とても立派な人物だったと聞いている」


「姫様からかい?

・・ああ、とてもお優しくて、心の広いお方だった」


「・・時に、ちょっと相談があるのだが」


食べ終えた皿を返しながら、そう口にする和也。


「何だい?」


「この島の、田畑に使用していない土地を勝手に使ったら不味いか?

できれば、400坪くらい売って欲しいのだが」


「土地?

何をするんだい?」


「仕事を始めようと考えている。

いつまでも施しを受け続ける訳にもいかないからな」


「良い心がけだけど、私の一存では決められないね。

姫様にお伺いを立てないと」


「お目通りをお願いできないか?」


「・・分ったよ。

昼過ぎにまたここに来な」


「有難う。

・・おにぎり、とても美味かった」


「そうかい」


そっけなく応えるが、満更でもなさそうなあやめを後にして、和也は、購入する土地を探しに歩く事にした。



 散歩しながら、空き地を見て回る。


村人が少ない割には、かなりの面積が田畑になっているが、それでも集落から離れるにつれて、所々、岩や雑草だらけの場所が現れる。


森を除いた、人が住む集落の大きさは、大体10㎢だが、その8割くらいは既に開墾され、残りを川と荒地が占める。


大体の目星をつけた和也は、川沿いの共同温泉の近くで腰を下ろし、景色を眺める。


川のせせらぎ、木の葉の舞い落ちる様、そして穏やかな木漏れ日を受けて、以前創った和笛を収納スペースから取り出す和也。


魔の森で演奏した曲とは異なる、四季の移ろい、自然の美しさと儚さをテーマにしたような、落ち着いた、一抹の寂しさを感じさせる曲を奏で始める。


細く透明な音色が、周囲の自然の音と結びつき、そよ風に乗って集落の方へと流れていく。


『ん?』


人の視線を感じ、笛を奏でながら気配を辿っていくと、少し離れた温泉施設の物陰から、少女が覗いているのが見えた。


粗末な和服を着た、13、14歳くらいの、大人しそうな少女。


顔に見覚えがある。


確か、夜間の訓練で、大人達に混じって投擲の練習をしていた少女だ。


「どうした?

そんな所から見てないで、こちらに来ないか?」


演奏を止め、少女の方に顔を向けながら、怯えさせないように、努めて穏やかな声で話す。


声をかけられ、ビクッと身をすくませた少女は、逃げ出すかどうかの葛藤を終えたのか、恐る恐る言葉を口にした。


「近くに行っても良いのですか?」


「何故そんな事を聞く?」


「だって私、この島の住人ですよ?

貴方は今まで見た事ないから、多分、姫様のお客様でしょう?

穢れが移りますよ?」


「君は穢れてなどいないし、そんなものは移りはしない」


「・・本当にそう思ってるのですか?

なら、私に触れる事ができますか?」


「当たり前だ。

君さえ良ければな」


和也のその言葉を受けて、ゆっくりと近付いて来る少女。


自分に触れてみろとでも言うかのように、間近まで来て立ち止まる。


和也は徐に立ち上がり、その頭をゆっくりと撫でた。


優しく、丁寧に、心を込めて撫でていく。


頭を撫でられ、目を見開いた少女は、俯いたまま、暫くじっとしていたが、やがてボロボロと涙を溢し始める。


溢れる涙を、両手で拭いながら、少女は泣き続けた。


「落ち着いたか?」


「はい。

・・御免なさい。

見ず知らずの方に、ご迷惑をおかけしてしまって」


「迷惑などではない。

少し自分と話をしないか?」


「私で良いのでしたら」


「勿論だ。

君が良い」


二人並んで川岸に座り、話を始める。


「君はこの島に来て、どれくらいになるんだ?」


「もう直ぐ3年になります。

・・3年と少し前、父が本国で盗みを働いたんです。

当時、本国の私の住む村では流行り病が猛威を振るっていて、多くの人が苦しんでいました。

薬はあったのですが、数が少ないという理由で、物凄く値段が上がり、普通の人には手が届きませんでした。

私の母は、あまり身体が丈夫な方ではなく、その流行り病に罹ってしまったんです。

咳が酷くなり、どんどん窶れていく母を見ていられなかった父は、ある晩、商人の屋敷に忍び込み、薬を盗んで母に飲ませました。

5日経ち、母が回復した頃、誰かの密告を受けて父は捕まり、鉱山送りが決まりました」


流れゆく川を見つめながら、淡々と話をする少女。


心の内に潜む、悲しみ、怒りを無理やり静め、敢えて平静を保つ事で、己を納得させようとしているように見える。


「君が穢れを必要以上に気にするのは何故だ?」


「父が捕まった後、刑が確定するまでの僅かな間、私達は自分の家で暮らしていました。

それまで、極普通に挨拶を交わし、遊んでいた友達が、急に私を無視するようになり、近付くのを嫌がるようになったのです。

理由を聞くと、穢れを移されるからだと言われました。

お店に買い物に行っても、そんな穢れたお金では売れないと言われ、陸にご飯も食べられない有様でした」


その時の事を思い出しているのか、拳を握り締め、必死に何かを耐えている。


「ここに送られてくる間も、お役人にさえ、直接触れるのを嫌がられ、木の棒で突かれながら、渡って来ました。

・・私は、そんなに穢れていますか?

触れるのが嫌な程、汚いですか?

私が触ったものは、皆穢れてしまうのでしょうか?」


耐えきれなくなった少女が、再び泣き始める。


ジャッジメントで少女の過去を数年に亘って垣間見た和也は、その酷さに眉を顰めた。


道を歩けば、出会った者には縁起が悪いと顔を顰められ、店で物を買おうと近付くと、露骨に扉を閉められたり、動物でも追い払うように、しっしと手を払われる。


分別のつかない小さな子供達からは、石さえ投げられていた。


和也は、少女の肩に腕を回し、しっかりとその心を支えてやる。


「自分が保障する。

君は穢れてなどいない。

汚くなどない。

繊細で、美しい心を持った、普通の人間だ」


「ううっ」


嗚咽を堪えようと、呻きを洩らし続ける少女の肩を強く抱きながら、和也は思う。


少女が流す、その涙を、自分は決して忘れない。


今はまだ、その時ではない。


だが時が来たら、絶対に容赦はしない。


紫桜の涙も、この少女のも、決して安くはないぞ。


少女が泣き止むのには、それから30分近くを要した。


「君にこれをやろう」


あまり人前で泣いた事がないのか、大泣きした事を恥ずかしがり、和也の顔を陸に見る事ができない少女に、和也は、黒い漆が塗られ、三日月の下で咲く鈴蘭の花をあしらった篠笛を渡す。


「凄く奇麗。

それに、かなり高価な物では?

私なんかに、こんな良いものは勿体無いです」


「君には、『なんか』などという言葉は相応しくない。

生まれや育った環境に負けず、懸命に努力を重ねる事ができる者は、もっと胸を張って良い。

仮令本国とやらに君の味方がもういなくても、外の世界には、君が差し出すその手を、躊躇いなく握ってくれる者がいる。

相手の方から、笑顔で手を差し出してくる者がいる。

忘れるな。

自分も、その内の一人だ」


そう言って、少女の肩を強く抱いてやる。


「・・嬉しい。

入り口の門を潜る時、生き残る以外の希望は捨てたはずなのに・・。

あの、もし宜しければ、お名前をお聴きしても良いですか?」


「御剣和也だ。

君の名は?」


「菊乃と申します。

・・また、お会いできますか?」


「ああ。

もう暫くはここに居る。

それと1つ忠告しておくが、君のような若い娘が、自分に触ってくれなんて、あまり言わない方が良い。

男の中には、変に勘違いする者もいるから」


「そんなの、分ってます。

貴方だから、・・あんなに澄んだ、奇麗な音色を響かせる貴方だから、そう言ったんです。

きっと心まで美しい方だと思えたから」


はにかみながらそう告げた少女は、自分を安心させるように、和也に凭れかかって、川の流れを見つめていた。



 「済みませ―ん」


仕事がある菊乃と別れ、昼過ぎになってから、再び紫桜の屋敷にやって来た和也。


玄関の扉を開け、声をかけると、先程とは別の女性が短刀を持って出てきた。


「何を謝る?

・・まさか、姫様に良からぬ事でも企んでいるのか?」


「謝ってなどいない。

これは、とあるハイソな世界で行なわれている、他人に声をかける時の挨拶だ」


「ハイソ?」


「上流社会くらいの意味だ」


「ほお。

分っているではないか。

姫様に対するご挨拶に相応しい」


「・・そうだろう?」


少し機嫌が良くなった女性に案内され、先日と同じ部屋で紫桜と目通りが叶う。


頭を下げて待っていると、紫桜がやって来て、御簾のある、1段高い場所に座った。


「面を上げなさい」


何だかあまり面白くなさそうな顔をして、こちらを見る紫桜。


「・・それで、土地を買いたいという事でしたね」


「そうだ。

最低400坪くらいは欲しい。

別に、整備された土地でなくても、荒地でも何でも、土さえあれば、それで良い」


「この島の土地は、森を含め、全てが領主であるわたくしの所有になっており、村人には、一時的に貸し出すという形式を採っています。

領地というのは売買の対象にはなりません。

わたくしも、この島を本国から預かっているだけだからです。

また、この島の性質上、仮に売る事ができるとしても、何時まで生き残れるか分らない上、土地を残す子孫もいないのですから、あまり意味がありません」


「勝手に子供を作れないのだったか?」


「人数が増えればそれだけ税が重くなるので、わたくしの側近の方々以外は、今は自粛して貰っています」


「できてしまった場合はどうするのだ?」


「まだ実際には例がありませんが、男女共この島で、ある罰を受けるか、できた子供を残して、鉱山送りになるかを選ばせます」


紫桜の表情が硬くなった。


領主として、己の気持ちに反する事を言わねばならないからだろう。


余計な質問をしてしまったな。


「・・では、売って貰う事は諦めるが、借りる事ならできるか?」


「それは勿論。

現在村人が使用している土地でなければ構いませんが、生憎、400坪以上となると、田畑を望むなら、ここから大分離れた場所になってしまいます。

貴方に貸し与えた家からも、随分離れていますね」


「荒地で良い。

実は既に目星を付けた場所がある。

そこなら、1000坪以上あるからな」


「どちらです?」


「島の西側に共同の風呂があるだろう?

そこから少し離れた、川沿いの場所だ」


「確かあの辺りは、岩と石しかない川原でしたね。

・・岩や石をどければ、土くらいあるでしょうが、相当な労力が必要でしょうし、一月ひとつきやそこらでできるものではありませんよ?」


「大丈夫だ」


「・・分りました。

その場所で良いと言うのであれば、自由に使って構いません。

因みに、何をする積りですか?」


「今はまだ内緒だ。

・・大丈夫だ、決して迷惑はかけないから」


紫桜の両側に控える、二人の女性からの視線が険しくなったので、一応、そう付け足しておく。


「他に用件はありますか?」


「ある。

ここの蔵の中を見せて貰っても良いか?」


「蔵を?

・・何故です?」


「君に今回の件を頼むに当たり、貢物を用意した。

それが入り切るかを確かめるためと、何が不足しているかを確認するためだ」


この屋敷の敷地内には、4つの蔵がある。


本国への年貢には火狐の素材が充てられる以上、あの蔵の中には、彼女の個人的な財産や、村人から納められた米などの食料が入っているはずだ。


「・・そんなに沢山のものを納めていただけるのですか?」


あまり見られたくはないのか、少し渋っている。


「多分。

勿論、君の個人的な物が入っているなら無理にとは言わないが」


「・・分りました。

特別に許可しましょう」


「姫様、宜しいのですか?」


側に控えるあやめから、何かを気遣うような言葉が彼女にかけられる。


「構いません。

彼相手に見栄を張っても、あまり意味はありませんから」


言葉の意味が分らぬまま、和也は、屋敷の裏手にある蔵まで案内された。


「どうぞ、ご覧下さい」


蔵の前まで来て、順番に中を見せられる。


1つ目の蔵には、彼女の祖父や父のものと思われる、鎧や兜、刀、槍などの武具が収められていた。


それ以外には、高価な陶器の大皿や壺などが十数点あるだけだ。


2つ目の蔵には、米や大豆、麦の入った麻袋が数十個ずつ置かれていたが、他には、保存の利く野菜が、これまた数十個ある以外には何もない。


3つ目と4つ目の蔵は、・・空だった。


「・・これはどういう事だ?」


驚きを隠せない和也は紫桜に尋ねる。


「見たままです。

姫様は、只でさえ苦しい村人から、必要以上に税を取りません。

村で賄えないものは、本国から火狐の素材と交換で購入していますが、それすらも足下を見られているので、満足には手に入りません。

なので、姫様は御屋形様から受け継いだ財産を少しずつ処分されながら、何とか暮らしてきたのです」


目を伏せて、己を恥じ入るような紫桜に代わり、あやめがそう答える。


和也は、その果てしなく長い年月の中で、この時程、自分の考えを恥じた事はない。


今まで様々な星の暮らしを観察してきて、皆が皆、豊かでない事くらいは知っていたはずなのに、仮令国王や殿様と呼ばれる人種でさえも、貧しい者もいる事を理解していたはずなのに、セレーニアでの豊かな暮らしを体験し、ここに来て、紫桜に気をとられて、そんな事すら忘れていた自分が無性に情けなかった。


自分が陸に考えもせずに頬張っていたあのおにぎりに、一体どれ程の価値があるかを考えもしなかった己が許せない。


「済まない。

・・本当に済まない」


紫桜に向かって深く頭を下げる和也。


「お気になさらずに。

全ては何の力もない、わたくしの不徳の致す所。

お恥ずかしい限りです」


「恥ずかしい?

違う!

それは断じて違う!!

本当に恥ずかしいのは、己の欲の事しか考えず、抵抗できない者達から暴利を貪り、苦しめる事だ!

その場所の事を陸に考えもせず、脳天気に出されたおにぎりを頬張っていた自分の事だ。

君は己を犠牲にしてまで、弱き者達を守っている。

誇る事はあっても、決して卑下する事ではない!!」


普段の緊張感に欠けた、摑み所の無い和也からは想像もできない程の力強い口調に、側にいた三人が驚く。


自分に感じた怒りをそのまま言葉にぶつけてしまった事に気が付いて、和也は気不味そうに視線を逸らした。


「大体分った。

では、この空いている蔵に、物資を置いても良いか?」


「?

良いですけど、何も持ってないではないですか。

・・もしかして、収納の魔法が使えるのですか?」


「そうだ」


そう言うと、和也は宙を向き、少しの間、何かをしているような仕種を見せた後、右手を伸ばし、自らの収納スペースに保管した物資を出していく。


米10トン、砂糖、塩共に1トンずつ、味噌、醤油、みりん共に20樽ずつ。


これで、1つの蔵が一杯になる。


次の蔵に行く。


大吟醸10樽、清酒30樽、海苔、鰹節、昆布、胡椒、七味各30㎏、林檎、蜜柑、其々20箱。


それに、海で採った魚を90匹ほど付け加える。


とりあえず、ここまでにしておく。


自分の情けなさに少しキレてしまった和也は、先日購入した分に、自らの力で創造した物資を大幅に足して、怒りのままに放出した。


丹精込めて作られた、生産者達の思いの籠った品には及ばぬかもしれないが、購入したものの成分を分析し、全く同じものを創る事で、とりあえずは自分を納得させる。


見ていた三人は、呆然として、声も出ない。


やがて、我に返った三人が、大慌てで蔵に納められた物資を検分していく。


蔵の中にうず高く積まれた袋が皆、米や塩、砂糖である事に驚き、醤油や酒の樽があるのに歓喜し、果物や魚といった、普段口にできない食べ物を見て、微笑んだ。


細かい事まで気にする和也が、物資を収納する際に、長く使われていなかった蔵の内部に浄化の魔法を掛け、食材が傷まないように、腐り易いものに時間凍結の効果までつけていた事は、言うまでもない。


「貴方、本当に何者なの?

もう聴かない約束だったけど、こんな大量の物資を保管できる魔力も、これだけの物を買い揃えられる資力も、並大抵ではないわ」


「・・済まんがもう少しだけ待ってくれ。

時が来たら、必ず話すと約束する」


紫桜がじっと和也の目を見る。


「いつものように、ノーコメントとは言わないのね。

・・良いわ。

それまでは我慢してあげる。

それから、・・有難う。

本当に、有難う」


静かに和也に抱き付いてくる彼女。


いつもなら、決してそんな事を許さないであろう、あやめ達二人も、この時ばかりは何も言わずに、静かに二人を見つめていた。


夕食に、皆に食べさせたいものがあると和也は三人に伝え、その時には源と、残りの精鋭とやらを呼ぶように言って、一旦屋敷を出る。


紫桜の言質を取った和也は、川沿いの荒地に佇み、己が魔力を発動する。


岩や小石が粉々に砕け散り、粉状になる。


現れたむき出しの硬い地面を深く掘り起こし、魔力で創った大量の腐葉土と、粉状になった石をよく土と混ぜ、そこに、岩を砕く前に予め除去しておいた、多くの虫達を放す。


周囲を木製の柵で囲い、鶏達が身を休める鶏小屋を作り、逃げられないように敷地全体に結界を施して、今はまだいないが、人や外敵からも守れるようにしておく。


柵には看板を付けた。


『御剣養鶏場』


適度な湿り気を与えたその1000坪の敷地に、粟や稗など鶏の餌になりそうなものを撒いて、手に入れた阿波尾鶏20羽を放す。


オス5羽、メス15羽。


眠りを解かれた鶏達が、広い敷地を自由に歩き回り、虫や餌をつつき始めた。


これで良し。


あとは、できるだけ沢山の卵を産んでくれれば良いだけだ。


それまでの暫くの間は、購入したもので遣り繰りしよう。


そう考えた和也は、卵を買い、養殖に使う川魚を獲りに、地球に出向いて行く。


1時間程度で戻った和也が、養鶏場の隣に、すぐ側の川の水を引き入れた循環型の大きなため池を造り、獲ってきたイワナやヤマメを200匹程度放流して、ため池全体を結界で覆う頃には、日の沈みが早くなった空に、夕焼けが現れ始めていた。



 (とある世界の農家)


 その日も大量に売れ残った新鮮な野菜や卵を前に、若い夫婦は長い溜息を吐いていた。


農業に憧れ、都会から仕事を辞めて田舎に移り住み、早4年。


自治体から、5年住めば無料で貰えるという広い土地を譲り受け、二人で米や野菜を作り始めたが、無農薬の有機栽培に拘り、害虫の駆除に地鶏も飼い始めた。


土地の広さに応じて十数羽を購入し、最初はその卵を喜んで自分達で食べていたが、次第に毎日食べても余るようになり、他の野菜も売り上げが伸びなくなってきた。


お互いにそれなりの収入があった仕事を辞め、やりたかった農業を始めたのには、テレビで連日、各地の道の駅が紹介され、そこに毎日沢山の客が買いに来ているのを見て、これなら十分採算が取れそうだとの考えがあった。


しかし、そう上手くはいかなかった。


夢が叶うという思いが強過ぎて、陸に現地調査もせずに、ど田舎に移り住み、見よう見まねで始めたは良いが、幾つもの誤算が重なり、生活が立ち行かなくなってきたのだ。


最大の誤算は、自分達の住む村の周辺に、道の駅が無かった事である。


道路があれば、田舎の何処かにはあるだろうと高をくくって住んでみたら、1番近い道の駅まで50㎞近くあった。


初めの内は、仕方がないので毎日そこまで車で運んだが、往復2時間半もかかる上、ガソリン代を引くと、1日3000円の利益にもならなかった。


周りに幾つもの農家がある上、同じような商品ばかりで値段を安くしないと売れず、最近は売り上げが更に落ちてきた。


近所(隣の家まで100ⅿくらいあるが)の人に話を聞いて、農協に入ろうとしたり、農園の側に無人販売所を設けて売ろうとしたり、ホームページを作成してネットで販売しようと試みたが、農協では、色々と作物に対する注文や規制が多く、自分達の好きに作れずストレスが溜まりそうだし、無人販売では、売れた野菜の代わりに別の野菜を置いていかれて、ネットでは、知名度もなければ、配送料が値上がりし、野菜の値段が倍近くになってしまい、全然売れなかった。


二人の貯金が底をつき始め、あと1年で土地を貰えるという時に、農業を諦め、引っ越すかどうかの決断を迫られていた。



 二人は、この土地での生活が気に入っていた。


コンビニすら無い、人口三千人程度の年寄りしかいない村だけど、自然に囲まれ、空気や水は奇麗だし、長閑で、何より都会のように、日々時間に追われて生活せずに済む。


仕事先へ急ぐあまり、他人を押しのけて赤信号の歩道を渡り、ぎゅうぎゅうの満員電車に慣れてしまったせいで、人にぶつかっても謝罪すらしないのが当たり前になってしまった自分達に嫌気が差して、ここに移り住んだ。


お金を稼ぐのは大事だが、人としての大切なものも失いたくはない。


病院に行くのが半日がかりでも、欲しいものを買うのに通販しか手段がなくても、子供が生まれたら、学校まで20㎞の道のりを毎日送迎しなくてはならなくても、生活さえできれば、ここに住みたかった。


女性が、無人販売所に陳列した、ほとんど何も売れなかった商品を引き揚げようとした時、見知らぬ男から声がかかった。


「ここに『卵あります』と書いてあるが、それはもう売れてしまったのか?」


振り向くと、黒ずくめの衣装を身に纏った、若い男が立っていた。


自分達の他には、年寄りしか住んでいないこの村の住人ではないのは明らかだが、近くにこれといった観光施設がある訳でもないのに、一体何処からやって来たのだろう。


「卵は傷み易いので、冬以外は家に冷蔵してあるんです。

宜しければお持ちしますが、何個くらいご入用ですか?」


「全部欲しい」


「全部ですか?

今日採れたての物は10個しかありませんが、4日くらい経ってしまった物でも宜しければ、32個までお売りできますが」


「全部貰う。

それと、そこに並んでいる野菜も全部買いたい。

余っている野菜があるなら、それも全部買う」


黒いサングラスをかけてはいるが、少年にしか見えない男からの、願ってもない要求に、飛びつきたくなるのを我慢して、一応、確認だけはしておく。


「失礼ですが、それですと20万円近くになりますが、お金は大丈夫でしょうか?

うちは、カードは使えませんが」


「大丈夫だ。

これで良いか?」


男はジャケットのポケットから100万円の束を取り出して見せる。


「・・はい。

疑ったりして済みませんでした。

直ぐにお持ちしますが、お車はどちらに?」


「後で迎えが来る事になっている。

申し訳ないが、卵は紙でできた専用容器に、野菜はダンボールに入れて纏めてくれないか?」


「それは構いませんが・・。

少々お待ち下さい」


農園主の妻は家へと戻って行く。


倉庫で売れ残っている野菜を見て、溜息を吐いている夫に声をかける。


「あなた、今、お客さんが来たのだけれど・・」


「客?

無人販売のか?

それがどうかしたのかい?」


「全部欲しいって」


「全部?

良かったじゃないか。

久々に利益が出るな」


「違うの。

ここにある、売れ残りの野菜も、冷蔵庫の卵も、全部」


「・・本当か?

何処かの旅館か食堂かな?

何れにしても、・・良かった。

これで少しは持ちこたえられる。

急いで準備しよう。

もしかしたら、今後も買ってくれるかもしれないし」


「それがね、まだ子供、ううん、高校生くらいにしか見えないんだけど」


「はあ?

お金は持ってるのかな?

カードは使えないと説明したかい?」


「ええ。

100万円の束を持ってたわ」


「・・僕も話をしてみよう。

とりあえず、待たせて帰ってしまわないように、準備を急ごう」


「そうね」


二人は急いで野菜を詰め始めた。



 「遅くなって済みません。

こちらで全部になります」


20分後、二人共、野菜を沢山詰め込んだダンボールを何十も乗せたリヤカーを引いて、少年の前までやって来る。


無人販売所の前で、手持ち無沙汰に待っていた少年に、農園主の男性が話しかける。


「今回は大量にお買い上げ下さり、本当に有難うございます。

当農園へは初めてのお越しだと思いますが、どちらでお知りになられたのかをお尋ねしても宜しいでしょうか?」


「・・以前、ホームページを見た事があってな。

この近くに来たので、寄ってみようと思ったのだ」


「そうでしたか。

ご指示通り、ダンボールにお纏め致しましたが、お車に入りますでしょうか?

60箱近くございますが」


「大丈夫だ。

迎えが来るまで少しここで待たせて貰うが、構わないだろうか?」


「それは勿論。

それで、代金の方ですが、19万2800円になりますが・・」


少年は男性に20万円を渡しながら、尋ねる。


「時に、今後も定期的に買いたいと考えているが、どんな野菜を作っているのだ?」


「当農園は、無農薬の有機栽培のみを行なっており、栽培する野菜は季節ごとに異なります。

カボチャ、大根、ナス、白菜、キュウリ、サツマイモ、トマト、キャベツなどが主力の商品ですが、色々試している段階なので、今後も増える可能性があります」


少年からの期待していた言葉に、内心で大喜びしながら、気合を込めて説明する男性。


「次にこちらに伺うのは、大体1か月後になる。

その時に、できれば契約を交わしたい。

内容は、この農園の作物を、月に20万円分、向こう2年に亘って買い取るというものだ。

農作物の種類や数は、そちらに任せる。

全て宅配で、指定先まで送ってくれ。

支払いは銀行振り込み。

2年以後は、お互いが了承すれば、2年ずつ、更新したい」


「・・大変有難いお申し出ですが、私どもの農園の作物をお買い上げいただくのは今日が初めてのはず。

なのに、そのような好条件をご提示いただける理由が分りません。

ご説明いただいても宜しいでしょうか?」


あまりの好条件に、少し疑心暗鬼になる男性。


女性の方も、不安そうな顔をしている。


「農園の作物を手に取り、その作っている様を確認して、農園全体を見渡せば、買うに値する品物だと理解できる。

お金という利益だけを追い求めたものではなく、作り手が試行錯誤を繰り返し、理想を追い求めて、日々土と対話をしている事が伝わってくる。

何より、人としての品位を大事にしたいと願う、若い夫婦を応援したかった」


「「!!」」


「車が来たようだ」


田舎の舗装もされていない道を、1台のトラックが走り寄って来る。


目の前で止まり、降りてきた中年の男は、黙ってダンボールを荷台に積み始めた。


あっという間に積み終わり、そのトラックの助手席に乗り込んだ少年は、何かの衝撃を受けて黙ったままの夫婦に声をかける。


「では失礼する。

契約の件、考えておいてくれ」


そう言うと、トラックは走り去る。


残された二人は、暫く呆然とした後、声に出す。


「どうするの?」


妻の言葉に夫が答える。


「お願いしてみよう。

悪い人には見えないし、今は、これまで以上に農業を楽しみたい気分なんだ。

納得のいくまで拘って、精一杯頑張って、彼を満足させる作物を育てたい。

君も、そう思わないかい?」


「・・考えている事は同じね。

今日の夜は、久々にご馳走にしましょう」


二人は穏やかに微笑み、家へと戻っていった。



 「兄ちゃん、本当にこの辺りで良いのか?」


人気のない場所まで来ると、トラックの持ち主は、少年に声をかける。


「ああ。

有難う。

荷物を降ろすのを手伝ってくれ」


中年の男は、こういう作業に慣れているのか、実に手際良く荷を降ろしていく。


「約束の後金あときんだ。

助かった」


そう言って、少年は男に2万を渡す。


「有難うよ。

こっちも良い商売をさせて貰ったぜ」


トラックの持ち主は、上機嫌で走り去っていく。


それを見送ると、和也は道端に積まれたダンボールを収納スペースに放り込む。


魔法を人前で使えないと、本当に面倒だな。


5㎞先のスーパーで、荷を降ろし、荷台が空になったトラックを見つけ、その運転手に4万でバイトをしないかと誘った和也。


話が旨過ぎると訝る男に、前金の2万を払って信用させ、どうにか事無きを得た。


でもまあ、卵を買う序でに、常識と意欲のある若者達に手を貸せたのだからと、満足しながら紫桜のいる世界へと帰って行く和也であった。

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