第4話
優月視点
《最後の龍である白龍アジ・ダハーカ討伐により、世界の意思から報酬が贈られます。》
《最後の龍である白龍アジ・ダハーカ討伐により、世界の意思から祝福が贈られます。》
《最後の龍である白龍アジ・ダハーカ討伐により、一部のエラーが世界から消滅しました。》
《スキル黒雷魔法がユニークスキル黒雷として再登録されました。》
《ユニークスキル
《権能神魔黒練気が龍装の龍気、竜気、鬼気を取り込み権能星命力へと進化しました。》
《対象十六夜優月のレベルが百に到達しました。これにより、種族進化します。進化する種族の選択が可能です。選択してください。》
そこまでアナウンスが流れたところで、進化先を選択する前に、『
これにより白龍の持っていた能力の全てが僕の力へと変わった。
《ユニークスキル破魔を獲得しました。》
《ユニークスキル四重奏を獲得しました。》
《トランスドスキル掌握者が権能に概念進化しました。》
《マスタースキル神聖属性魔法とクラススキル聖者がトランスドスキル聖天に統合進化しました。》
《マスタースキル虚空属性魔法がトランスドスキル虚空支配に進化しました。》
白龍から得たエネルギーは僕の中で新たなスキルとなって僕の力へと変化した。
また、白龍の神格も龍装に取り込まれ、これでまた一層強くなったと言っていい。
そして、黒龍を討伐した時以来、久しぶりのウインドウが開く。
黒龍以降は出てこなかったが、アナウンス通り最後の龍である白龍を討伐したことが理由だろう。
____________________
報酬
・魔導石…強大な魔導術式が込められた特別な石。
祝福
・全能力の統合と融合そして最適化。
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前回のとはまた随分と違った感じだ。大抵はこういう場合装備品やスキルが渡されるのだが、今回は異質な感じの報酬と祝福だった。
よく分からないチョイスだが、世界の意思はこれが僕に必要なのだと言っているのだろう。
前回も思ったが、その時に都合の良いものを世界の意思は僕に授けてくれる。それは《合成》という強い装備を作る上で欠かせなかったスキルだったり、自身の最強の装備である天朧の強化だったりと、あの時の僕にとって必要な力をくれる。
ということは恐らく今回もこれらが必要になると世界の意思は考えて僕に授けたのだろう。
一先ず出現した魔導石を手の平で受け止めてからどのような魔導術式が込められているかは後で確認するとして、次の祝福はまだ受けられないようだ。
ウインドウからの情報によれば、その時が来れば申請が来て、それを受諾すれば自動的に開始されるらしい。
そして今はその時ではないようだ。
僕は次に種族進化についてのウインドウに移る。そしてそこで目にしたのは、多岐にわたる種族だった。
これまで数回の種族進化をしたが、なぜか進化を重ねるごとに進化先の種族の種類が増えている。
これは本当によく分からないことだった。
「これにするか………」
長考の末、僕はその中でも特に目についたものを選択して進化を開始するのだった。
……………
…………
……
…
進化後、新たにクラスを選択しておく。ここからはいつ地球に帰還できるか分からない。正確に言えば、どのタイミングでセレーネ様が帰還させてくれるのか分からない。
そのため地球ではクラスが選択できない可能性も考慮して、今のうちに選んでおいたのだ。
その後は僕は未だに残る白龍の死体が少しずつ光の粒子になるのを見たあと、そのドロップ品を回収した。
どのような理由かは検討がつかないが、龍や竜、鬼は討伐すると迷宮内のようにその身体を粒子に変えて、ドロップ品を残して消え去るのだ。
これの仕組みに関しては全くもって分からない。
取り敢えず、白龍のドロップ品を全て回収すると次に自身の装備を整えてからその場を去るのだった。
僕が白霧の森から出るとそこにはこの地の領主がおり、彼らの案内で休みながらゆっくりと王国までの道を進むことができた。
加えて道中は豪華な食事や甲斐甲斐しい世話も焼いてくれた。
どうやら彼らも白龍に怯えて過ごしていたらしく、大層感謝された。
これはそのささやかなお礼でもあるらしい。
その後、王国に着くとすぐに役人さんが来て王城へと案内された。
久しぶりに入った王城はなんだか人がとても多くて、とても忙しそうだった。
このことを役人の人に聞いても知らないの一点張りだ。だけど、僕の権能が嘘をついていることを見破っていた。
しかし、それを問い詰めることはできない。あまり深入りしても面倒なことが多いのだ。そのまま装備を外して儀礼服に着替えさせられ、僕は全ての装備を外されることになった。
流石にそれには抵抗を示したのだが全く取り合ってもらえず、有無を言わさぬ感じだった。
そんな態度に僕も不信感を持つ。しかしこの国はエレオノーラさんのいる国だ。
だからこそ僕は簡単にこの国に手を出そうとは思わないし、流石にこの国全部を相手にするのは骨が折れる。
基本的に数は多ければ多いほど強いのだ。
僕は念の為の準備はしておくと、後は役人さんの指示に従って待機することにした。
それから一時間程度経った頃、ようやくお呼びがかかる。王への謁見をするのだ。
謁見の間には以前に来た時よりも多くの貴族が参列しておりその奥に、王と王太子、そしてエレオノーラさんを除いた王族がいた。
謁見は滞りなく進み基本的には僕に対する褒賞や贈り物、貴族位などが授与されるだけだった。
僕は恐らくはそろそろ地球へと帰還するので、正直貴族位などは全くいらなかったが受け取らないのも問題になると考え、拒否を申し出ることはしなかった。
その後全ての段取りを終え謁見の間から退場し、その後は大広間でのパーティーが開催された。
勿論その内容は最大の脅威であった龍や竜王、鬼王の消滅を祝うものであった。
広いパーティー会場では沢山の貴族と使用人がおり、会場内で談笑したり飲み物や食べ物を運んだらしている。
そんな中、国王が前へと出てくる。
「今日はよく集まってくれた!今宵は我々を苦しめていた大敵、龍どもの全滅を祝した宴だ。皆、存分に楽しんでくれ。
そして今回の最大の功労者であり、龍どもを全て討ち倒した英雄、ユヅキ・イザヨイを讃えよう!
ユヅキ、前へ。」
国王に促された僕は広間の奥から国王の前へと歩いていく。そして謁見の時のようにその場で跪く。
「よいよい。この場の主役は其方だ。立ってくれ。」
国王のその言葉に僕は立ち上がり一礼する。そして顔を上げその顔を見た時、その顔に溢れる邪気に嫌な感じがする。
「それではこれが其方への褒美だ。受け取るが良い!」
その言葉とともに四方から僕に向けて数十人が飛びかかってくる。
今の僕は装備品は右目の眼帯以外を全て預けているが、天朧もあるし、神装もある。それに《黒雷》も使える。
この程度ならばどうとでもなる。そう考えた僕は、しかし天朧は召喚できず、神装も反応しない。さらには全てのスキルと権能が一切発動しなかった。
「?!」
そしてその数瞬の驚きと戸惑いが命取りだった。
四方から飛びかかる者たちへの対処が遅れ、結果として四本の剣が僕を貫いた。
「ぐっ」
熱い痛みの感覚が僕を襲うが、それしきのことなどもう気にならない。
僕は素早く魔力を操ろうとしたがどうやら魔力もダメらしい。
全スキル、全魔法、装備品、魔力、神装、龍装、僕の主な戦闘手段が全て使えないようだ。
恐らくは結界系の何かだろうが、それにしては相手はスキルを使っているように見える。
どうやら僕だけが全てを封じられているようだ。それに神装まで封じられたのは予想外だった。
仕方なく僕は素手のまま手刀を放つ。レベルの上昇と種族補正による身体能力の高さは封じられていないため、その高速かつ高威力の手刀が四人の襲撃者に叩き込まれる。
彼らは一様に後ろに飛んで威力を減衰しようとしたが、僕の力の前には無意味で全員が首の骨を折られて死んだ。
さらに僕は体に刺さった四本の剣を引き抜いて、自分の武器とする。
剣は上等な鋼鉄の剣だ。これならそれなりに使えるだろう。
「王よ!これはどういうことか、説明していただこう。」
僕の問いかけに王は僕が死んでいないことに動揺を見せつつも、しかし余裕そうな顔で宣う。
「どうもこうもないわ!貴様は危険だ!今ここで排除することが決定しておるのだ!そのために、我が国だけではなく帝国と神聖国の全戦力がこの王都に集っているのだ。
最早貴様に勝ち目などないと知れ!」
どうやら王の余裕はこれのようだ。その王の隣には法衣を纏った初老の男と赤いマントを羽織った威圧感のある男がいた。恐らくは教皇と皇帝だろう。
そしてパーティー会場には七人の軍服を着た男女と恐らくは最高ランク冒険者と思われる三人が現れる。
その中に見知った顔がいる。
最高ランク冒険者である彼ら三人とは龍殺しの旅の間に数度会ったことがあるのだ。
「ふん、貴様がどれほど強かろうと我が帝国で生み出した七人の人工勇者の前には勝てるまい。それに世界に三人しかいないSSSランク全員もおる。加えて我が国の精鋭に、神聖国の聖騎士団、王国の騎士団、そして高ランクの冒険者達、これだけいればお主も勝てるはずもない。
むしろこの状況では不利だろう。何せこちらには龍装もあるのだしな!」
帝国の皇帝は饒舌に喋ると最後に龍装を持っていると言う。
そのことに僕はすぐにどういうことかピンと来た。
「そうか…無龍の龍装か。」
僕がこの世界に来る前に既に倒されていた龍。その時現れた龍装は帝国が所持していたらしい。
「そうだとも!あれの能力は《創造》。それのおかげで、七人の人工勇者を作り出したのだ。そしてさらにはその固有能力である『
流石のお主も、全ての能力が封じられれば残りはその無駄に高い身体能力のみ。
強力な装備も全て我らの手にある。お主に勝ち目などないのだ!」
皇帝は勝ち誇ったような笑みを浮かべ、国王も同様に笑う。さらに教皇はもっと悪魔のような笑みを浮かべて口を開く。
「ふふ、しかも無龍の龍装は使用者が死んだ場合、次は誰でも使用できるのです。しかし、逆に言えば使用者が死ななければ、永久に使用を停止できない。
そして、今の使用者は彼女です!」
そう教皇が高らかに声を上げると、彼らのいる広間の上の奥から一人の女性が連れてこられる。
「あっ……。」
それは紛れもなくエレオノーラさんだった。しかしその姿はいつもの輝きがない。
サラサラで日に照らされて黄金に輝く金髪はくすみ、透き通った碧眼は曇り、陶器のような白い肌には無数の傷が刻まれている。
先程から姿が見えなかったのはこれが理由のようだ。
「彼女は君と仲が良かったようではないか。だから彼女には無理を言って龍装を使用して貰ったのです。君は彼女を殺さないと十全には戦えない上にほぼ死亡確定となります。ですが、君は彼女を殺せますか?」
僕の頭の中では多くはないが印象的な彼女との思い出が過ぎる。確かにこの状況では生き残るにはエレオノーラさんを殺すのが最適だろう。
しかし、両親が殺された記憶が頭を過り、それに連動して僕の中の復讐心が燃え上がる。
(コイツらは父さんと母さんを殺したあの男と同じ、生きてちゃいけない類の奴らだ。)
エレオノーラさんと共に育てていた僕の小さい感情の蕾が怒りという感情を芽吹かせた。
芽吹いたばかりの怒りという感情に任せて殺気を全開にして奴らを睨む。
その殺気に奴らは一瞬気圧されたようだが、それを隠して全ての配下と冒険者に命じる。
「「「全軍、奴を殺せ!」」」
それとともに僕は王城から離れた王都の市街地に転移させられる。
そこには既に多くの騎士や聖騎士、兵士、魔法使い、冒険者らが揃っていた。
「全員殺す。」
僕はそう呟くと、この圧倒的不利の中勝利のため、救出のため、一歩前へと踏み出していった。
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