第12話



優月視点



ニーズヘッグが光の粒子となって消えると同時に、目の前にその粒子が集まって、天朧に吸収されていった。


どうやらこれで龍装を獲得したらしい。詳細は後で確かめるとして、僕は発動していたスキルや能力を解除して、倒れ込む。


途端に《限界突破》や『百頭竜の一斉攻撃』、その他酷使したスキルの反動が身体と脳を襲う。


僕は『毒竜の再生力』を発動させると身体の傷を治していく。しかし、やはり右目だけは治らないようだった。


それもしょうがないと思いつつ、僕は少しの間寝転んだままぼーっとしていた。


ふと、そう言えばアナウンスがないなと思う。


『それは俺が止めてるからだぜ我が王。』


僕の思考を読み取ったのか、ヘラクレスが疑問に答えてくれる。


『そうなんだ。でもそんなことできたんだ。』


『まぁな。これでも神の端くれだ。その程度の干渉はお手のもんなわけよ。』


『それもそうか…それじゃあ悪いけど、少しの間アナウンスを止めるのを頼むよ。』


『任せとけ!』


僕はヘラクレスにそう頼むと、多大な負担により悲鳴を上げている身体を地面に投げ出して回復するのを待った。




それから少し経ち、起き上がれるようになった僕はまず、完全に破壊されてボロボロになった服を着替え始めた。夜天一式はスキルや特性全てがニーズヘッグにより破壊されているため、使い物になっていない。


刀の方もルドラの消滅とともに、その刀身の半ばから真っ二つに折れている。


今の僕は上半身は服の下に着ていたインナー一枚で下半身は、ボロボロになったズボンを履いていた。


《アイテムボックス》から予備の服を出して着る。汚れが移ってしまうが、《生活魔法》はもうないので仕方ないだろう。


着替え終えたら次にニーズヘッグのドロップ品を確認することにした。


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黒龍の黒爪


レア度 : 幻想級


黒龍の爪。物凄い量のエネルギーを秘めており、加工できるのかすら定かではない。


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黒龍の龍鱗


レア度 : 幻想級


黒龍の鱗。非常に高い強度を誇り、その強度は金属すらも遥かに凌ぐ。


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黒龍の皮膚


レア度 : 幻想級


黒龍の皮膚。高い強度に加えて、柔軟性もある。


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黒龍の心臓


レア度 : 幻想級


黒龍の心臓。膨大なエネルギーを秘めている。


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黒龍の龍核


レア度 : 幻想級


黒龍の龍核。黒龍の力が凝縮されて秘められており、その量は心臓を遥かに超える。


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これがドロップ品だった。これは今後の良い素材になるだろう。


ドロップ品の回収が終わると次にアナウンスを止めていたのを解除してもらう。


『それじゃあお願い。』


『了解だ。』


その瞬間、頭にアナウンスが流れ込んでくる。


《黒龍ニーズヘッグ討伐により、世界の意思から報酬が贈られます。》


《黒龍ニーズヘッグ討伐により、世界の意思から祝福が贈られます。》


《黒龍ニーズヘッグ討伐により、一部のエラーが世界から消滅しました。》


《スキル闘気がスキル練気に進化しました。》


《スキル空間属性魔法がマスタースキル虚空属性魔法に進化しました。》


《スキルアイテムボックスがスキルディメンションボックスに進化しました。》


《スキル操糸術がスキル上級操糸術に進化しました。》


《マスタースキル感知と看破がトランスドスキル掌握者に統合進化しました。》


《魔力が神気による影響を受けたことで、スキル練気とマスタースキル魔素操作を加えてトランスドスキル白銀練魔に統合進化しました。

白銀練魔に神気、気功が加わり、概念進化をしました。

白銀練魔の権能を獲得しました。》


《トランスドスキル劍帝が概念進化しました。これにより、剣神の権能を獲得しました。》


《対象十六夜優月のレベルが百に到達しました。これにより、種族進化します。進化する種族の選択が可能です。選択してください。》


色々と知りたいことは多かったが、取り敢えずは種族進化というものを見てみる。


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進化先


1.高位人族…人族の上位種。人族の正統進化であり、すべての面において人族を上回る。


2.仙人族…人族の長命種。人族の派生進化であり、寿命がずば抜けて長い。


3.天使族…神気を扱う人族?人族の特殊進化であり、神に少し近い種族となる。


4.龍人族…龍の因子が混じった人族?人族の特殊進化であり、龍の力を宿す。


5.幻想人族:吸血鬼…夜を支配する人族?人族の変異進化であり、幻の種族。圧倒的な力を持つ。



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(結構あるな。)


僕はそう思いながら、真剣に考える。

まずは仙人族は外す。寿命が長くなるというこの種族最大のメリットは正直僕には必要ないものだ。

他は天使族と龍人族は要らないだろう。これも神装と龍装が有れば、十分だ。


あとは高位人族か幻想人族だが、幻想人族:吸血鬼は夜を支配するというのが、魅力的だ。僕のスキルは夜有利な部分があるので、上手くすれば、大きく強化できるだろう。

しかし、吸血鬼と言えば、その強さの反面、弱点も多い。特に日光を浴びれなかったら、今後生きづらさを感じるだろう。


その点、高位人族は際立った特徴もなければ、デメリットもない。まあ、無難な選択と言えるだろう。


『我が王。幻想人族というのは超稀少種族であり、最強の種族の一角だぞ!それ一択だろう。』


僕が悩んでいると、ヘラクレスがそう言ってくる。神がこういうということは本当に強いのだろう。


『具体的にはどのくらいの強さなの?』


『うむ、幻想人族のそれぞれの種族の得意とする環境や場所ならば、一対一で、上位神とも渡り合えるほどだぞ!』


『でも、デメリットがあるんじゃないの?』


『確かに軽い弱点は持つことになるだろうが、ベースは人だ。そんなに大きな弱点にはならんよ。実際に我が見たことのある幻想人族もそうだったしな。』


ヘラクレスの話を踏まえるに、恐らく深刻なレベルでの弱点を抱えるわけではなさそうだ。

僕は今までの話や考えをまとめて、決断する。


「よし、幻想人族:吸血鬼にしよう。」


《対象が種族選択をしました。これより、進化を開始します。》


その途端強烈な眠気が来て、僕は自分が地面に倒れたのを自覚したのを最後に、意識が途切れた。

……………

………


《告。これより対象の種族進化を開始します。

身体組織の再構成開始…

これまでのレベル及び経験値を媒介として使用…完了。 

身体組織の再構成…完了。

魂の再構築開始…

対象の魂の損傷が深刻なため実行できません。

…上位者の介入を確認。対象の魂の損傷が回復。

魂の再構築を再開します…失敗。…契約スキルを確認。スキルの最適化を開始します…完了。

魂の再構築再開…完了。

意識体の再構築開始…完了。

身体の最適化を開始…完了。

プールしていた経験値の反映…完了。

以上で進化を終了します。

加えて、全世界の意思に種族登録が完了しました。》


……………

………

……



僕は目を覚ますと身体の変化を確かめる。どうやら際立って変わった点はなさそうだ。強いて言うならば犬歯が少し鋭くなっているところだろう。あとは、赤のメッシュがあった前髪が、黒く染まっていた。


軽い確認をしたところで、次はステータスを確認する。


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名前 : ユヅキ イザヨイ

年齢 : 13

性別 : 男

種族 : 幻想人族:吸血鬼▼

職業 :月天ノ劍帝/

Lv : 34

魔力量 :12190/12190

魔力純度 : 12190

魔力強度 : 12190

技量ランク : SS


権能 : 剣神 隠殺 神体 白銀練魔


スキル : ディメンションボックスlv.1 上級操糸術lv.1


マスタースキル : 魔銃術lv.4 錬金術lv.1 神聖属性魔法lv.4 虚空属性魔法lv.1


トランスドスキル:掌握者lv.2 


ユニークスキル : 天神ノ才 勇者ノ心 


クラススキル :


加護スキル : 慈愛の加護 勇者王の加護


種族スキル : 眷属契約 十の血盟


称号 : 異世界の英雄 月の女神の寵愛 到達者 神滅の剣士 幻想種 龍殺し 



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・ディメンションボックス: 異次元に道具等を収納できる。ただし、生きているものは入らない。容量は魔力強度に依存する。また中の時間は現実の六分の一となる。


・上級操糸術 : 糸を自在に操れる上級者。


・虚空属性魔法…空間系最上位の魔法。空間に干渉することに特化した魔法を使える。


・掌握者…全てを把握する者。その探知と看破から逃れられるものはいない。

lv.1:真実看破…どんな物事、事象でも真実を見破ることができる。

lv.2:識別…探知した生物、物に対して看破などをかけることができる。


・神滅の剣士…神を滅した剣士への賞賛。

神格保持者との戦闘時全能力上昇(超)


・幻想種…幻想種に対して贈られる証。


・龍殺し…龍を殺した者へ贈られる証。

龍との戦闘時全能力上昇上昇(大)


種族スキル…種族固有のスキル。


・眷属契約…自身の血を媒介に生物と契約できる。契約した相手は眷属となり、主人の種族特性をいくつか得ることができるなどのメリットがある。


・十の血盟…自身の眷属から適正関係なく十個までスキル、種族特性を借り受けることが出来る。ただし、眷属は主人に貸したスキル、種族特性を使用できる。


権能…スキルの枠を超越した能力。


・剣神…剣術スキルを超越した能力。概念も法則も何もかもを斬ることができる。


・隠殺…隠密、暗殺スキルを超越した能力。誰が相手でも探知されないほどの隠密、暗殺が可能。


・神体…強化、耐性、基礎スキルを超越した能力。その身体は万能である。


・白銀練魔…魔力、神気、闘気、気功が融合して超越した能力。万能の力であり、計り知れないほどの可能性を秘める。



次に種族の横にある▼から種族特性を見る。


種族特性…種族の特性で、スキルではない。

・不老…自身の自由に老化を止めることが可能。しかし、一度止めたら二度と変えられない。

・吸血…血を吸うことで自身の身体能力が上昇。取り込んだ血を体内に貯めることができる。

・再生…血を消費して身体の再生ができる。

・変化…自身の体を変化させることができる。

真血エギエネス・エマ…様々な効果を持つ血を操ることができる。吸血鬼の特別な血。

・蠱惑の瞳…目があった者を自身の虜にしてしまうことができる。

・夜王…夜間全ての能力が飛躍的に上昇。(日光の下では能力が低下→《神体》により解消)


これで全て見終わった。やはり、とても強い種族のようで特に特性は強力な一言だった。弱点の方も消えていて幸運だった。それと、身体関連のスキルは全て《神体》に統合された。


また、MPが種族進化したことにより、レベルアップした分を除いて増えていた。


次に水晶を取り出してクラスに就く。今の僕は〔月天ノ劍帝〕が二つ分、消えてしまった〔武の英雄〕が一つ分のため、レベルがリセットされる前の時点で一つ就くことができる。さらに、リセット後はレベルゼロの状態の時に一つと三十の時に一つで、合計三つ就くことができる。

 

水晶で就けるクラスを見ていく。因みに一つはすでに決めてある。

〔錬金術師〕のクラスだ。錬金術師は素材と魔力が有ればそれを合成して、整形して物を作り出せる。生産系クラスの中でもトップクラスだ。そして特に防具や道具を作ることに優れている。特性やスキルが付加できるのだ。


また、武器は作れるが、やはり本職の鍛冶師の方が良いものを作れる。


〔錬金術師〕に就いたら、あと二つを考える。



考えた末この二つのクラスを選んだ。

一つ目は〔聖者〕のクラスだ。聖者は神官系の最上位で、聖女の男性版だ。これにより、より回復の効果と発動速度が速くなった。


二つ目は〔道化師クラウン〕だ。このクラスの特徴は軽業師のような身のこなしと《奇術》というマジックのようなスキルなどの意表をつくようなことができる戦い方だ。


このクラスは僕の戦闘の幅を広げてくれる。今までは真っ向勝負のような戦い方だったが、このクラスのおかげで、搦め手や奇策を使いやすくなり戦闘を有利に進めることができるようになるだろう。


クラススキル

〔聖者〕

・聖者…神聖属性の効果を増幅し、魔法の行使速度を上昇させる。また、多重発動を可能とする。

〔道化師〕

・演技…演技が上手くなる。

・道化の軽業…身のこなしが上手くなる。

・道化の手品…なんでも器用にこなすことができる。

・奇術…様々なトリックを使える。


奇術は本当に様々な技術や魔法的スキルを含んだスキルだった。特に符術に関する奇術や法則を無視したスキルなどもあり、とても強力なものも多かった。


僕は次に世界の意思からの報酬や祝福について確認する。そう思った瞬間に目の前にウインドウが現れる。



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報酬

ユニークスキル

・合成…物、スキル、クラス何でも合成して新たな物を生み出すことが出来る。


祝福

・『終夜幻刀 天朧』の進化


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どちらも受け取ると天朧が光出して一度消える。恐らく召喚待機状態になったのだろう。


《ユニークスキル合成を獲得しました。》


天朧は少しの間召喚できないようなので、その間にヘラクレスの迷宮の宝物庫に行き、何か良いものがないか見る。


宝物庫には色々なものがあり、片っ端から鑑定していく。素材系が多くあり、《錬金術》で良い物を作り放題だ。また、他にもスキルカードや装備品、金品があった。


僕はそれを整理だけすると、今日はもう休み、明日から暫くの間ここで装備を作ることに決める。


いつも通り野営の準備をしてから、《生活魔法》がないので水を水筒から出して体を洗い、簡単な夕食を済ませると、早々に寝袋に入る。


普段ならばすぐに眠りにつくことができるのだが、今日は目が覚めていた。

寝返りを打ちながら今日のことを振り返る。黒龍との死闘に加え、失くしていた記憶が甦った。そしてルドラが死んだ。


僕は半ばから折れた夜天を見ながら、何とも言えない、言語化できない気持ちが胸を満たすのを感じた。


それは今までに感じたことのない気持ち。地球で復讐に駆られた時、異世界で親友たちが死んだ時、組織で大切な人を殺した時、そのどれとも違った気持ちだった。


ただ、近しいと思ったのはグライと全力で試合をした時に感じた充足感だろう。戦闘であんな気持ちになったのはあれが最初で最後だった。


今回の黒龍との死闘も僕にその充足感を与えていたのだろう。そしてルドラが死んだことによるマイナスの感情が混じってもいる。


(こんな気持ち初めてだな…。だけど、これも一種の成長かもしれない。少なくともグライがいたらそう言うし。)


僕はその不思議な感覚に身を委ねるように力を抜いていき、そしていつの間にか静かに寝ていた…




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