第2話

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お久しぶりです!

勉強がやばいですが、次はできるだけ早く更新できるように頑張ります。


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優月視点



中に入ると一本道が真っ直ぐ伸びていた。躊躇いなくそこを歩いていくと段々と道の終わりが見えてきた。通路の先は大広間だった。そして広間の最奥に下への階段がある。後はそこまで行けばいいだけだ。


目の前に広がる魔物の群れを突破できれば。


広間の中は魔物で一杯だった。広間から出るのは無理らしく、魔物たちはうじゃうじゃと広間内に留まっている。しかもその種類は多様で種類の同じ個体は一つとしてない。しかも共食いと言っていいかは分からないがお互いにお互いを食い合っている。それはまるで蠱毒のようだった。既に強い個体もいくつもあり間違いなく進化をしているのがわかった。更に無限に魔物が湧くらしく魔物たちは食らいあっても減る気配を全く見せない。


僕は夜天を抜き新しく作った技の準備をする。広間の外に魔物が出てこないのをいいことに最大威力になるようにする。《空間属性魔法》の『ディメンション』という次元に干渉する魔法を刀に付与し、魔力を込める。更に《増幅》で威力を上げ、そこから《黒纏》を発動する。そして広間に足を踏み入れる。その瞬間数多の魔物の注意がこちらに向く。僕はそれに恐れず中段に構えた刀を横に一閃する。



黒く染まった剣閃が魔物の集団に飛び、真っ二つにする。魔物たちは体が上下に分かれそのまま死ぬものと再生を始めようとするものに分かれる。しかし再生持ちはその再生が発動せず死んでいく。


僕が放った技は俗に言う『次元斬』と言うやつである。次元ごと切ることで大抵の防御などは突破し、再生は意味を成さない。止められるとしたら同じく空間に干渉するか、圧倒的な防御力を誇るかのどちらかである。しかし今この場にはそんなレベルの魔物はいないため全てをなぎ倒せたのだ。



広間には無数の魔石が落ちている。僕はそれを全て《アイテムボックス》に入れると階段に向かう。


しかしやはりそう簡単にはいかないようですぐに魔物で溢れかえる。どうやら魔物を無限に召喚している魔法陣があるようだった。


湧いてくる魔物を夜天で斬り殺しながら、どんどん魔法陣のあるところへ近づいていく。近づくにつれて魔物の数は増えていくが、それらを全て斬り伏せる。《付与魔法》で身体能力を上げながら、魔物を殺していく。段々と出てくる魔物は強くなってくる。リザードマン、ゴブリンソルジャー、オークウィザード、ハイリザードマン、ポイズンワーム、ブラッティバットなどなど。いろんな種族の上位種や希少種が登場している。それでもその全てを一太刀で殺す。


そしてやっと魔法陣の前まで辿り着く。


夜天に魔力を流し魔法陣を切り裂く。途端に魔法陣はその効果を失い魔物の排出を止める。それと同時に夜天の《夜喰》が発動し、魔法陣から魔力を吸い取り始める。その量は膨大で咄嗟に魔封のブレスレットに魔力を流し込んでいく。魔力は止まることなく吸い込まれていく。


《スキル魔刃を獲得しました。》


《スキルポイントを獲得しました。》


吸収が終わると同時にそんなアナウンスが流れる。どうやら鬼装以外でもスキルポイントが獲得できるらしい。しかしまだこのシステムのことはよく分からない。スキルポイントが得られるからと言ってそれに固執することがないようにしなくてはいけないだろう。


また、《魔刃》は魔力を武器に流すことで、魔法や魔法陣を斬れるようになるスキルらしい。今までやっていたことがスキルになっただけのようだ。これにより《把握》を使わなくても良さそうだ。



僕は魔物が追加で現れないのを確認すると、後ろを振り返り残った魔物の殲滅を開始する。残ったのは上位種でも希少種でもない雑魚ばかりのため大して時間もかからず駆逐し終える。


終わったところで、階段の前で一度腰を下ろして一息つく。流石にこの量の魔物とやりあえばそれなりの消耗(精神的な)があるので、少し休むことにする。



(それにしても一層でこれは相当難易度高いな。この前のルドラの迷宮より難しい可能性は大いにあるし、注意して踏破していく必要がありそうだ。)


『その通りだぞ、主。』


すると僕の思考を見たのかルドラが声をかけてくる。


『この迷宮は黒龍に乗っ取られたとはいえ元は我より力の強い神の迷宮だ。迷宮に配置された神の中では最上位に位置する神なのだ。それに伴って迷宮の難易度も高いのだ。それに黒龍のせいか、魔物が活性化していて、普段より魔物が強化されておる。心して挑むのだ。』


『忠告ありがとう。ちなみにここの迷宮の主が誰だか分かる?』


『ああ、我ら迷宮の主はお互いに連絡を取り合っておるが故にどこにどの神がいるのかも把握しておる。この迷宮の主は───だぞ。』


『そうか、それはとても好都合だ。龍との戦いにも少しは勝算が出てきたかもね。』


僕はルドラとの話を終えると、水を一口飲んでから立ち上がり次の階層への階段を降りていく。








次の階層は草原だった。辺り一面に膝下まで伸びた草が生えており、敵影は見えなかった。僕は刀を抜いたまま、全方位を気をつけながら慎重に進んでいく。少し進んだところで急に背後から気配を感じ、咄嗟に刀を振るう。刀は正確にそれを弾く。どうやら飛んできたのは丸い弾丸のような魔物だったようだ。直径五センチほどの丸まった魔物が弾丸のように超スピードで飛んでくる。しかも気配を隠すというより、この膝下まである草のせいで魔物を《感知》できない。どうやら《感知》を阻害する効果があるらしい。


この魔物の名称は「スフェラ」と言い、《硬化》、《加速》などのスキルを持っており、それによって自身を弾丸のようにして攻撃してくるらしい。しかし、何かにぶつかったりするとその衝撃で死んでしまうという自爆攻撃を仕掛けてくる厄介な魔物なのだ。


先程から四方八方からスフェラが襲ってくるため、一向に前に進めない。下手に前へ行こうとすると足元から襲われるため対応でき無くなってしまうのだ。




………………………


……………


……




一体何百匹のスフェラを斬っただろうか。既に目はその速度に慣れ、体の反射神経や動体視力も比べ物にならないくらい向上した気がする。何せ地球の銃弾の何十倍も速いのだ。最初は何とか防いでいたのが、今や何なくできる。更にどうやらスフェラは草より下では攻撃してこないらしく、そのため膝下までを防ぐだけで良くなり、前にも進むことができるようになった。


僕は飛んでくるスフェラを斬りながら進んでいく。それなりの距離を踏破すると飛んでくるスフェラの中に数体種類が違うのが混じり始めた。今までは黒色のダンゴムシのような感じだったのが、形は変わらず、色が赤いのだ。嫌な予感がしたため咄嗟に斬らずに避けると他の黒スフェラとぶつかり爆発を起こした。


なんと赤色のスフェラはぶつかると爆発するらしい。そうして赤色のスフェラが加わったことで、色の区別までしながら進む必要が出てきた。間違えて赤を斬った場合、爆発で大怪我をするので慎重に見極める必要が出てきた。



斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る避ける斬る斬る避ける斬る斬る斬る斬る避ける斬る斬る斬る避ける




ひたすらにこれを繰り返しつつ前へ前へ一歩ずつ進んでいく。

やはりこれも少しすると慣れていき、歩くスピードが上がり始める。



また先ほどと同じ距離を進むと、今度は足元だけでなく何故か上からも降ってくるようになった。この階層は空があり、太陽もある。(地球の迷宮も似たようなものなので特に驚くことはない)


見た感じ空は結構上にあるにも関わらず上から降ってくるのは不思議だが、降ってくるからには対処せざるを得ない。


更に感覚を研ぎ澄まし、刀を振る速度を上げていく。無我夢中で弾丸の嵐を凌いでいく。最早前に進むことも叶わないが、何とか無傷で防ぎ切っている。

段々と剣筋はしなやかになり、動きは舞を踊るかのように動作と動作が綺麗に繋がり始める。


いつの間にかアクティブスキルの発動をやめており、今は完全に自身の身体能力とスキルの補正だけで戦っていた。


そして目が、体が、この状況に慣れ始め余裕が生まれる。一歩、一歩、ゆっくりと足を踏み出していく。動きは洗練されて無駄な動きが削ぎ落とされていくのが分かる。



そうしてさらに同じ距離を進むと今度は緑色のスフェラが混ざり始める。その特性は簡単に分かった。緑スフェラはとにかく速い、黒と赤の三倍くらいのスピードで迫ってくるのだ。黒と赤のスピードに慣れた後にこの速さを見せられると相当厳しい。


遂に対応が追いつかなくなってくる。なぜなら進むごとにスフェラ自体の性能が上がってくるのだ。速さ、威力、量、全てが上がる。速さは当初の倍以上となり、威力もスフェラの《硬化》のレベルが上がったことで体が硬くなり斬るのが段々と難しくなってくる。弾丸の密度は更に高くなり一瞬でも気を抜けば蜂の巣にされそうだった。



消耗覚悟で遂に【走馬灯】と【全見ビジョン】を発動する。世界が緩慢になる中、弾丸の軌道を予測し、斬り裂いていく。それでもスフェラの性能は徐々に上がっていく。進むにつれてこの緩慢な世界でも先ほどと同等の動きをし始める。


次の階層への階段はまだ見えず、とにかく必死に弾丸の嵐を切り抜けていく。これ以外に意識を割くことなく、思考の一切をこのことのみに費やす。動きは更に良くなり、振るう刀には何の不純物もない。


心はまるで凪のように穏やかで、でも体は灼熱のように熱い。


刀を一振りするごとに今まで気づかなかった無駄な動きが分かり、一太刀振るうごとに自分の剣術が上達してくるのが分かる。頭は焼けるように熱く、【走馬灯】と【全見】の負荷が重くのしかかっている。


ふと、頭が一瞬にしてクリアになり視界が広がる。視界には青い線が幾重にも張り巡らされておりその上をスフェラが通っていく。その線を辿るように刀を振るえばスフェラを斬り殺す。


そうして一体どのくらい経っただろうか。僕は遂に三階層への階段を見つける。そしてそこまで行くと遂にスフェラの猛攻撃が止み一息つくことができるようになった。僕は息も絶え絶えになっており、体は全身運動を何時間もやっていたせいか随分と疲れている。脳は【走馬灯】と【全見】の使い過ぎで、もう何も思考できない。刀を握る手からは力が強が過ぎたのか血が出ていた。



既に外は夜の時間なため僕はその場で水分だけ補給して、寝袋を下に引きその上にゴロンと寝転がる。そしてすぐに意識が朦朧とし始める。最後に念のため《感知》を小さく展開し魔物に備えながら疲労回復のため眠りにつく。






翌朝…


起きると体の疲労はほとんど抜けており大分動けるようになっていた。《生活魔法》の『クリーン』で体を洗い、《アイテムボックス》から、調理済みの生肉の串焼きを取り出して『プチファイア』で焼いて食べる。数本食べたところで、寝袋などを仕舞い体をほぐす。怪我は既に治っており、体にも異常は見られない。脳も十分に回復しており、問題なく使える。体をほぐした後は昨日やらなかった分の訓練をしてから、刀を抜いて昨日の感覚を思い出す。



スゥと息を軽く吸い集中する。視界は以前より広く見えるようになり、他の感覚も鋭敏になり周囲のことがよく分かる。


ゆっくりと刀を振り動作の一つ一つを確認していく。やはり今までとは段違いの洗練された動きを出来るようになっており、無駄という無駄が削ぎ落とされている。恐らくこれが本来、できて当然のことだったのだろう。今まではスキルの効果を発揮できていなかったということだ。スキルの補正を上辺だけ受けた状態だったのが、今は完全にその恩恵を受けることができている。



今まではスキルの効果を全て出せるような全力戦闘は無かった。なぜならラスタルの時はそもそもスキルは封印されており、それ以降は純粋な剣技を使った戦いをしてこなかったため、新しく補正が加わってもその効果を完全に出すことができなかったのだ。それが今回あれだけの数と速さと量の中、極限状態で刀を振ったことでスキルの効果全てを発揮できたわけだ。



要するに、今やっと体と心が一体となったのだ。



それと今はあの青い線のようなものはもう見えなくなっていた。あの戦闘の最中見えた青い線の正体は分からなかったが、あの時のような極限の集中力が発揮されれば再び見えるかもしれない。あの青い線が見えるようになれば、強力な武器になる。出来れば龍との戦いまでにはどうにか習得したいものだが、無い物ねだりをしても意味はない。頭を切り替えていくべきだろう。



そして僕は確認が終わったところで次の階層への階段を降りていく。



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