第8話



優月視点



部屋に戻り風呂に入る。風呂は魔石が取り付けてありそこに魔力を流すとお湯が出る仕組みになっている。シャワーを浴び終えて鏡の前を通った時自分の髪が随分と伸びていることに気付く。どうやらいつの間にか髪を結っても顔が隠れてしまうくらいには伸びていたらしい。恐らくレベルアップの影響だろう。むしろそれくらいしか原因が考えられない。


長くなった髪を結局は切らずに放置しておく。一応ピンで前髪を目にかからないようにはする。風呂から出るとドアがノックされる。どうやらリーナが来たようだ。僕が許可を出すとリーナが入ってくる。



「夜遅くにすまないな。少し話したいことがあったんだ……が……ふぇ?」



話の最中にリーナがこちらを見て固まる。しかも変な声を出す。



「どうかしたのか?」



「あ、いや、その、なんだ。お前の顔を初めてはっきりと見たものだから驚いてな…その随分と綺麗な顔をしているから。」



「どうして顔を見て驚くのか分からないが…ああ髪が長いせいで見えなかったのか。」



どうやら彼女は僕の顔を見て驚いたらしい。初対面の人は大抵僕の顔を見て驚く。僕自身自分の顔の良さは理解しているつもりだ。しかもこの反応も慣れた。僕は“ありがとう”と礼を言い用件を聞く。



「コホンッ。それなんだがユヅキには知識もあった方がいいと思ってな。できれば書庫を案内していくつか本を一緒に選ぼうと思ったんだ。今行けるか?」



「ああそれなら是非ともお願いしたい。頼むよ。」



「そうか、それは良かったでは行くとしよう。」



僕は着ていた薄い服の上に少し厚めのパーカーを羽織りリーナの後に続く。書庫に着くとリーナはテキパキと本をピックアップしていく。僕もさっき来ていたので大雑把には本の場所を覚えているがここまで正確には覚えていない。暫くしてリーナが選んだ本は合計で二十冊にも及んだ。



「この中から興味があるのを選んで読んでくれ。」



本は魔物に関する本、植物学の本、国々の特徴を記した本、昔の物語、少し専門的な物になるとスキルや魔力、古代語についてなどがあった。

僕はその中から植物学とスキルや魔力、古代語についての本を選ぶ。



「こんなところでいいかな。取り敢えずは薬学と同時進行で読ませてもらうよ。」



「そうか……なあユヅキ。今まで気になっていたのだが、一ついいか?」



「どうしたリーナ、何かあるなら言ってくれ。」



「ユヅキには感情がないというわけではないだろうというのは話してて分かるのだが、なぜそんなに調



「え?」



「やはり気付いてなかったか。お前はいつも話し方が二種類ぐらいあってそれが不規則に使われてたんだ。これは私の推測だが。お前は幼少期から自分を持ってなかったんじゃないか?親かは分からないが大人がお前を一人の人間として扱わなかったんだろう。そのせいでお前は周りの人の口調を無意識に模倣した。だがそれが不完全だったため話し方にブレが生じたんだろう。

思い当たる節があるんじゃないか?」



リーナの言葉を受けて僕は何も言えなくなる。僕の脳裏にすでに死んだあの男の存在がチラつく。


『いいか優月。お前は私の物だ。私が望んだことは実行する道具。実験動物でもない…私の…私だけの道具だ。それをよく覚えておくんだ、いいね?』


ーーそうだあの男はそう言った何度も何度も、何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も


赤子に言い聞かせるようにそれが僕にとって絶対の真理であるように。

だから僕は武器を取った。だから僕は感情を消した。だから僕は人を殺した。だから僕はを殺した。優しい優しい彼女……を……………?



ーー彼女って誰だっけ?



そこで僕の頭に頭痛が走る。それはいつもなら耐えられるはずが今は耐えられない。まるで僕が真理に辿り着くのを邪魔するかのように。


そして僕は思考を手放した。



「そうかもしれないね。口調は統一できるようにするよ。」



僕は何も感じさせないいつも通りの無の表情でそう言葉を返す。



「……そうか。お前に直す気があるなら私も協力しよう。また乱れていたら指摘するようにする。」



「ありがとう。今日はもう本を読んだら寝ることにするよ。」



「そうか夜分遅くに済まなかったな。お休み。」



「おやすみ。」



彼女はそう言うと部屋を出ていく。僕は本を取って読んでいく……





数時間後持ってきていた数冊の薬学の本とリーナと取りに行った本は読み終わった。中々興味深い内容が書かれており、今後の訓練次第ではまた強くなれるかもしれない。戦闘狂ではないが強いに越したことはないのだ。


本を読み終わると次は色々と変化のあったステータスの確認に移る。



________________________




名前 : ユヅキ イザヨイ

年齢 : 13

性別 : 男

種族 : 人族

職業 :剣帝/月隠

Lv : 49

魔力量 :5400/5400

魔力純度 : 5400

魔力強度 : 5400

技量ランク : S


スキル : アイテムボックスlv.8 銃術lv.9 空間属性魔法lv.6 付与魔法lv.4 加速lv.3 見切りlv.10 多重詠唱lv.5 無詠唱lv.7 換装lv.8 怪力lv.10 金剛lv.10 疾走lv.10 魔力炉lv.7 悪路走行lv.10 遠見lv.5 衝撃波lv.4 威圧lv.10 活性化lv.1 鬼門開放lv.1 解体lv.6 料理lv.8 


マスタースキル : 感知lv.10 看破lv9 魔力支配lv.10 身体強化lv.10 明鏡止水lv.10 息吹lv.6 身体操作lv.7


トランスドスキル:劍帝lv.3


ユニークスキル : 神才 暗絶殺 支配ノ瞳lv.8 増幅 獣化:白虎 夜霧lv.1 


クラススキル : 剣士のソードマスター 月隠


称号 : 神童 異世界の英雄 神殺し 死神 絶影 支配者 スケルトン殲滅者 王殺し 頂に手をかけし者 神器保持者 月の女神の加護 ゴブリン殲滅者



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新しく手に入れた中でも詳細のよく分からないやつから確認する。


衝撃波 : 衝撃波を発生させる。その強さはlv依存。


威圧 : 相手を威圧して行動阻害や恐怖を与える。自身のレベル以下の者又は自身より弱いと感じた者に対して発動可能。レベルにより威圧の強さが増す。


活性化 : 自身の体を活性化させ強化する。lv上昇ごとに強化度合い上昇。


鬼門開放 : 自身の中の限界を解放するスキル。使用中は尋常ではない痛みが襲うが身体能力が超上昇する。lv上昇に伴って使用時間と強化割合が上昇。


剣士のソードマスター : 剣帝専用クラススキル。剣を装備時自身の身体能力が上昇。剣装備の全制限解除。剣系統の職技が全使用可能。


月隠 : 月隠専用クラススキル。隠密時自身の身体能力が上昇。自身の気配と影などの完全遮断。隠密系統の職技が全使用可能。


ゴブリン殲滅者 : 数多くのゴブリンを殲滅したもの。

ゴブリン系との戦闘時全能力上昇(小)


ノーマルスキルは地味なのが多かったが威圧や活性化は使えそうだった。またクラスの専用ユニークスキルがとても強い。《剣士の極》の剣の装備制限の解除により僕はどんな剣でも使えるようになるし《月隠》の気配と影の完全遮断により隠密はほぼ見つかることはないと言っていいだろう。

さてここまででもう十分凄いのだが、ここからが本番だ。ゴブリンとの戦闘後に聞こえたあの不穏なアナウンス。あれが何か確かめるために《劍帝》の詳細を確認しなければならない。



・劍帝 : 劍の頂。その劍技の前には誰であろうとも斬り伏せられるであろう。各lvごとに特殊スキルが使用可能になる。

lv.1 : 天乃御劍 … 神気を使用することが可能になる。ただし、使用時間に比例して使用後に代償を払う。代償内容は一定時間の魔力の消失と身体能力の激減である。


lv.2 : 剣舞 … 戦闘中に攻撃を受けない限り自身の速度の上昇と剣の威力の上昇。(連なる重みは統合されました。)


lv.3 : 剣士の成長 … 剣士としてのスキルツリーの開放。

このスキルを使用するには所有者の体の最適化が必要




となっていた。ここまで説明文を読む限り随分と強化されたようだ。


《身体の最適化を実行しますか?》


するとアナウンスが聞こえてくる。僕はそれに対して少し考えたのちベッドに横たわってから了承する。


《所有者の了承を確認。実行します。》


その言葉とともに強烈な眠気が襲ってくる。僕はそれに抗うことなく眠りについていく。



………………

…………

……

《告。対象、十六夜優月の最適化を開始します。

最適化のため今までの経験の読み取りを開始します……完了

最適化に伴いスキルを統合します……成功。

スキルの統合に伴いクラススキルは消去されます……失敗。

クラスが最上位の為スキルの消去に失敗しました。よってクラススキルをトランスドスキルに統合します……成功。

さらに所有者の身体の最適化を開始……失敗。

所有者の脳にエラーを確認。解析開始…成功。ただしエラーの修正は失敗。

よって結果を元に最適化を開始……成功。

スキルツリーの開放を開始………成功。……エラー発生。

上位者の関与を確認。関与を了承。

別途スキルの作成に入ります。

ユニークスキル《月下ノ暗殺者》を獲得しました。

ユニークスキル《月夜ノ隠者》を獲得しました。

クラススキル《月隠》はユニークスキル《月夜ノ隠者》に統合されます。

最後にスキルの最適化を開始……成功。

最適化に伴いスキル《神才》に掛かっていた所有者の意志による制限を解除します……成功。

ユニークスキル《神才》はユニークスキル《天神ノ才》に進化します……成功。

これまでの経験値が所有者に反映されます……成功。

告。対象、十六夜優月の最適化を完了。以上にて終了します。》



……

…………

………………



翌朝目を覚ますと体が異常なほどに軽くクリアな感じがする。まるで今初めてちゃんと体を動かしているという感覚だ。

ベッドから起き上がり身支度を整えていく。髪はいつも通りポニーテールにし、着替える。いつもの夜天一式と精霊剣や小太刀、魔術銃を装備すると、部屋の外に出る。僕はそのまま地下から出て外の屋台にご飯を食べに行く。そこで朝ご飯を適当に見繕って食べると地下に戻ってくる。そして昨日意識を失うことになった原因であるスキルの詳細を見るためにステータスを確認する。



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名前 : ユヅキ イザヨイ

年齢 : 13

性別 : 男

種族 : 人族

職業 :剣帝/月隠

Lv : 58

魔力量 :6330/6330

魔力純度 : 6330

魔力強度 : 6330

技量ランク : S


スキル : アイテムボックスlv.8 空間属性魔法lv.8 付与魔法lv.6 換装lv.10 魔力炉lv.7 帝ノ威lv.6 解体lv.10 料理lv.10 多重無詠唱lv.5


マスタースキル : 感知lv.10 看破lv.10 魔素操作lv.1 魔銃術lv.1


トランスドスキル:劍帝lv.3 身体超越lv.1


ユニークスキル : 天神ノ才 支配ノ瞳lv.8 獣化:白虎 夜霧lv.1 増幅 月下ノ暗殺者 月夜ノ隠者


称号 : 異世界の英雄 神殺し 死神 絶影 支配者 スケルトン殲滅者 王殺し 神器保持者 月の女神の寵愛 ゴブリン殲滅者 到達者 解き放たれし神の才



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何か随分と変化していた。僕の想像の上を余裕で越してきた。


ふぅ、と軽く息を吐き、目を瞑って心を落ち着かせる。このステータスを見て一つ大きな謎が解けたのを頭で理解し、整理していく。


そして、一つ一つ答え合わせをするように詳細を確かめていこうと目を開いて、開かれたステータスに向き合う。




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次の更新は月曜日になります。

そして今後は毎週月曜の午前0時に更新となります。

ご了承ください。



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