第14話



優月視点



僕は刀を下段に構えて、ラスタルに対してカウンターを狙う。ラスタルは間合いに入った瞬間に中段から鋭い刺突を三発僕の眉間、喉、鳩尾に正確に放ってきた。


その刺突は余りにも早くほぼ同時に僕の体に命中しそうである。しかし僕は冷静に刀でラスタルの剣を上に弾く。だが、ラスタルはさらにそこから片手で握っていた剣を両手で持ち振り下ろしてくる。



鬼気破葬ききはそう流 岩石落とし!」



僕はそれを刀で受け止めようとするが、嫌な予感がして咄嗟に体を捩り刀を剣の側面に当て受け流す。


ズドォン!!


そんな音と共に迷宮の床が砕ける。僕の手もその威力を先程の受け流しで少し感じ、手が痺れる。

しかしバックステップで下がることはせず、技を放ったラスタルに向かって『閃華』を放つ。


ラスタルはそれをぎりぎりで受け止める。そして鍔迫り合いに持ち込む。


単純な力比べではラスタルに分があるが今はラスタルは片膝をつき不安定な体制のため本来の力が発揮できていない。



「ぐぅぅぅ」



流石のラスタルもこの状態では厳しいようで苦悶の表情を浮かべている。


僕は硬直状態に陥った状況から、力を抜き、刀を滑らせるようにして鍔迫り合いから離脱して体の流れを利用して威力の高い技を胴に放つ。



月華天真流 華天はなぞら



*********


月華天真流 華天


流派の中でも威力が高い一撃を繰り出す技。力を抜いた自然体からその体の流れを全て威力に変換する技である。華が天を舞っているようだという意味。


*********



「ッッッ!」



無言の、しかし気合いの入った一撃は咄嗟に防ぐための剣が間に合ったラスタルをそれでも吹き飛ばした。


僕はすぐさま追撃のために、刀を納刀して技を続けざまに放つ。



月華天真流 瞬華・飛天



*********


月華天真流 瞬華・飛天


『瞬華』の斬撃が飛ぶ技。威力は『瞬華』と同等のものだが、相手に被弾するのがとても速い。飛ばした次の瞬間には相手に当たっているというくらい。


*********



しかし、『飛天』は既に体制を整えていたラスタルの剣によりあっさりと破られる。



「やるじゃないか。想像以上の剣の腕だ。まさか今の私と互角に渡り合える剣士がいようとは、嬉しい限りだ。このままずっと続けるのもいいが、それでは決着がつかんだろう。だから、ここからは私も剣以外の技を使うとしよう。」



ラスタルがそういうと、すぐに変化が起こる。



「ふっ!ハァァァァ!!」



そしてラスタルの体から緑色のオーラが発せられる。


すると、ラスタルがおもむろに片手で剣を振り上げ、地面に向かって振り上げる。


ドゴォォォォォ


地面に剣が当たった瞬間に亀裂が走る。亀裂は真っ直ぐ僕の方に向かっており、素早く反応して避ける。



(ただ振り下ろしただけでこの威力か……あのオーラ、身体強化の類か?

それにしてもまさかスキル外スキルを使えるとは。)



*********


スキル外スキルとは

正式名称を


THE


SKILL


EXCEEDED


THE


FRAME


OF


SKILL



通称 : EXスキル (さらに端折るとEXとなる。)


ステータスボードには表示されない技能のことで、そのどれもが強力な能力をしている。何故表示されないのかは分かっていないが、一説にはその能力が余りにも強すぎるため表示しないのではなく、表示できないのではないかと言われている。



*********



「これが私の至った境地、【仙気せんき】だ。

さあ、行くぞ!」



その声と共に一瞬のうちにラスタルは僕の間合いに入ってくる。そして剣を軽く横薙ぎする。その速度は先程とは別格であり、僕は何とかそれを躱す。その斬撃で生じた風はは僕の後ろにあった剣たちを破壊して、それでもなお消えず、進んでいく。


それを見て僕は内心冷や汗をかく。



(あの威力を受けるのはダメだな。受けるのはできるけど、リスクが高い。そうなると残る選択肢は一つだな。ラスタルの【EX】を使。)



僕は一度ラスタルから距離を取る。そして、一呼吸ののちに、自らの【EX】を発動させる。



EX発動 鏡花水月きょうかすいげつ



ラスタルは僕の変化を感じとったのかこちらに向かって右から袈裟斬りをしてくる。


*********


その速度、威力は間違いなく今の優月を上回っていた。はずであった。


*********



僕はその斬撃と全く同じ軌道、速度、威力でラスタルの斬撃を受けた。



「なにっ!」



ラスタルが驚きの声を上げる。それは当然のことだ。今まで【仙気】によって完全に優月の能力全てを上回っていたはずであったのが、いきなり互角になったのだ。



「なにをしたんだ?」



「僕も奥の手を一つ使わせてもらっただけですよ。」



「そうか……。」



ラスタルはそう言うと鍔迫り合いの状態から、なにかを仕掛けてくる。



「鬼気破葬流 破鬼衝波はきしょうは!」



何と密着状態から少しの身体の動きだけで最大限の威力を生み出しこちらにぶつけてくる。


しかし僕はそれを動揺することもなく対処する。

それと全く同じことをすることによって。



両者の技は全てにおいて一緒だった。それによって相殺され、結果として密着状態は解除される。



「君まさか私の動きを完璧に模倣したのかい?」



「さあ?そんなことより貴方の剣技をもっと僕に見せてください。」



僕はラスタルの問いを受け流して刀を構える、ラスタルと全く同じように…




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