第3話

優月視点



目が覚めると僕は自分が迷宮の中にいるのだと理解した。周囲は森林に囲まれており、いつ奇襲があってもおかしくないところだった。また、頭上には太陽のようなものがあり、爛々と輝いていた。



「さてと、まずは周囲の把握とこの階層の突破を目的として行動しようか。」



まず僕は《感知》をオンにして自分の周囲約10キロを範囲に設定して把握する。



(生命反応も複数あるなぁ。だけど、全て人じゃなくて魔物だな。取り敢えず一回感知を最大範囲にして次の階層への道を探そうかな。)



そして僕は《感知》を最大範囲まで広げる。この時感知する対象を絞っておく。


これは流石に80キロの空間全てを感知すると情報量が多過ぎて脳への負荷がかかり過ぎてしまうからである。最悪廃人となってしまう危険もある。


10キロから範囲を広げていくと30キロの地点で下への階段を発見する。



(ふむ、ここならすぐに着けるな。行くか。)



階段を発見した僕は《身体強化》をオンにし、さらに魔力を脚部に集め、強化する。そして移動を開始する。


その速度はとても速く、傍目からは黒い線のようにしか見えていなかった。


ちなみに、《身体強化》の割合は半分程度であり、魔力での強化もあまりしていないので、全力では、さらに速く動くことができる。


数分後、僕はあっさりと階段に辿り着く。道中いた魔物は全て無視した。


そして階段を下りていくとそこには一階層と全く同じ光景が広がっていた。僕はまた、感知の範囲を広げていく。するとすぐに階段を発見する。そして一階層と同じように移動をする。階段に辿り着き、下へ降りると、また、同じ光景であった。



(またか。てことはもしかして次も一緒かな?)



その予想は見事に的中し、9階層まで全て同じ光景であった。勿論魔物は全て無視したため、戦闘は一度も行っていない。


10階層に着くと、目の前には大広間があり、その奥には大きい扉が佇んでいた。



(今日はここで休んで、明日の朝に進むとしようか。)



そう決めた僕は《アイテムボックス》を開き、貰った野営道具を使う。夕飯はたくさん(一年分くらい)あった干し肉を食べ、早々に寝る事にする。



(今日はいろいろなことが起こったな…。明日は今日同様に10階層分は進むとしようか。あとは戦闘もしておこう。スキルの使い勝手を試しておかないとだし。)



そうして明日の予定を立てると、僕は明日のために早く寝る。



*********



翌朝、僕は手早く朝食を食べ、身体を水で洗う。この水はセレーネ様から貰った道具の一つから出した物だ。



________________________



魔力変換水筒


レア度: 特級


魔力を水筒に流す事で魔力が水に変換される不思議な水筒。



________________________



要は魔力がある限り無限に水が出せる道具だという事だ。昨日は確認しなかったが、今日これを見つけたのでこれを使って身体を洗っているという事なのだ。


身体を洗い終わり、水気を切り装備を着用していく。そして、野営に使用した道具を片付けていき、全ての準備が完了すると、広間を抜け、扉の前に行く。



「さて、行くか。」



そう呟き、扉を開ける。



中は、先ほどの大広間と同様の広さであり、その最奥には石の玉座が存在していた。そして玉座には冠を被った石の身体をした王が座っていた。その両隣には剣と杖を持った騎士と魔法使いが立っており、やはりどちらも石でできた身体をしていた。



部屋を観察していると、突如声が聞こえる。



“汝が我らに挑むものであるか?”



その声は王の石像から発せられていた。

僕は一応相手が王ということなので敬語で話す。



「はい。僕が挑戦者であっています。」



“そうか。我らはこの場を守護する役割を担っている。先へ行きたくば、我の護衛をまずは打倒して見せよ!”



「それが試練ということですか…。 承知しました。では、参ります。」



そういうや否や、僕と騎士は同時に動き出す。騎士の身体は大きく、約2.5メートルといったところであった。しかし、その動きは速かった。その間にも魔法使いの方は詠唱を始める。


僕は魔術銃を抜くと魔力を込める。そして引き金を引き上空へ打ち上げる。そしてすぐさましまうと刀を抜き、斬りかかってきた騎士の剣を受け流す。戦闘前に既に《身体強化》は済ませてある。騎士は剣を受け流された事で体制を大きく崩し、よろける。その隙に僕は魔力を刀に流し、足を目掛けて斬る。


その結果、騎士の両足を膝のところから両断する事に成功する。騎士はそのまま倒れる。そこへトドメをすぐさま刺して、魔法使いの方を向く。


すると丁度詠唱が完成したようだった。そして僕へ向けて魔法を放とうとする。しかしその直後魔法使いは上から落ちてきた銃弾に撃たれて魔法がキャンセルされる。


これは始めに撃っておいた銃弾である。魔法使いが魔法を完成させるのと同時に命中するように計算して撃ったのだ。


魔法がキャンセルされたのを見て、僕はすぐさま接近し、刀を振るい、左肩から右腰にかけてを切断する。それにより、魔法使いを倒す事に成功する。


二つの石像を倒し終えるとまた声が聞こえてくる。



“ふむ、こうも呆気なく我が護衛たちがやられるとはな。其方やるではないか。では、次は我自ら其方の相手をするとしよう。”



すると、王が立ち上がり剣を抜く。王は騎士よりも大きく三メートル程であった。剣も王と同等の大きさを持っている。僕は刀を構え、《身体強化》を掛け直す。



“では、行くとしよう!”



そう言うと同時にこちらへ突っ込んでくる。王は騎士よりも速く動き僕へと迫ってくる。それに対して僕は刀を鞘に納め、居合の構えを取る。そして王が間合いに入った瞬間に抜刀する。


月華天真流げっかてんしんりゅう 瞬華しゅんか


そして一瞬にして斬り納刀する。王はその場で足を止め、頭から真っ二つになる。


*********



『月華天真流』


それは優月が刀を振るっていく中で習得してきたたくさんの流派を自分なりに昇華させ、生み出した剣技を纏めたオリジナルの流派である。


その中の一つが居合斬りの『瞬華』である。この技の由来は剣速がとても速いため納刀と同時に血がまるで華のように散ることからきている。



*********



“馬鹿な…。我が一撃だと!それに刀すら見えないなど有り得ない……。”



王はそう最後に言い、死ぬ。


すると彼らの体が光の粒子となり消えていく。それと同時に自分の身体が熱を帯びる。



(これがレベルアップか。それじゃあステータスを確認するとしようか。そういえばステータスといえば看破を使うの忘れていたな。次からは使うようにしよう。)



そう考えて僕はステータスの確認を始める。

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