ボイスレコーダー78 第二事件発生時

 再開

「第二の事件が発生。今回のマスクは龍。決まりだな、これは十二支だ。

 そして白野が第二の事件でも第一発見者だ。

 犯人を取り押さえない限りは白野が事件に遭遇するって事か、今までは俺とみーちゃんの二人が先行して事件に終止符をうっていたがこれは中々いけ好かない事してくれるぜ。

 被害者はこの近くで働いている二十代の女性。首に掛けられたホワイトボードにはいつも通り愛のメッセージが書かれていたよ。

 どうしたらこんな方法を思いつくんだか・・・・・・

 みーちゃんからの情報によると橋に麻縄が縛られており、女性はその縄で首を吊るされていたらしい。

 現場の橋は以前から人通りが少なく、橋の近くは工場ばかりで本当に絶好のスポットだよ。

 この状況を考察してみるに、君嶋は橋のバラスターに予め縄を括りつけて置き、人が来るのを待っていた。

 するとそこへ被害者の女性がやって来たので予め縛っておいた縄を強引に女性の首に絞めて気絶させ、次に近くに置いていたタクシーから小道具を取り出して身にまとわせて被害者をそのまま落とした。

 ざっと考えてこんなところか、地域をよくしるタクシー運転手だからこそなせる方法だな。

 欲望に身を任せながらここまで用意周到に事件を遂行するとは本当。強姦事件が無ければ昇格待ったなしの敏腕運転手だったろうに・・・・・・

 それにしてもここで座ってるだけなのは随分と居心地が悪いもんなんだな。

 救えた命を救わず。

 容疑者の犯した過ちを繰り返させる。

 全くもって安楽椅子探偵とは良い二つ名を付けてもらえたもんだよ。

 現在、椅子に座ってこうしてボイスレコーダーにベラベラと喋るのが俺の探偵としての行動範囲。

 皮肉なもんだな・・・・・・

 おっと、電話だ。一旦止めるよ」

                停止

                再開

「みーちゃんからだった。

 いやいいねえ、好きな人の声を聴けるなんて、自分のクソ野郎さに磨きがかかるよ。

 探偵としての俺の意見を聞きたいという連絡だったが俺は全然違う推理をみーちゃんに話してみた。

 いつもは二人で一人のタッグで白野の事件を解いていたのに今じゃ一対一対一でしかないな。

 最愛の人に嘘をつくのは心苦しくないのかって?

 そりゃあ苦しいに決まってる。今この瞬間。もしも全てを吐き捨てて何もかも投げ出せるのなら俺はそうしてやるさ、だけどそれは叶わない事だって分かってるから俺はこうして心を犠牲にして椅子に座り続けていられる。

 なんでかな、ボイスレコーダー越しになるといつからか弱音の様なものを吐くようになってしまったな。

 俺の真の友好はどうやらボイスレコーダーだけらしいぞ。

 話を戻すがこの第二の事件をもってしても白野は犯人に届かずじまいだったな、早く見つけてくれよ、でないと失敗しちまう。

 俺とみーちゃんの子供だろ、ならもっと考えるか死に目に会ってみろよ・・・・・・

 面と向かって言えないのに本当に偉そうだよな」

                  停止

                  再開

「今さっき、此処近辺の全ての神社と寺に隠しカメラを設置してきた。

 神主さんには申し訳ないが念の為だ。

 君嶋が儀式的な思考でいるのなら最後の犯罪にはここだろうからな。

 それにしてもこれだけ多いと目が疲れる、欧風と和風の二文化が混在している市だってのにどうしてこうも神社の数が多いんだよ・・・・・・

 欧風と和風で思い出したがこの霧結市の人口な、外国人が人口の一割ぐらいしか暮らしていないらしいんだ。それもほとんどアメリカ人。

 そういや和食屋の店主の人も前に話してた時にアメリカ人て言ってたな。

 国境ってのにはあまり興味がないんだがこうもおかしな都市だと無性に気になって仕方ないんだよな、それにしても欧風が流行っている理由はどこからなんだ?

 謎は謎のままだな・・・・・・」

                  停止

                  開始

「夜になっても変化なし。今日はここいらが引き時かな・・・・・・

 犯行があるとしたら明日か明後日のどちらかだろう。

 それと容疑者Xの方なんだが少し進展があってな、少し絞れてきた。

 こいつか、こいつか、こいつのどれかだと思うんだがやっぱり一手足りないな・・・・・・

 警察には頼らないのかって?

 頼ったところでなんて言うんだ?

 超能力者が容疑者を作っていたんだ!か?

 デスノートを手にしている!か?

 証拠もないのに動くはずないだろ。

 みーちゃんには頼めない。

 みーちゃんは白野が生きるための最後の砦みたいなものだからな。

 俺は白野が離れすぎたからこうしていられるんだ。頼めるもんか・・・・・・」

               停止

               開始

「朝になったが変化な~し、前の事件から推測するに事件は白野の下校時間以降に行われるんじゃないかな、それじゃあ俺は今から一度家に帰って支度をして来るとしよう。

 起きた時から何か変な感じがして堪らないんだ。

 もしかしたら今日で決着がつくかもな・・・・・・」

               停止

               再開

「戻ってきた。

 それにしても報道のカメラが一台も今回の事件について調べに来ないんだな。

 こんな奇怪な事件。マスコミなら食いつきそうなのに・・・・・・

 もしかしたら第一事件の発見者として霧縫さんの名前が挙がったから親が心配になって今回の事件に報道規制のようなのを敷いてるのかもしれないな。

 過保護な親め・・・・・・俺も人の事を言えないか・・・・・・」

                停止

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