【最終章 始まりを迎える為の反抗 】04
数分が経ち、僕らが座る鳥居の階段、前方にある車道からけたたましいサイレンの音と共に荒々しい運転をしながら急ブレーキで止まったパトカーからお馴染みの2人が出てきた。
「しら!大丈夫なの?怪我は無い?!死んでないかしら?」
「ちょっ、主任・・・・・・まじで・・・・・・・しnろろろろろろろ」
「母さん」
運転席から出てきた母さんは真っ先に僕に近寄ってきてべたべたとくっつきながら怪我が無いかくまなくチェックし、無傷だと知ると胸をなで下ろしてから
「馬鹿!危ない事に首を突っ込まないでって言ったでしょ!」
平手で右頬を一発叩いてから力強く抱きしめてきた。
「母さん・・・・・・・ごめん」
父さんから電話を受けてからずっと心配だったのだろうか、ここに僕が居る事をしっかりと確かめるように優しくでも力強くギュッと母さんは僕を包み込んだ。
「心配したんだからね、昔から巻き込まれ体質なんだから気をつけなきゃ、私とお父さんでは貴方を助けきれない時が出てきてしまうかもしれない―――それが途轍もなく心配で苦しいの、分かって」
「分かってるつもりだよ」
母さんと父さんがどれだけ僕の為に動いてくれたか分かってるつもりだ。
「しらったら口だけはいつも立派なんだから」
そう言ってから母さんは僕を離す。
「後ろの本殿に一連の犯人が居るから後は母さんがお願い」
「任せんしゃい!何たって子どもの尻拭いをするのが母であり、警官の役目ですから!――そっちのお二人さんも大丈夫そうだし――おい奏!いつまでへばってるんだ!早くこっち来て他の警官が来る前に現場整理しとくぞ!」
「ま・・・・・・まじすかろろろろろろ」
神野と霧縫さんを見てから未だに側溝でおろおろしている奏さんに指示を出してから僕らを背に階段を昇っていく。
「大城のマザコン」
「だれがマザコンじゃい!」
酷い言われ様だ。僕はマザコンでもなければファミコンのマザーをプレイした事のある純粋無垢な現代っ子少年だってのに・・・・・・
「そういや大城、お父さんの方に報告しなくていいのか?」
「あ、そうだな」
神野に言われるまま僕は一応の報告を父さんにする事にした。
『はいこちら事務所』
「何の事務所だよ、そして誰なんだよ・・・・・・」
僕をツッコミに回すのはやめてほしいのだが、まあさっき君嶋に突っ込んだのは僕だけども――
『なんだ白野か、どうした?死んだか?』
「あんたら両親は僕の声を聴いておいて死んでると思うんですかねえ・・・・・・」
『どうせお前の事だ。捕まえたんだろ君嶋。ざっと今は母さんが来てもうそろそろで他の警察も来る時間帯だと思うんだが』
父さんの予想通り今丁度、他の警官達がパトカー数台を停車してぞろぞろとこちらへやって来ていた。
「当たってる、いつもながらどうしてそこまで予想できるのか甚だ疑問で仕方が無いんだが・・・・・・」
僕らを横切って複数の男性警官が神社内に駆けあがって行き、女性警察官一人と男性警官が僕らを現場から離そうと声を掛けてきた。
一応親族に自身の安否確認をしている際中という事で僕は後で二人に合流する事にした。
『で?これからお前はどうするんだ?』
次に電話に耳を傾けた時には父さんからそう問いかける言葉が言われていた。
「どうするって?」
とぼけるように僕は返事をするが、どこか見透かされている様に気味が悪い感覚がしてならない。
『お前も捜しているんだろ、得体の知れない容疑者Xの存在を』
容疑者X
僕らで言うところの欲望さんの事だろうか?
「なんでそれを――」
『そんなの、お前の親だから知ってるに決まってるだろ、不可解な程にお前の身の回りでは事件が起きやすいんだ。知ってて当然だ』
「一緒に居る時間が少ないのに?」
一か月に一回、帰るか帰らないか程の帰宅頻度の父さんが知ってて当然だって・・・・・・
嫌味に近いその言葉を口にして僕は先程の言葉の最低さに気がつく。
『その言葉。みーちゃんには絶対に言うなよ』
どこまでも真剣に父さんは僕に向かってそう言ってから
『悪い、気が立ってた』
「こっちこそ・・・・・・大丈夫。母さんには言わないよ」
『有難う、それと一つ尋ねたいんだが容疑者Xについて何か知っている事はあるか?』
容疑者Xについての知っている事と言ったら色々あるが、言えたもんじゃないものばかりだし、これだけは言っておこう。さっきの言葉の謝罪も込めて。
「君嶋が確か高校生くらいの少女がなんとか~って言ってた」
『高校生の少女・・・・・・有難う、あんまり無茶なことしてみーちゃんを悲しませるなよ』
「そっちこそ」
『じゃあ、一か月くらい帰れないけどその間みーちゃんを頼んだぞ』
「うん」
どこか改まったような言葉遣いで僕にそう言ってから父さんの方から電話が切られた。
ポケットにスマホをしまってから立ち上がり、二人の居るパトカーへ僕も遅れて向かった。
パトカーに入り、一度警察署へ連れていかれ、一人ずつ事情聴取をされて二人が終わってから僕も受けたのだが――
「また君か?!」
「は、はい――」
「何回事件に遭遇すれば気が済むんだ!もっと普通に過ごせないのか?!」
「そう言われても・・・・・・」
「口ごたえしない!」
「はい!」
僕だけ三回目となると鬼の形相の様に注意され、帰る頃には魂が抜けてしまったかと思うほどに気疲れしてしまっていた。
「大丈夫?大城君?」
僕の姿を見て心配そうに声を掛けてきた霧縫さんに僕はから返事で「大丈夫大丈夫」と言った。
「そうとう叱られたとみた。まあ自業自得だな」
なんだろう、実際そうなんだけどどうしようもなく納得したくない!
「それじゃあ主任に役目を仰せつかったので私が彼らを送りますね」
僕ら全員の事情聴取が終わると、先程現場に居た母さんの相棒的な存在の奏さんが上司であろう人にそう言ってから近づいてきた。
「車酔い激しそうですけどもう大丈夫なんですか?」
神野のここぞとばかりに要らぬ気づかいの言葉にウッと身を引いて躊躇いながらも奏さんは上司であるからなのか言葉を弁えて言った。
「あれは主任の運転が華麗過ぎて吐きたくなっただけですので――」
本当にうちの母さんがすみません!
心でそう奏さんに謝罪しながら僕らはパトカーに乗って各々の家まで送ってもらう事になった。
「忙しいのにすみません」
後部座席に座り、何となくそう言った。
「いえいえ、もう十時を過ぎてますしこのくらい普通ですよ、それよりも二人は大丈夫だったかな?」
あ、これ僕カウントされてない奴だ。まあ三回目ともなるとそうなるわな・・・・・・いや実質四回じゃね?
「一応は大丈夫です」
「私も」
二人がそう言うと「なら良し」と言って安全運転を心がけながらまず霧縫さんの家へ向かって走行した。
「この度はどうもうちの子がご迷惑をお掛けしました」
霧縫さんの家に着き、奏さんと一緒に出ていくと霧縫さんの両親がそう言いながら奏さんにペコペコ頭を下げていた。
品の高そうな服を身にまとう二人をよそに霧縫さんは暗い表情で一緒に謝ってから見るからにでかい自身の家へ入って行った。
「夜靄も大変だねえ」
他人事と言った感じで神野はそう呟いた。
「霧縫さん、両親と仲悪いのか?」
僕は神野にそう問うも「自分で聞いてみたら?」と言われてしまった。
まあ人に聞かれたくない事情なんて人間は幾つもあるものだから聞かざる負えない時が来たら聞くことにしよう。
「あ、奏さんは降りなくて大丈夫ですよ、僕の両親外国に出てるんで」
「そうなの・・・・・・そう言えばそうだったわね」
奏さんは一瞬躊躇うも傍らに置いた僕らの事が書かれているだろ書類を見て納得した。
「それじゃあね大城、明日は無理そうだし明後日また学校で」
軽く手を振ってから神野は一人、明かりの灯らない一軒家に入って行った。
流石に明日は休まないと異常者扱いされると見越しての言葉だったのだろう、僕も明日は学校を休んもうかな・・・・・・
「さて大城君」
数分何を喋る事もなく淡々と走行していたパトカーが急に路肩へ停車し、奏さんはこちらに顔を向けて何やら物申したいといった雰囲気で僕の名前を呼び、
「君、本当に何者なの?」
と聞かれた。
「何者って――ただの高校生ですけど・・・・・・」
それ以外に答えようがないので僕がそう口にするも、
「そうじゃないの、私が言いたいのは何でこんなにも君は事件に巻き込まれるのかって聞きたいわけ」
と身を乗り出して片手に書類を持ってこちらへ言ってきた。
「気になって君の身辺を独断で調べたけどなんなのこれ?大量の事件の第一発見者になってるっておかしくない?」
「それ法的に大丈夫なんですか・・・・・・」
気を逸らそうと僕が茶々を入れるがその手には乗るまいと奏さんは問い詰めてくる。
「おかしいでしょ何よこの数!どんだけ運が悪いの?それとも貴方、何かこの事件たちに関わっているの?」
グイグイと首を突っ込んで来る奏さんに僕は
「すみません、昔から事件に遭遇する体質でして――」
「噓だ!絶対に何か隠してる!」
白状して答えたのに何だその反応!
どうすることもできない状況に僕はある策をふと思いついた。
「奏さん。一つ取引をしましょう」
急に態度を変えた僕に気を張りながら「何?」と恐る恐る尋ねる。
「この件に関して見逃してもらう代わりに僕は金輪際母さんに直接電話するのをやめます」
「え、それって――」
そう、あの荒々しい運転の原因は僕の予測では急いで僕の安全を確認するための行為によるものと見た。ならば僕が電話をやめればあの荒々しい運転は無くなる筈(多分)。
逡巡しながらも奏さんは
「しょうがないわね、まあ貴方の事を調べても昇級出来ないだろうから今回は見逃してあげるわ」
と僕の提案にのって、パトカーを走らせ始めた。
それだけ母さんの運転が嫌だという事だろう・・・・・・
「それじゃあ、例の件。ぜっ!たいに!忘れないでよね」
マンション前に僕を送り届け、そう入念にくぎを刺してから奏さんはパトカーに乗って去っていった。
「まあ、結局のところ警察に電話しても同じ様な末路になりそうだけど・・・・・・」
僕はそう呟きながら住戸に帰らずにもう一つの確認しなければいけない場所へ向かった。
物陰からそっとその場所を確認する。
どうやら父さんは公園の事も警察に連絡したらしく、レッカー車が二台のタクシーを乗せて、走り去る最中だった。
「この分なら飯塚さんと女性の人も大丈夫かな・・・・・・」
ほっと胸をなでおろし、僕は疲れた体をフラフラと動かしながら自身の住戸へ身を翻して歩みを進めた。
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