【第一章 志向と異常】04
教室に戻ってから霧縫さんとは何を喋る事もなく最後の十時限目体育を迎えた。
「体育って何やるのかな?」
流石に変な雰囲気を振り払いたいいう思いと初めての体育という事もあり霧縫さんに聞いてみると
「うちの学校の体育は時間が短いから勉強の合間の休憩時間みたいな感じで特に内容は決まってないの、各々好きなように身体を動かしたり教室に残って勉強してたりするわ」
体育の意味なくね?!
「それで霧縫さんはこれからどうするの?」
「――大城 白野君」
「何でしょうか霧縫 夜靄さん――」
なんだろう急に改まって。
「あなた人に聞くしか頭が無いの?いっつも私に聞いてるだけで友達を作る素振りさえしないし」
急に冷たい!
「昨日と打って変わって霧縫さん冷たいな」
「いやいや、昨日はドッキリの為の小芝居だから、もう私的には目的は達成されたから貴方に優しくする必要はほとんど無いの」
「ほとんどないのか――」
まあ何となくずっと尋ねっぱなしで悪い気もするし
「そうだねごめん、ちょっと身体動かしてくるよ――って悪いんだけど使える場所ってどこかな」
「ああ!もう!体育館と外!」
「ありがとうございます!」
呆れすぎてキレ気味に霧縫さんに僕は体育館履きを持って逃げながら感謝の言葉を口にした。
と言っても体育着なんか持って来てないんだよな――
「まあ行くだけ行ってみるか」
僕は体育館へ向かう事にした。
少々道に迷いながらも体育館に続く渡り廊下を歩いていると体育館からドンドン!とバスケットボールをつく音が聞こえてきた。
「お邪魔しま~す」
何となく体育館に入る際にそう言って入ると
「おっ!転校生じゃん」
とYシャツの袖を捲り上げてボールをついているガタイの良い人と他に五人ほどがフリースロー勝負をしていた。
「丁度良い。転校生一緒にバスケやろうぜ!ちょうどスリーオンスリー出来るからさ」
「あ、はい」
流れに乗るまま僕は彼らと一緒にバスケをすることになってしまった。
体育館には他にもちらほら生徒がいてどうやらスリーオンスリーをやるとの事で生徒がライン外から見ていた。
「転校生俺のチームで五本先取な、後俺の名前三菱で同じチームの田島」
「よろしく」
「よろしくお願いします」
足元を見てみると全員体育館履きでなくバスケットシューズを履いていた。
何故皆が観戦しに来るのか何となくわかった気がする・・・・・・
「転校生バスケ経験は?」
上履きから体育館履きに履き替えながら
「一応前の学校でやってました」
と答えると
「そりゃいい!よし!履き替えたな、始めようぜ」
三菱は僕が靴を履き替えたのを見てからコートの中心に集まり他の生徒にボールを預けてジャンプボールの態勢に入った。
何ともバスケ部ってのはフレンドリーなやつが多いもんだな、転校二日目のやつをバスケに誘うなんて――
Yシャツの袖を捲り上げて僕も臨戦態勢に入った。
「それじゃあいきますよっと!」
ボールを高らかに上げティップオフ。
「転校生!」
上がったボールを三菱が僕の方にはじき出してきた。
「うぉ!」
僕かよ!
一瞬びくついてから僕はドリブルを始めて相手ゴールに向かった。
切り込もうとするがスリーポイントライン手前で相手に阻まれた。
身長はこのコートの中で僕が一番小さく、ゴール下でレイアップをしたとしてもカットされてるのが目に見えている、なら!
後ろから勢いよく中に入りセンターポジションでボールをくれと高らかに手を上げて待っていた三菱にパスをした。
「お!ナイスパス!」
左足を軸にフリースローラインの内側に身体をもっていきながらシュートへ持ち込む。
「させるかよ!」
「残念」
相手の1人がブロックで飛ぶが対角線に位置する場所で待っていた田島に強引にパスをした。
三菱にガードを回していてノーマークだった田島はそのままシュートを放ち、華麗に決めた。
「残り四本!守り頑張るぞ」
それからは同じ様一点ずつ交互に取り、カウントは四対四と同点の状態でボールは相手が持っていた。
久々のバスケでもあってウォーミングアップなしじゃ調子も出ずしり込みしていたが今ならいけるかもしれない。
「速攻!」
田島が三菱とのスイッチの際にボールを奪取し、速攻に切り替わった。
田島からボールをパスされた僕は先程と同じ様に中へ切り込もうとするがやはりマークマンである高身長の男に経路を阻まれた。
「三菱!」
入ってこようと中へ切り込む中途半端なタイミングを見計らってボールをパスする。
「おいおい!おもしれえな!」
中途半端なパスを出した後に僕はマークマンよりも素早く三菱の後方、スリーポイントラインに動き、それを察した三菱はノールックでボールの軌道だけを後方にずらして僕にパスをした。
「決めろ転校生!」
シュートモーションに入り全神経をボールをリングへ入れる事だけに費やしてボールを放った。
マークマンの手にかすりそうになるギリギリのタイミングでのシュート。
「入れ!」
高い軌道を経てボールは頂点に達すると共に下降していきボードに当たりながらボールはリングの中に入っていった。
「ナイス!俺らの勝ち!!」
ブザービーターの様に十時限目の終了のチャイムが体育館中に鳴り響いた。
「あんがとな転校生!楽しかったは!」
「こっちこそ、短い時間だったけど三菱の凄いプレーが見れて楽しかった」
「お前部活はどうすんの?バスケ部?歓迎するぜ」
肩の後ろに腕を回して三菱が誘ってくれるが
「いやいいよ、もう二年だし今からバスケ部入っても馴染めそうにないし」
「そっかそりゃ残念・・・・・・じゃあ今度も遊ぼうな!」
体育館にいたクラスの生徒はぞろぞろと教室に戻っていき僕も三菱や他のバスケ部とさっきの試合の話をしながら教室に帰って行った。
「よ!霧縫さん!いやあ楽しいものですねバスケって――無視ですかっておい!」
陽気な気持ちで椅子に腰かけて霧縫さんに何となく話をするが返事が無いと思い顔を向けるとブルートゥースのイヤホンをしながら勉強をしていた。
いやそれはダメでしょ――
僕がイヤホンを外すと
「何すんのよ」
と睨みつける様にこちらを見てきた。
「いや仮にも授業なんだからイヤホンは――」
僕の手からイヤホンを取り返し霧縫さんは
「ノイズキャンセリング機能使ってただけだから別にいいでしょ」
と言い訳にしてもいいのか判断のつかない反論を述べてから十限目が終わってるのを確認し帰りの支度をし始めた。
「ちぇっ善意から忠告してやったのに――」
不貞腐れながら僕も帰宅の準備をし、帰りのホームルームを待った。
❃
「以上でホームルームを終わりにする。気を付けて帰る様に」
担任の言葉を最後に挨拶をして各々自分達の放課後がおとずれた。
「先部室で待ってるから早く来なさいよ」
と言って霧縫さんは足早に教室を出ていった。
「待ってくれないのか」
とほほとなりつつ僕も鞄を持ちスマホの通知を一通り確認してから部室へ向う。
「今日も一人か」
スマホには朝方に母さんから今日は帰れないとメッセージで送られてきていたのが表示されていた。まあその通知で僕は寝坊の危機を回避したのだけど。
「運動して疲れたし飲み物買うか」
僕は自販機でコーラを買ってから一口飲んで乾いた喉を潤してから部室に向かって旧校舎到着し、ミステリー研究部の部室のドアを開けた。
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