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 ―大まかなあらすじ―

 小説家を目指す引っ込み思案な男子高校生と、不治の病に侵された女子高生が織りなす青春ラブストーリー。


 ―詳しいあらすじ―

 小説家を目指す男子高校生、桐島岳きりしま がくは、両親の仕事の都合で転校してきた内海三波うつみ みなみと出会う。

 隣同士の席になった2人であったが、騒がしさを好まない岳と、天真爛漫な三波は全くそりが合わず小さなことで言い争いになる日々。ところがある日、岳が執筆していた小説を三波に読まれてしまう。

 三波は、小説の恋愛描写が稚拙であると指摘し、偽の恋人関係を結ばないかと提案してくる。三波は舞台女優になるのが自分の夢だと語り、演技に生かすために恋愛を知りたいとのだ言う。岳もまた、小説執筆に生かすべく三波の申し出を受け入れる。

 岳と三波の偽恋人関係がスタートし、恋愛を疑似体験してゆく2人。ところが2人は次第に惹かれ合ってゆき、お互いを意識するようになってしまう。岳は三波に対する恋心を自覚し、疑似デートで告白することを決意。

 デート当日。岳は待ち合わせ場所で三波を待ってたが、いっこうに三波はやってこない。岳が三波の自宅を訪れると、三波の母親から娘は入院したと伝えられる。岳は三波が入院している病院を訪れると、三波から「自分は余命付きの病気で、入退院を繰り返している」と教えられる。ショックを受ける岳だったが、それでも三波の偽恋人役を演じ続けることを決意。また、三波を元気付けるため地域で演劇会を立ち上げ、三波と共に演劇を成功させるべく奮闘するのだが……



 そこまで読んだ勇太は、苦笑い気味に顔を上げる。続きを読まなくてもラストまで分かってしまう気がした。

「途中までしか読んでないけど……いやぁ、すげぇな。どうせこの後、主人公は病気で気弱になったヒロインに苛立ってケンカとかになるんだろ?」

「お、その通りだ。あとは、主人公がヒロインの親友と偶然出会って、ヒロインも主人公に恋心を抱いていると知る。結局仲直りして演劇は成功。数十年後、小説家になった主人公はその体験を小説にして発表して墓前で手を合わせる……ま、物語のイメージとしちゃ少年向けのラブコメ漫画と少女漫画を合わせた感じだな」

 空は気分がよくなったのか、ペラペラと喋り始めた。

「ここにレイプ、妊娠、流産とかぶっこめば、00年代に流行った携帯小説っぽくなるけど、どうだ?」

「やめてくれ。そんなドロドロした話なんて読みたくない」 

 勇太が食い気味にそう言ってやれば、「そっか」と言って引き下がる空。

 これはあくまで、ありがちな恋愛系のストーリーだ。そんな話では間違いなくコンテストで入賞できない。

「このあらすじで進めてくれたら助かる。俺は脚本ができるまでカメラの練習しとく」

「それもそうか。勇太カメラ持ってるけど映像は専門じゃないもんな」

「でも経験がないわけじゃないから、どうにかなるだろ」

 だからとて動画を撮るのが得意というわけではない。完全に門外漢だし、ましてや映画撮影の経験は皆無だ。なのでいろいろ練習が必要だった。

「んじゃ、締め切りは2週間後な。ああ、それから勇太」

 空は勇太からメモ帳を受け取りながら口を開いた。

「提案なんだが、あと一人くらいメンバーを加えたほうがいいと思うぞ。それこそ、スケジュール管理とかできるやつ」

「あー……。それ、本当に必要か?」

 勇太がめんどくさそうな顔になる。だが空はその意見を覆さない。

「いや、絶対いたほうがいい。俺。ネットで知り合ったヤツらとリレー漫画っぽいの作ったことあんだけどよ。そんときスケジュール管理するヤツ決めてなかったせいで、出品するはずだった漫画イベントの原稿落としたことがある」

「でもさ、それとこれとは話が――」

「ダメだ。じゃないと俺は脚本を書かない」

「くっ……わかったよ」

 そう言われると、どうしようもない。

 だけど、空には誰かと一緒になにかを作るノウハウがある。だから言うことのほとんどは正しいのだろうと思う。……しかし。

 勇太は腕を組み、協力してくれそうなクラスメイトを思い浮かべてみる。だが、そういった面倒事を引き受けてくれそうな人間に心当たりはない。さらにスケジュール管理となればなおさらだ。そう思っていたのだが、

「あっ」

 突然ピンと来た。ここ美星分校には、困ったときに頼るべき女子生徒が一人だけいる。こういう面倒事であれば彼女が適任だろう。

 ただ、その人物の名前を空に伝えてみれば、

「……マジかよ」

 と困惑気味の顔になった。

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