百年の恋
「ねえ、お兄ちゃん! もう一度、チューしてよ!」華麗が可愛い唇を響樹に突き出してきた。 いつの間にか、響樹はお兄ちゃんに昇格したようだ。
「ちょっと勘弁してくれよ」彼は恥ずかしそうな顔をしてその申し出を断った。最近女性と口づけを交わす機会が頻繁で少し感覚が麻痺しつつある自分に呆れている。
「か、華麗、お前はさっき口づ・・・・・・いや、変身したろう! 今度は私の番だ!」静香が華麗の体を押しのけてアピールする。彼女も同じように唇を突き出している。なんだ盛りでもついているのかこの女たちは。だいたい今変身をする必要はないのではないか。
「ちょ、ちょっと待ってくれ!そんな事よりも勇希先輩を探さないと!」主旨を見失った二人を響樹は軌道修正した。こんな呑気な事をしている場合ではないと彼女達を窘めた。
「ちっ!」二人はまるでシンクロでもするように舌打ちをした。そういうところだけは気が合うのだなと感心する。
「静香、さっきの詩織って女は一体誰なの?」シンディが先ほど襲ってきた、詩織のことを静香に尋ねた。 その名前を聞いた静香の表情が一変した。
「詩織は、私の幼馴染なのだ。 私は貧しい侍の娘、詩織はある財閥の娘であった。 身分の差を越えて詩織は私に対等に接してくれた数少ない友人だった・・・・・・・」静香は宙を見上げる。その目はなぜか悲しい物を秘めているように思えた。
「ある日、私達の前に、響介という男が現れた。私達二人とも彼に恋をしてしまった。・・・・・・・だが、それは詩織にとっては報われない恋であった。詩織には・・・・・・資質が無かったのだ。 私は、彼女は平凡な幸せを手に入れていると思っていたのだが・・・・・・・・」静香の目が悲しそうに、その時の気持ちを語っていた。
「でも、あの姿はとても百歳以上には見えないぞ」響樹は皆が感じた疑問を口にした。そう、彼らの目の前に現れた詩織の姿は、若く美しい女性の姿であった。百の齢を重ねた女の姿とは到底思えなかった。
「それは、・・・・・・・私にも解らない。彼女に一体何があったのか・・・・・・」静香はゆっくりと首を振った。一同に沈黙が流れる。
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