勇希先輩を助けたい

 響樹は強烈な電撃を受けて大きなダメージを負っていた。


 彼は不老不死である為に死亡することはなかった。しかし、痛覚は通常の人間と変わらない。


 普通であれば死によってその痛みから解放されるのであるが、彼には際限さいげんのない痛みが襲い続けるのであった。


「ゆ、勇希・・・・・・」響樹はベッドの中で、勇希の名を呼び続けている。 その意識はまだ戻っていない。


「苦しいはずなのに・・・・・・・ベニーちゃんの事を心配しているのね」電流で熱がこもった体を冷やすように、響樹の体を氷で冷やしていた。シンディは優しい笑顔で彼の頭を撫でた。


「華麗の、華麗のせいだ!華麗が足手まといになったから・・・・・・」華麗が悔しそうに床を見つめている。 その目からは、数滴の涙がこぼれ落ちた。


「お前のせいでは無い。普通の人間が、どうこう出来る相手では無い」静香は椅子に座り、刀身を杖のようにして、手と顎を乗せて体重を支えていた。


「でも・・・・・・私は・・・・・・!」自分は普通の人間では無いということを、華麗は主張したいようであった。

 だがシンディと響樹が変身した姿を思い出し言葉を発することを止めた。

「そうよ、YOUは普通の人間の中では、飛び抜けた能力を持った存在なのでしょう。 ただ、それは普通の人間の中での話。それは、ベニーちゃんと空手の組手をした時にも感じたはずよ」

 シンディの言葉を聞き、華麗は歯を食いしばる。


 彼女の言うとおり、始めて相対した勇希の動きは、幾多の強敵を倒してきた華麗の技が、全く歯がたたなかった。今思えばあの動きは常人の動きではなかった。

「んん・・・・・・」響樹が目を開けた。

「気がついたのね、痛みは大丈夫?」シンディが心配そうに問いかける。

 響樹は、痛みを堪えながら上半身を起こした。

 その体には、大量の包帯が巻かれていた。


「勇希、勇希先輩は?!」自分の体の事よりも、勇希の事が気になったようで、響樹は部屋の中を見回した。 しかし、そこには勇希の姿は無かった。

「ベニーちゃんは、奴らに連れ去られたわ。Me達が一緒にいればこんな事には・・・・・・・」シンディは申し訳無さそうに呟いた。

「いや、私こそ紅のそばにいれば・・・・・・」静香も悔しさを体全体で表していた。

「いえ・・・・・・華麗こそ、傍にいたのに、それに貴方にも、・・・・・・華麗を守る為に、本当に御免なさい・・・・・・・」華麗は再び、大粒の涙を流しながら俯いた。

 その華麗の頭を、響樹はゆっくりと優しく撫でた。


「華麗・・・・・・君の責任では無いよ。これは、全て俺の責任だ。 嵐子、シンディ、静香。 君達の苦しみ、悲しみ・・・・・・・全てが、俺の責任なんだ!」響樹は顔を激しくゆがめて、自分の膝の辺りを拳で思いっきり叩きつけた。


「響樹・・・・・・・」シンディは心配そうに、その様子を見ていた。

「シンディ、静香。 俺は、・・・・・・俺は勇希先輩を助けたい! 助けに行きたい!」響樹は懇願するような目で言った。

「そうね、・・・・・・・華麗、YOUはグラン・オーバーズの日本支部の場所を知っていると言っていたわね?」

「え?・・・・・・ええ」華麗は涙を拭いながら返答をした。

「響樹、Me達の気持ちも一緒よ。 ねえ、静香」シンディは静香の顔を見る。

「当たり前だ!」静香は凛々しい顔で応えた。

「静香・・・・・・・有難う」


「お前に礼を言われるいわれは無い。 勇希は私の・・・・・・・大切な友だ」静香は少し顔を赤くした。

「そうね、静香は勇希のご飯が無いと駄目だからね」シンディの笑みがこぼれる。

「華麗も・・・・・・お姉さまを助けたいです・・・・・・」華麗の言葉。

「そうだな」響樹はもう一度、華麗の頭を撫でた。何故か彼女は響樹の手が心地良く感じるようになっていた。


「響樹、体は大丈夫なのか?」静香が心配そうに呟いた。

「ああ、俺は大丈夫だよ・・・・・・なんたって、不死身の体なんだからな」健康をアピールするように胸を拳骨で叩いた。その反動でゴホゴホと響樹は咳払いをした。


「響樹の回復を見て、明日の夜、勇希の救出にいくわよ」シンディが先陣を切る。


 その言葉に響樹達は力強く頷いた。

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