ブーメラン
「朱、お前・・・・・・ちょっと離れろよ」
一通りの話し合いが終了して、帰宅の徒についた。 早速、華麗もシンディの家に同居することが決定して、本日、引越しを行う運びとなった。
シンディは、学校の仕事があるので残業後、帰宅してから手伝うとの事、静香は先に家に帰って部屋の掃除をすると言っていた。
華麗は暗殺を生業として生きてきた為、特に居を構えてという発想は無かったそうである。彼女は気のみ気のまま日本に来日したそうであった。
「いい加減、華麗達に焼きもち焼くのは止めてくれるかな。華麗が魅力的なのは解るけれど、正直いうと、華麗、男に興味ないのよ ・・・・・・ねえ、お姉さまもそうですよね!」華麗が、勇希の腕にしがみ付きながら嬉しそうに呟いた。
「え、・・・・・・私は」勇希は戸惑いながら返答に困っていた。
「だ、だれが焼きもちなんか、お、俺はただ・・・・・・」響樹は誤魔化すように顔を背けた。「ただ?」勇希がその言葉の続きを聞いた。少し何かを期待するかのように彼女は響樹の顔を覗き込んだ。
「ただ、女同士が腕組して、変だと思った・・・・・・だけです」響樹は鞄を振り上げて、肩に掛けた。
「そう・・・・・・」勇希は物足りなさそうな顔で空を見上げた。
「やはり、ただの人間では無理だったか」唐突の男の声が聞こえた。
響樹達は声の主を探す。
「あ、あそこよ!」見上げると数人の男達が屋根の上に立っていた。 男達の首には緑色のチョーカーが巻かれている。
「あれは・・・・・・・緑川と同じ!」男達の身なりは、以前倒した緑川と、よく似た姿であった。 その瞬間、響樹は彼らが普通の人間ではないことを確認した。
「ちょっと華麗ちゃん、離れて!」勇希が身構えた。「はい!」華麗も構える。
響樹も構えるが、その姿はあまり強そうには見えなかった。
「アンタ、足を引っ張るからその辺に隠れていてよ!」華麗が叫んだ。
「ほう!朱 華麗。グラン・オーバーズを裏切るのか?」男が冷静な口調で問いかける。
「ええ、華麗はお姉さまとの愛に生きていく事に決めたわ! お姉さまの敵は華麗の敵よ!」華麗は中国拳法の独特な構えを見せた。
男達は屋根から飛び降りて地面に着地した。 その数は5人であった。
「男を捕らえるのだ。 朱は殺しても構わん!」リーダー格の男が叫ぶ。 その瞬間、響樹の頭に衝撃が走った。
(俺と勇希先輩は死なないが、華麗は・・・・・・・)彼女を守ってやらないといけない。その気持ちが響樹の思いを占めた。
男の拳が華麗を襲う。彼女はその攻撃をかわして、掌を顔面に叩き込む。
「えっ!」掌は男の顎へまともに入った筈なのに、男は平然とした表情であった。
男はニヤリと笑ってから、華麗の胸元に強烈なパンチを喰らわせた。 激しい衝撃で華麗の体は後方に飛んでいく。その体を、響樹は体を挺して受け止めた。
「痛っ、な、なんでアンタが!」華麗は痛みを堪えながらも、響樹の行動に
「俺は・・・・・・・男だから、君達を守らないと・・・・・・」響樹は衝撃で壁に体を打ち付けていた。
「響樹君!大丈夫!?」勇希の声が聞こえる。 勇希は綺麗な飛び蹴りで先ほどの男を蹴散らした。 男は顔を歪めながら倒れる。
「や、やっぱり、お姉さまは凄い!」華麗は、戦う勇希の姿を見て改めて惚れなおした様子であった。
「男を捕らえろ! 女達は後回しだ!」他の四人が響樹達に視線を移した。 響樹は華麗の体を庇うように覆う。 彼女を残して逃げることは出来ない。
「えっ。ちょっと!」響樹の行動に華麗が目を見開いた。
男達は懐から黒く四角い箱を出した。その箱に付いたスイッチを押すと二本のワイヤーが飛び出し響樹の体に先端が突き刺さる。次の瞬間、響樹の体を強烈な電流が駆け抜けた。
「うわー!!!!」体が激しく震える。通常の人間であれば即死であるが、不死身の彼は致命傷には至らない。ただし激痛は通常の人間と同様に感じる。
「ひ、響樹君!!!!」勇希は手刀で、ワイヤーを切る。ワイヤーは千切れて響樹の体が電撃から開放された。 響樹は強烈な衝撃によって気を失っている。
「ど、どうして!」華麗は響樹の体を支えていた。
「響樹君! キスを!」勇希は、響樹の体に近寄ろうとする。 男達が四方から、先ほどと同じ攻撃を仕掛けてきた。
その攻撃を避ける事は容易かったが、ここで勇希が逃げると響樹と華麗に電撃攻撃が直撃する。
勇希は、
「く、くっ!!!!」響樹に浴びせられたと同様の電流が勇希の体を駆け抜ける。
勇希の体から電流が消え、前のめりに倒れる。
「お、お姉さま!」華麗は叫ぶが、体を動かすことが出来ないでいた。 男達の一人が勇希の体を抱き上げる。 勇希はグッタリとして動かない。
他の男達が、ゆっくりと響樹達の下に歩いていく。
男達と響樹達の間を区切るように、一台の真っ赤なカウンタックが爆音を上げながら飛び込んできた。 ガルウイングを開けると、中からブーメランが飛び出してくる。 ブーメランは孤を描き男達を攻撃した。男達は攻撃を起用にかわした。
「Meとしたことが、・・・・・・ミスったわ!」カウンタックの中から、シンディが飛び出してきた。シンディはグッタリとした、響樹を見て舌打ちをした。 男達を攻撃したブーメランがシンディの元に戻ってきた。
彼女は両手でそれを受け止めた。
シンディは響樹達の近くに駆け寄り華麗から奪い取るように響樹の体を抱いた。 そして、おもむろに唇を重ねた。
「え、一体、な、何を?!」突然の事に、華麗は驚きを隠せない。
二人の体が空気の中に消えるように四散すると黄色い美女、変身したシンディが姿を現した。彼女の手には大きなブーメランが握られている。
「「どりゃー!」」そのブーメランを振り上げると、男達に襲い掛かる。 一人の男が、真っ二つに切り裂かれる。つぎの瞬間、シンディは男の首からチョーカーをむしり取った。
「や、やめろー!」チョーカーを失った男は、一気に年老いていき灰になって消えた。
「退却だ! その女を連れて行く!」残りの四人は、宙に飛び上がり逃げていく。
「「逃がすか!」」 シンディは、逃げる男達を追いかけて一人を確保する。男は激しく抵抗するが、先ほどの男と同じくチョーカーを千切られて絶命した。
シンディが男達の逃亡した方向に目をやるが、既に男達の姿は見えない。
「「ベニーちゃん・・・・・・・」」シンディは苦虫をすり潰した表情でブーメランを握りしめた。男達と一緒に、紅 勇希の姿も消えていた。
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