羨ましい
「響樹、時間ピッタリね」シンディは何も知らないかのように、待ち合わせの場所に姿を見せた。 その後ろに続く勇希と静香は何故か少し怒っている様子であった。
「ああ、・・・・・・どうかしたのか二人とも?」響樹の問いかけに勇希は応えない。
「なんでもない!」静香は誤魔化しながら拗ねた顔を見せた。
「まあ、いいから、いいから。 それじゃあ静香の服見に行きましょう。 ついでに勇希の服も買おうね。 ご両親からお金は預かっているからな。 響樹、貴方が選んであげるのよ」シンディがウインクで響樹に合図した。
響樹はその意味がよく解らず、とにかく頷いた。
大きな商業施設の女性服売場のフロアへ移動する。一面女性の衣服だらけで響樹の見るものは全く見当たらない。
「まずは、あそこね!」シンディの目が輝く。 彼女が指差す先は、ランジェリー売場。
「いい加減、さらしとフンドシでは駄目よ! サイズは昨日の夜、計っておいたから」言いながら勇希は様々な下着を物色する。
響樹は目のやり場に困り、キョロキョロしてしまう。 店員の女性が怪しい人物を見るような視線で彼を睨み付けてきた。
「響樹! これなんかどう!」シンディは、片手に赤い上下の下着、反対の手には黒い下着。両方ともヒラヒラの着いたセクシーなものであった。
とても、高校生位の少女が身につけるものとは言えない代物であった。
「響樹、YOUはどっちが、好き?」なぜか自分の体にあてがいながら聞いてきた。
「も、もっと質素なほうが・・・・・・・いいかな」響樹は小さな声で返答した。
「そう、・・・・・・・どっちも良いと思うのだけど・・・・・・ よし、試着行こう、静香、試着!」シンディは静香の手を引いて店の奥に歩いていった。
「ふー・・・・・」響樹は店の外のベンチに腰掛けてため息をついた。
「ねえ、響樹君・・・・・・・これ、似合うかな?」少し機嫌を直した勇希が声を掛けてきた。
彼女の手には可愛らしいピンクのワンピースが握られていた。
「そうですね。可愛いけど・・・・・・先輩のイメージじゃないな・・・・・・」響樹が素直な意見を述べた。
「え、私のイメージって、どんなイメージなの?」勇希は身を乗り出して聞く。
「うーん、やっぱり、空手着・・・・・・かな」その言葉を聞いて、勇希の顔が赤みを帯びてくる。
「馬鹿!」勇希の上段回し蹴りが炸裂して、響樹の体はクルクル回転しながら宙に舞った。
「ど、どうかされましたか!」警備員が駆けつけてきた。
どうやら女性下着売場に男性がいると通報されていた様子だ。
「い、いいえ、何でもありません。エへへへへ・・・・・・あ、この人・・・・・・・私の、と、友達なんで・・・・・・」言いながら勇希は顔を、真っ赤に赤く染めていた。 その隣で響樹は腹話術の人形のように口をパクパクしていた。
「響樹―!」静香が突然飛びついてきた。 その声で響樹は我に帰った。
「ちょ、ちょっと、静香!?」勇希の口元がピクピクと引きつっていた。
静香はシンディのチョイスした黒い上下の下着が気に入った様子で、更衣室から飛び出して響樹に見せにきたようであった。いつも巻いているさらしのせいで解らなかった胸の大きさ、腰のくびれ。 そして日頃の鍛錬により引き締まったお尻と太もも。響樹と警備員男性は同時に目を覆った。
「おい、響樹! なんで見ないのだ! こっちを見ろ!」静香は響樹の両手首を握り、左右に開いた。
目と鼻の先に、大きな二つの物体が現れ響樹は、鼻血を噴射しながら倒れた。
「う、羨ましい」警備員の男が呟いた。
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