呼び捨て

「「にゃははははは! 今度は私達の番よ」」豪快な声が響きわたる。


 窓が粉砕された教室に、人影が見えた。

 騒動に驚いた勇希は校庭に飛び出していた。


「な、なんなの?」勇希は驚き、けたたましい笑い声の主を探した。


 勇希が向けた視線の先には、黄色くカールのかかった髪、猛烈に大きな二つの胸、バレーボールでも仕込んでいりのかと勇希は疑った。その姿は海外のセクシー女優のようであった。


「ま、まさか・・・・・・あれは?!」勇希は目を凝らした。彼女の予想は当たっていた。


 響樹とシンディの体が、シンクロして黄色いセクシーガールに変身していた。


 彼女は手に大きなブーメランを握っていた。 その大きさは、彼女の背丈と同じ程度のものであった。


 シンディは、教室から飛び降りると、ブーメランを巨大な刃にように振り回す、その仕草は静香のように華麗なものでは無く、豪快な猛牛のようなものであった。


「「避けるな!」」ブーメランは、激しい土埃をあげながら嵐子達に襲いかかる。嵐子と緑川は飛び上がりながら、シンディの攻撃をかわす。


「ふん、まるで乳牛ちちうしね! 緑川、やれるの?」嵐子が冷静な口調で問いかける。

「当たり前です、誰に向かって言っているのですか? 」緑川は不敵な笑いを見せながら前に踏み出た。


「いい歳なのだから、無理はしないことよ」嵐子は少しからかうように言った。


「歳の事は言うな!!!」緑川の推定年齢は二十歳前後であるが、年齢の事を言われると、人格が変わるようである。


 緑川の髪が、輝きだす。シンディはその様子を気に留めずに飛び掛る。


「「おりゃー!」」ブーメランが緑川の額に当たると思われたその瞬間、シンディの体を猛烈な電流が駆け抜ける。


「「あちゃー!!」」シンディの体が大きく弾けとんだ。

 その体を飛び出してきた勇希が受け止めた。シンディの体には微弱の電気が残っているようで、勇希も少し痺れを感じた。


「お前の技は、力に頼りすぎだ!」声の主は静香であった。 どうやら、一人で留守番するのも退屈だったらしく、学校の周りをうろついていたところ、この騒動に気づき校庭の中に飛び込んできたのであった。


「シンディ、私と代われ!」静香が、響樹とのシンクロを解除するように、シンディに指示する。

「「まだよ、まだ!」」シンディはブーメランを振り回すと、勢いよく投げた。ブーメランは大きく円を描きながら、緑川目掛けて跳んでいく。

「そんなもの、私には当たらない!」そう呟くと緑川は余裕の表情でブーメランを避けた。かわしたブーメランの影から静香が日本刀を手に飛び出してきた。

「やー!」

「な、なんだと!?」

 刃が緑川の首の辺りをかすめる。 チョーカーの端が少し切れた。


「ちっ!」静香は舌打ちした。

「危ない、危ない・・・・・・まあ、僕も君達と同じで不死身の体だから、平気だけどね」言いながら静香の腹部を蹴り上げた。


「げふぉ!」静香の体が宙を舞う。体は不死身であっても痛みは通常の人間と同様に感じるらしい。

 シンディが飛び上がり、静香の体をキャッチした。


「「大丈夫か・・・・・・静香!てめえ!」」シンディが怒りの声をあげる。

 それは、響樹の心の声であった。


 シンディは緑川の顔目掛けて拳を繰り出す。しかし、その攻撃は尽くかわされる。


 緑川は膝蹴りをシンディの腹に発射する。「ぐっ!」腹痛を堪えて、シンディは後方にひりがえり勇希の近くに舞い降りた。


「「シンディ!」」シンディの中の響樹が叫んだ。「「わ、解ったわよ」」変身が解け二人の男女の姿に戻った。


「勇希先輩!」響樹は勇希に口づけを迫る。

「ちょ、ちょっと、待って!」勇希は抵抗する。

「早く! 勇希先輩!」タコのように響樹の唇は吸盤に変わっていた。


「いやー!」勇希は顔を真っ赤にして、平手打ちをする。 響樹は起用にかわして勇希の体を抱きしめた。


「勇希・・・・・・・御免!」響樹は彼女の唇を塞いだ。

「え、えええ…」勇希は名前を呼び捨てにされて、驚いたのと強引な口づけで顔が真っ赤になった。


 二人の体は赤い光を放って四散してから、一人の少女に変身した。

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