緑川の最期
「「もう、・・・・・・・いいわ、今度は私の出番よ!」」クレナイの体は真っ赤な炎に包まれた。勢いよく緑川に飛び込んでいく。
強烈なボディーブローが緑川の腹に命中する。
「ぐはっ!」緑川の体が苦痛に歪む。続けて後ろ回し蹴りが顔面にヒットした。
緑川の体は、激しく回転しながら地面に叩きつけられた。
「ち、畜生!」
クレナイは手刀を構えると、緑川の首の辺り目掛けて振り下ろした。
手刀は激しい炎を纏い、駆け抜ける。
緑川は避けるが、間に合わずチョーカーが切り裂かれた。 先ほどの静香の攻撃により切れ目が入っており、千切れやすい状態になっていたようだ。
一本の布と化したチョーカーが宙を舞う。
「う、うおー!」緑川が絶叫を上げる。
「なに、あ、あれは?」シンディが緑川の様子を見て驚きの声をあげた。
緑川の体は、急激に年老いていき老人のような姿に変わっていく。頭髪が抜け、葉が抜けていく。
「お、おみゃえりゃ、ゆりゅさん!」クレナイに歩みよろうと一歩足を前に出すが、朽ち果ててその場にひれ伏してしまった。
「あ、ありゃひこ、ちゃしゅけて・・・・・・・」緑川は震える手を、嵐子に向けて助けを求めているようであった。
「無理よ・・・・・・!」嵐子は彼から目を背けた。
緑川の体は、灰のように崩れ風に吹かれて飛んでいった。
「だから、そんな中途半端な状態では勝つことは出来ないっていったのよ・・・・・・」嵐子は拳を握りしめていた。
「「なにが起こったのだ!」」クレナイを驚愕の瞳で嵐子を見た。
「緑川は、既に百歳近い男性を調整して作り出された人工の超人だったのよ」嵐子はクレナイが発した疑問に答える。
そして長い髪を掻き揚げた。
「人工の超人だと?!」静香が大きな声で聞き返した。
「そう、これは元々余命わずかの、その男を使用した実験なの、私のDNAを研究して不老不死と、不死身の体を手に入れようとしているのよ。 あいつらは・・・・・・・」嵐子の言葉は、何故か憤慨しているような口調であった。
「あいつらって誰のこと?!」シンディが問いかける。
「貴方達にそこまで教える筋合いはないわ。 私は、ただ・・・・・・その男に死んでほしいだけよ!」嵐子はクレナイを指差した。
クレナイは複雑な表情で嵐子を見ていた。
「「なぜ、俺を殺したがるのだ? 俺が死ぬとお前も死ぬはずだぞ」」クレナイの口を借りて響樹は質問をした。
「そう、死こそが私の望みなの。 お前と愛し合ったせいで、私は・・・・・・・取り返しの無い、痛みを背負った。 全ての元凶はお前だ。 お前が死ねば私も死ねる! 私のような女はもう・・・・・・沢山だ!」嵐子は手から手裏剣を放つ、手裏剣はクレナイに真っ直ぐ飛んでいくが、彼女が右手で振り払うと炎が手裏剣を溶解した。
「「・・・・・・」」クレナイは、悲しそうな顔で嵐子を見つめた。
「そんな目で・・・・・・・私を見るな!!」嵐子は声を荒げて、無数の手裏剣を投げつけた。
「「嵐子さん、あなたは・・・・・・・」」クレナイの体を、無数の炎がガードしていた。 手裏剣は全て彼女の体に触れる前に、消滅した。
「畜生!!!」嵐子は煙幕を投げて姿を消した。 彼女が消えると同時に結界の効果も消えたようである。
響樹と勇希も変身を解いて元の姿に戻った。
「すいませんでした・・・・・・・勇希先輩」先ほどの無理やり口づけをしたのを思い出して、響樹は頭を下げて謝った。ただ、本気で彼女が嫌がっていたのであれば、容易くそれは制止出来た筈であった。
「ええ、もういいわ・・・・・・それよりも嵐子・・・・・・さん、あの人は……」勇希は響樹の謝罪を軽く流した。
その時、勇希の心は別の思いで占められていた。
あの時・・・・・・手裏剣を投げる嵐子の目に光るものが見えたような気がした。永遠の命、永遠の苦しみ、それは決して他人事では無い。
静香とシンディの姿に目をやるが、彼女達に目だった変化は無かった。彼女達も同じ苦しみを共有してきたのであろうか。
勇希は嵐子の気持ちを考えて複雑な思いに捕らわれる自分を感じていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます