部屋の主は?

 勇希は、シンディから奪取だっしゅしたと思われるスマホを手に握り、何処どこかに電話を掛けている。


「・・・・・・あ、お母さん、今晩も直美の家に泊まるから・・・・・・大丈夫よ・・・・・・分かっているわ・・・・・・・じゃあね」電話の声は、いつもと変わらぬ天使の声であった。・・・・・・がスマホの通話が終わると同時に大魔神に変身した。


「この変態が・・・・・・!」勇希は吐き捨てるように呟いた。


 部屋に戻るとさすがに静香とシンディは服を着ていた。

「事情は分かったわ。 静香さんは家が無いのね。確かに、ずっと大変だったのね・・・・・・でも、シンディ・・・・・・貴方は、違うわよね」勇希は椅子に座りながら腕を組んでいた。 なぜか目の前では三人が正座して座っていた。

「ワタシニホンゴワカリマセン」

「誤魔化さないで・・・・・・貴方は家があるのでしょう」勇希はドン!と足を踏みしめた。響樹は下の部屋から苦情が来るのではとオドオドしていた。


「実は、・・・・・不動産屋の手違いで、入居日が明日になってしまったのよ。 だから今晩だけ! 私は野宿するのは無理だから・・・・・・ねっ!」シンディは両手を合わせて拝むように懇願した。


「今日だけよ。 その代わり・・・・・・・私も泊まるから」言いながら勇希は響樹を睨みつけた。 いつの間にか部屋の主が勇希に代わっていたようだ。 響樹は項垂うなだれるように頷いた。

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