第5話うるうるぴえん

 うるうるぴえん



 今日はうると離れる日、あいつは結局何がしたかったんだ。何度聞いても花火が見てみたいからとか。スイカ割りやラジオ体操で大喜びしたりした。


「お前、満足したのか?」


「ああ。それにそろそろ帰れって」



 そう青いくまのぬいぐるみは夏の青い空を指す。入道雲がもくもくとして、風鈴が鳴る。エアコンもあるのに扇風機を実家から持ってきたのは、乾燥が苦手なうるのためだ。あと「我々はうる、宇宙人だ」って一緒にやりたかった。実際やって、ヒロもこれでうるだと言われて思い出した。子どもの頃夏の日、草むらの影でぐったりしていたうるにホースで水をかけた。そして一緒に遊んで…そうだ、あの頃の僕は宇宙人になって別の星に行きたかったんだ。


「うる、子どもの頃も今も楽しかったな」


「ヒロ忘れてたんじゃなかったのか!?」


「忘れたりもするさ」


「俺らは忘れられない、どんどん溢れるばかり」


「向こうで辛いことでもあるのか?帰りたくないならこのままいても…」


「俺らはこの暑さには耐えられない。それに帰りたくないわけじゃないんだ、むしろ帰りたい」


「ならなんでもっとはやく」


 帰ってくれなかったんだよ、僕は声に出さなかった。



「泣くのか?」


「そうだよばかうる、お前って泣くの?」


「泣かん」


「なんできゅいきゅい、翻訳機の故障?」


「あー腹へった」


「嘘つき」



 うるはあの日のように室長に手を引かれて連れていかれた。室長が誘拐犯に見えた。



 帰りたい…


 そうか!



「すいません、室長!」


「ヒロトくん、別れの挨拶まだすんでないかな?」


「またなバカヒロ」


「室長、もう一度うると実家に行ってもいいですか?」


「彼らは暑いのを我慢しているんだよ?そろそろ帰らないと」


「廃校、ホテルになってるんです。何も夜でいいじゃないですか、僕もUFO見たいし」


「俺も行きたい」


「しかたないな、ほんとに君たちは」

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