第2話 田中、転生

(ん…………)


 意識を取り戻した田中は、しばらく動く気力も起きずにぐったりと横たわっていた。


 体が重かった。


 まるで、全身が泥にでも変化してしまったかのようだ。

 

 今日も平日なので仕事に行かなければならないのだが、上昇志向のない田中としては、自分のアンニュイさの方が仕事よりも優先される。


 ────そしてそのまま、気だるい微睡まどろみを謳歌おうかすること約一時間。


 やっと動き出す気になった田中だったが、そこでようやく異常事態に気がついた。


(あれ? おれって確か昨日、チーフの奢りでめし食いに行って…………あばら家みたいな店で…………んで、フグ食ったら苦しくなって、倒れて、泡吹いて…………それから…………それから? その先の記憶がないな…………)


 病院にでも搬送されたのだろうか。

 もしそうなら、堂々と会社を休めてラッキーだ。


 などと呑気に考える。


 が、しだいに覚醒し始めた脳が「そうではないよ」と警鐘けいしょうを鳴らしはじめた。


 まず、寝床がやけにゴツゴツとしていて、しかも尖った小石みたいなものが突き刺さったりもしてきて、背中が痛い。

 まるで、地面に寝かされているような感触だ。


 次に、風の流れ、虫や鳥の声、草や木の匂いをじかに感じる。

 壁に遮られているようには思えない。

 

 つまりここは屋外だ。


 そして最後に、一番重要なことだが…………











 明らかに、田中は全裸だった。











WHYホワイ!?」


 意味もなく英語で叫び、田中は飛び起きた。


 その目に飛び込んでくるのは、一面に広がる草や木。


 そして────



「な、な、な…………」



 ────ガリガリに痩せた緑色・・の手足と、見る影もなく縮小してしまった緑色・・のチ○コだった。


「なんじゃこりゃーーーーーーーっ!!?」











 田中一郎(26)


 第二の生の始まりである。

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